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伝説的映画製作者デイヴィッド・パットナム卿かく語りき 「脚本家を変えて映画が良くなることはあり得ない」

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ヒュー・ハドソン監督作『炎のランナー』をはじめ、『ローカル・ヒーロー』『ミッション』など数々の名作の製作を務めたデイヴィッド・パットナム卿が東京国際映画祭開催期間中に来日。2014年10月26日にはデジタルハリウッド大学で開催された『シノプシス(あらすじ)コンテスト』に登壇。「映画におけるストーリーテリング」と題したプレゼンテーションで、自身が携わった作品での経験などを引き合いに出しつつ、社会に対する映画の役割についても含蓄のあるメッセージを残しています。

1985年の第一回東京国際映画祭で審査委員長を務めて、相米慎二監督の『台風クラブ』を大賞に選出したパットナム氏。「映画は要求の多い愛人みたいなもの。製作している上で、タフなことも沢山やってくる。批判する権利のない人から批判を受けることも多々あるが、ごく平凡な作品でも批判よりも価値がある」といい、「観客は(映画製作関係者を)信頼しているのだから、旅に導いて救っていかなければならない」と力説しました。

プレゼンでは、「この作品が大好きでなければ映画業界に向いてない」とまで断言するフランソワ・トリュフォー監督の『アメリカの夜』をはじめ、『レミーのおいしいレストラン』『21世紀宇宙の旅』などの名シーンを解説。さらに「1968年に革命があった」として『俺たちに明日はない』『ゴッド・ファーザー』といった作品が、ウォーレン・ベイティやダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマンといった新時代のスターを擁して複雑な人間性を描くようになったことに着目。当時と現代では閉塞感がある状況が似ているとも指摘しています。

パットナム氏らしかったのは、自身が手がけた北アイルランドの製油所建設と環境問題を描いた『ローカル・ヒーロー』について「私達が何を壊しているのか。このテーマはまったく古くなっていない」と強調したくだり。「スーパーヒーローは存在しないし、世界が抱えている問題を解決してくれない。人間のみが人間の問題を解決できる。映画で人々が思っていることを変えていかなければならない」と社会へのメッセンジャーとしての役割が重要だと述べる真剣な表情に、映画人としての挟持を見ることができました。

プレゼン後に行われた、『スイッチを押すとき』『俺たちの明日』の監督・脚本家コンビの中島良氏、岡本貴也氏と映画コンサルタントのマーク・フォティ氏を交えたパネルディスカッションでは、映画製作における苦心や良い脚本の条件についても言及。「キャストは役者だけでなく、監督・衣装デザイナーなどもそう。その中でも最も重要なのは脚本家だ」と述べ、イギリスからハリウッドを有数スタジオの一つコロンビアに移った経験から「ひとつのプロジェクトで、上手くいかないから脚本家を変えようというアイデアが出てくるが、いい脚本家を確保するには時間がかかる。変えた3人目が素晴らしいということはあり得ない。信念が欠けているからそういう話になるのだ」と切り捨て、「プロジェクトに失望するのは、ライターのせいではなく、アイデアそのものがいいものではなかったということ」と述べます。
一方、大物をキャスティングすると、降板などで作品の内容そのものが変わり、作りたい映画にならなくなるリスクについて「誘惑があるのが一番の問題」と語り、監督選びについても「前の作品で成功しても自分のプロジェクトでそうなるとは限らない。過去の名監督の作品を見て本を読むと、だいたい2作目がよくて、6作目がよかったということはめったにない。有名になるのは危険だと思う」と諧謔を混じえて話し、ネームバリューに頼った作品作りを戒めます。
さらに、「観客が観賞した後に”レストランに入って何を一杯注文しようか”と思うのではなく、議論を呼び起こせるようなストーリーであることが重要だと思う」と述べ、終始映画人としての誇りを持つことを説きました。カンボジアでのアメリカ人ジャーナリストと現地人アシスタントの交流を描いた『キリング・フィールド』や、第二次世界大戦の爆撃機での人間模様を活写した『メンフィス・ベル』といった名作を制作したプロデューサーとして、エンターテイメント寄りの作品が大勢を占める映画界に対して、やんわりクギを差す意味の発言が多かったことが印象的でした。

MPA/DHU フィルムワークショップ X 第27回東京国際映画祭
http://www.jimca.co.jp/workshop/ [リンク]

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記者:

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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