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最新技術も古の知恵も両取り、京都議定書立役者に学ぶ「エコハウス」

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住宅の世界でよく耳にする「エコ」「省エネ」という言葉。税制などの優遇もあり、なんでも「エコ」と言われている感もあるが、そもそもどのような家がエコハウスなのだろうか。エコハウスの先駆者であり研究者でもある小林光さん(慶應義塾大学教授)に、基本的な「エコハウスの考え方」を聞いた。どうする!?親の住まい、から始まったエコハウス奮闘記

世田谷区の閑静な住宅地の一角に現れるのは、緑のツタに絡まれた壁面と、風見鶏のような風力発電装置が目を引く一戸建て。よく見ると屋上には太陽光パネルが載っている。「どうせ建てるならフルコース」。15年前にそう掲げて、当時の最先端エコ技術を存分に取り込み建てられた家だ。住んでいるのは、環境省に長年勤め、あの京都議定書(COP3)の締結に日本側の事務方で関わった経験を持つ、現在、慶應義塾大学政策・メディア研究科教授の小林光さんだ。

家を建てることになったきっかけは、エコ事情の最先端にいたからと思いきや、意外にも「老いゆく親の家をどうするか」という課題に直面したから。両親が残る家に戻って同居するか、介護施設を探し実家を手放すのか、現在、家を探す人には身近な問題だろう。結果として小林さんは、老親が待つ世田谷の地に二世帯住宅を建てることを決意した。その決心を後押ししたのが、家庭用エネルギー使用量削減のため「徹底的に省エネにこだわる」住宅建設への挑戦だった。

※小林邸完成までの顛末(てんまつ)は、完成2年後に著した『エコハウス私論』に詳しいので、興味がある方は一読いただきたい

小林さんは環境省で二酸化炭素排出量の削減を計画した経験から、総排出量のうち1割強を占める家庭用エネルギー消費量(1990年当時)削減をどのように促進するか悩んでいた。企業が使うエネルギーに対しては、技術や規制の導入により、ある程度の削減量を達成できる。しかし、個人邸については、細かな基準を設けることは難しく、また15年前には個人宅に向けたエネルギーに関する技術も少なかった。エコハウスは「環境負荷の少ない家」。基礎体力をしっかりさせて、最新設備を上乗せする。

住宅にまつわる二酸化炭素排出量の内訳を見てみると(図1)、「照明・家電製品」「給湯設備」「暖房」の3項目で6割を超す。ということは、この3項目を重点的にケアするだけで、基本的なエネルギーの消費は抑えられる。しかし、エコハウスが目指すのはエネルギー消費量だけではない。大気や水への負荷、住宅の建材の使用量、建て壊しで生まれる廃材量まで視野にいれ、少しでも環境負荷を削減するため、何ができるか考えることが大切になる。

小林さんが「家の基礎体力」と呼ぶ、家そのものの構造・仕組みをしっかりつくることはその第一歩だ。家の基礎体力は、「基礎・構造」「断熱対策」「気密対策」「素材」の4つを指す。いずれも住宅建設の基本中の基本だ。

「私が家を建てたときと比べて住宅の基本性能も随分進化しました。断熱・気密対策などは、以前よりも選択肢が多く、そして安くなっています」と小林さん。基礎・構造への対策は、長く住める家をつくり頻繁な建て替えを防ぐ。断熱・気密性を担保することで(冷)暖房費の無駄を抑え、素材へのこだわりはデザインを左右するとともに湿度の調整など、家電製品で対策するようなことを防ぐ。

「家の基礎体力」がしっかりしていると、結果として月々の光熱費も安くなる。基礎体力がある家に、太陽光パネルなどの自然エネルギーを取り込む最新設備を加え、さらに快適、省エネルギーに暮らすことがエコハウスの基本だ。基礎体力がしっかりしないと「初期投資は安いが、暮らしてみると光熱費が高く、維持・管理で大きな環境負荷を発生させる家になってしまう」。

【図1】2012年度 家庭からの二酸化炭素排出量(出典:全国地球温暖化防止活動推進センター)どれほどのエネルギーで暮らしているのか、まず知ることから始める

もちろんエコハウスを建てることだけが、環境負荷削減の道ではない。小林さんが提唱されている一つに「環境家計簿」という言葉がある。自分がどれほどのエネルギーを使って暮らしているか、よく知らない人も多いのではないだろうか。電力、水、ガスの使用量がどの程度か、そこに太陽光等のエネルギーをどれほど取り込むことができるのか、ピンと来なければエコへの関心も高まらない。

「エコハウスに住んで15年。エコハウスは、地球と仲良くなるだけでなく、金銭・健康・防災面でもメリットが多いことを体感しました」。しかし、こうした住宅は住宅ストックの4割を占める賃貸物件にはまだまだ少ない。そんな折、隣地を親族から遺贈されたためエコ賃貸住宅を建設することにした。15年前と比べエコ設備の進化・充実を感じたというのが前述のコメントだ。

東京近郊で夫婦+子ども一人で暮らす場合、電気・ガス代は平均1.6万円/月だという(環境エネルギー総合研究所)。小林さんが今年5月に建てた賃貸住宅(羽根木テラスBIO)は、「家の基礎体力」を高めた上に太陽光パネルを搭載し、地下水も引き込み、家の前には緑の量も増やした。この賃貸住宅で試算すると、(1)太陽光発電(2.8kw)=約7500円、(2)高断熱=約1000円、(3)照明LED化=約590円、(4)高性能給湯器=約700円(ガス代)が搭載され、合計で毎月9790円もの光熱費が削減できるという。

日々、なんの気無しにエネルギーを使っていると、こうした数字にピンとは来ない。「自分の使うエネルギーに関心を持つ」ことも環境負荷の少ない暮らしに必要な要素だ。そのためにも、小林さんが今回建てた賃貸住宅には、家のエネルギー使用量が一目で分かるHEMSが採用されてもいる。「環境家計簿」はこの取り組みのひとつでもあり、自身の住宅のエネルギー使用量の推移を知っておくことで、春夏秋冬のエネルギーの必要量なども身に染みて分かるようになるという。

【画像1】「省エネは生活態度と直結する。自分がどれだけエネルギーを使っているか、まず知ることが大切」と小林さん。知るためにはこうしたHEMSが欠かせない(写真撮影:小野有理)

【画像2】通常のコンセントの横に、太陽光のコンセントも並ぶ「羽根木テラスBIO」。電気がどこから来るのか、分かりやすい工夫だ(写真撮影:小野有理)エコハウスは、自然と仲良くなれる家

今回取材して実感したのは、「エコハウス」といっても難しいものではないということだ。確かに小林さんの家には太陽光パネルを始め、風力発電や、家のどこでどれだけのエネルギーが使用されているかを測るケーブルなど、多くの装置に囲まれている。が、それらの装置はみな、より自然に興味を持つことにつながっている。

お天気になると太陽がサンサンと生み出す電力によってメーターが回ることを実感できる。雨が降れば、雨水タンクに水がたまり、風が吹けば風力発電の風車が回る。どのような天候でも何かしらの自然の恵みを感じることができる。また、夏の直射日光を避けるための緑のカーテンや、屋上・壁面緑化などで室内の気温を一定に保つことができ、エネルギーの使用量を減らすこともできる。こうした少しのところにでも植えることができる緑は、それだけで四季折々の花をつけ、蝶や昆虫の立ち寄り場所になり、目を休ませてくれるものだ。

実際、小林さんが今年新たに建築した賃貸住宅は、都心の住宅地の中にもこれほどの蝶がいたのか、と驚くほどの種類の蝶が飛来してきている。エコハウスという言葉に一見とっつきにくさを感じる人も、自然への親しみを増す家だと思うと、少し身近に感じるだろう。エコハウスとは、まずは自分の暮らしを見つめ、家そのものの基礎体力をつけた上で、最新設備で補充する、そういう暮らし方の表れなのかもしれない。

【画像3】庭に散水するために使う外構水栓。地下に流れる豊かな井戸水をくみ上げている。断水時も安心だ(写真撮影:小野有理)

【画像4】震災以降、エネルギーのみならず「防災」も重要なキーワードに。「羽根木テラスBIO」に備えられた防災グッズ(写真撮影:小野有理)

【画像5】小林さんの趣味は「蝶の観察」。地元の雑木や草花を植えたのも「蝶の寄り道になるように」との思いから。ひらひらと舞い踊る蝶の名前を、遠くからでも即座に教えてくれた(写真撮影:小野有理)●『エコハウス私論』
HP:https://www.sotokoto.net/ec/products/detail.php?product_id=6
●SUUMO物件情報
HP:http://suumo.jp/jj/chintai/ichiran/FR301FC011/?ar=030&bs=040&fw=%E7%BE%BD%E6%A0%B9%E6%9C%A8%E3%80%80bio
●東急リバブル物件情報
HP:https://www.livable.co.jp/chintai/detail/LSI1408055/
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/10/20/71339/

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