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旧帝大と慶応以外は「職業訓練校化」すべき? 文科省の「有識者資料」に議論白熱

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文部科学省で10月7日に開催された有識者会議に提出された資料がネットに公開され、議論を呼んでいる。資料では、ごく一部の「トップ大学」以外はすべて「職業訓練校化」すべきという提案がなされていたのだ。

資料の執筆者は、株式会社経営共創基盤代表の冨山和彦氏。大学教員や教育学者が多くを占めるメンバーの中で、産業界の実態に詳しい経営コンサルタントという異色の立場で参画し、単独名で資料を提出している。
「Gの世界」と「Lの世界」で人材育成を切り分ける

冨山氏の資料「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る
高等教育機関の今後の方向性」より

冨山氏が資料を提出したのは、文部科学省の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」。冨山氏の資料は「グローバルで通用する極めて高度のプロフェッショナル人材」を輩出できるトップ大学以外は、大半を「職業訓練校化」し、学問より「実践力」を学ばせるべきだとする。

・文学・英文学部:「シェイクスピア、文学概論」ではなく「観光業で必要となる英語、地元の歴史・文化の名所説明力」
・経済・経営学部:「マイケル・ポーター、戦略論」ではなく「簿記・会計、弥生会計ソフトの使い方」
・法学部:「憲法、刑法」ではなく「道路交通法、大型第二種免許・大型特殊第二種免許の取得」
・工学部:「機械力学、流体力学」ではなく「TOYOTAで使われている最新鋭の工作機械の使い方」

資料は、経済特性や産業構造が異なる2つの経済圏が存在することを前提にしている。「グローバル経済圏(Gの世界)」は、グローバル競争にさらされる産業であり、自動車や医療機器、IT産業などが該当。知識集約型で、高度な技能の人材が中心となる。

もうひとつの「ローカル経済圏(Lの世界)」は、交通や飲食、福祉など国内のサービス業が該当。労働集約型で、平均的な技能の人材が中心となる。

Gの世界では「高度なプロフェッショナル人材」が必要とされるが、人材は少数精鋭化され、雇用は漸減傾向にある。反面、Lの世界では日本の少子化もあいまって、労働力不足が深刻化。先進国でも最低レベルの「Lの世界の生産性」を上げることが課題になっているという。
池田氏「文系の科目は、余暇の教養として社会教育にすべき」

冨山氏の資料「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る
高等教育機関の今後の方向性」より

そこで、Gの世界に通用する人材を輩出できる大学は、そのような領域に特化した教育を行い、それ以外は「生産性向上に資するスキル保持者の輩出」に力を注ぐ「職業訓練校(L型大学)」と化すべきだという。そこで重視されるのは、学問より「実践力」を磨くべきとして、前出の例を挙げているのだ。

「あらゆる高等教育機関(東大とて学部と学生レベルによっては例外ではない)が、『職業訓練』に異次元レベルで注力することで、社会全体の生産性・効率性(≒賃金と安定雇用)を改善する」

こうした提案に、ネットでは賛否が渦巻いている。否定的な意見の多くは「実践力」の例として挙げられた例の極端さだ。経済・経営学部で「弥生会計ソフト」を習得し、法学部で「大型車両の免許」を取得というのは、これまでの大学教育のイメージとは大きく異なる。

確かに大学の法学部を卒業しても、法律的素養や基本的知識を身につけていない人がかなりを占めるのも事実だ。これでは「時間の無駄」という評価があがっても無理はない。

ネットには、冨山氏の主張に賛成する意見も多い。経済学者の池田信夫氏はブログで、国内の雇用は9割が「流通・外食・介護などのL型産業」になると予測。そもそも現状でも「旧帝大と慶応ぐらいしか、アカデミックな教育はしていない」と、特に文系大学の変革については強く賛成する立場だ。

「文系の科目は、余暇の教養として社会教育にすべきだ。大部分のL型労働者にとっては、哲学や社会学を習うより、英語や簿記を使えるようになることが重要だ」

小田嶋氏「大学は人が幸福に生きていく道を模索する場所」

ビジネスコンサルタントの大石哲之氏も、冨山氏の提案に「全面的に賛成」し、さらにG型・L型を理系・文系に分けた分類を独自に行っている。

・理系G型:アカデミックな研究主体。東大など。
・理系L型:理論ではなく実用的な工学をおこなう。日本は工学の国であり、多くの理系人材を今後も育成する必要がある。地方大学がこれを担えば良い。
・文系G型:ジェネラルアーツを教えて、徹底的に考える力やイノベーションを起こす力を教える。ハーバード方式である。これは慶応などの私大が担えばいいだろう。
・文系L型:職業訓練学校にする。英語がつかえ、実用的な実務ができるひとを育成

このほかにも、ネットユーザーからは「地方の弱小大学が古臭いアカデミアにしがみついてていいの?」「4年間遊んでるだけだから、少しは役に立つこともやれってことだ」と、少子化なのに増えすぎた大学や、そのカリキュラムに対する批判も大きい。

そんな中、コラムニストの小田嶋隆氏はツイッターで「大学教育」と「企業活動」は分けて考えるべきであり、それを一緒にする議論を文科省が展開していることに警鐘を鳴らしている。

「『上位大学はグローバル大学、底辺大学はローカル大学』みたいな計画は、金儲けをたくらむ人間の発想としては正しいのかもしれないけど、学問だとか教育だとかを扱う役所が採用して良い話じゃないぞ」

「私は、大学が労働力の商品性を高めるための機関であるという考え方には賛成できません。きれいごとを言えばですが、大学は、広い意味で人が幸福に生きていく道を模索するための場所だと思います」

ネットユーザーからも、「L型の切り離し」を主張する人たちが東大など有名大学を卒業していることを指摘し、議論が偏りすぎていると呆れる声もあがっている。文科省はすでに同有識者会議の第2回を15日に開いており、今後もヒアリングを重ねる予定となっている。

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