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ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

先日、晴れわたる秋空のもと、東京・青山で行われた「とかち小麦ヌーヴォー解禁祭り」に行って参りました。十勝で育てた小麦を発信する。
北海道十勝地方は日本最大の小麦の産地ですが、その小麦を契約農家が作り収穫し、製粉会社アグリシステム(株)[1988年設立]が統括販売します。
そしてこの日は、趣旨に賛同しヌーヴォー小麦を購入した全国のパン屋さんのなかから20店舗ほどが集まり、それぞれ独自のレシピで焼き上げた「挽きたてヌヴォー小麦パン」を販売しました。

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

小麦ヌーヴォーパンとは「その年に穫れた小麦を製粉した小麦粉100%」で製造されたパンをいいます。
2014年産ヌーヴォー小麦のパンは、参加店舗で購入する事ができます(日本全国で約210店舗)ヌーヴォー期間は12月31日まで。
(※参加店舗によって販売期間は異なります。お店にご確認ください。)

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

イベント開催に向けて中心となって進めたのは、アグリシステム(株)です。そして「小麦ヌーヴォー」を提唱したのはベーカリー「365日」の杉窪章匡(すぎくぼあきまさ)シェフです。構想は3〜4年前からでした。

小麦はパン職人にとって大切な原料ですが、日本では通常、小麦粉の売り込みは製粉会社の営業マン。パン屋に限らずうどん屋でもお好み焼き屋でも、スーツをまとった方がセールスします。それではお店側が「もっとこんな小麦粉を作って欲しいのだが」と考えても生産農家になかなか伝わりません。農家は小麦を作るだけ、パン屋は買った小麦粉でパンを作るだけ。それぞれがばらばら。そこをなんとか変えたい、農家と製粉会社、それとパン屋が歩み寄りひとつになって話し合ったら小麦粉はもっと良くなるはず、そう考え始めたのがきっかけでした。

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

杉窪シェフの食文化に対するこだわりは計り知れません。その原点は何かを伺いました。

すると「やはり基本となる食事は家庭で食べるものだと思うんですよ」そう言って携帯電話に保存している写真をめくりながら一枚の画像を見せてくれました。そこには、シェフが石川県輪島市にある実家に帰省した時お母様が用意してくれたという朝食の品々が撮影されていました。
「見てください、うちはとにかく皿数が多いんですよ。料理が大皿で出てくる事は無い、つまりこれ全部が一人分なんです」数えると12品ありました。
シェフ「これだけ食べろ、ってことですね。干物にこれは青菜、それとジュンサイ、あと茄子の天ぷら、それにサラダを見て」
私「ああ!トマトが沢山〜2個分くらいありますね」
ご飯は黒米入り、汁物と合わせ野菜中心のメニューでした。地元でとれた食材が中心だったそうです。

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

シェフ「勉強はしませんでした。いえ、勉強はできたんですよ、多分。ただ、先生の指導法に子供ながら疑問を持っていた。例えば小学校5年生の時‘‘挨拶運動’’という取り組みがあったんですが必要でしょうか?言葉を形式的に言わせてそれが本当の教育でしょうか?そういうことって自然に心からほとばしり出るものだと思います。もっと感性を導き育てることが大事、みんながしているから、というのではなくもっと自分を信じたらいいと思います。だからいつも先生のいうことは要領を得ず聞けなかった。そんなこんなで高校も2ヶ月でやめさせられた、はい、クビになりました」

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

その後父方の伯母を頼り来阪、その当時伯母の知人が住んでいた辻調(調理士専門学校)近くのうどん屋に住み込みで2年間働いたのが「食」に携わるきっかけかもしれません。専門学校に一年間通い、卒業後は大阪の洋菓子店や神戸のパティスリーで経験を積みました。
シェフ「毎日、仕事が終わってからも一日3時間は勉強しました。その頃よく食べ歩きもしました。ただ美味しかった、というだけではないですよ。ケーキひとつとってもその長所や短所を分析する、外観はどうか、乗せている食器、お店の接客、舌を磨くだけでなくあらゆる事を観察しました。お金は少ない給料の中から捻出しました」

ベーカリー「365日」がつたえるもの(東京都渋谷区)

シェフ「辻調時代の授業で見たドキュメンタリーに、ある有名シェフの調理場でのシーンがありました。100度に熱された皿に料理が盛られ、それを後輩に運ばせるんですがやはり熱くて落としてしまう。それをひどく叱るシェフ、我慢して運ぶ後輩。僕は子供の頃武道を習っていた時期がありましたがそこでも先輩・後輩の上下関係において理不尽な事柄が沢山ありました。後輩を指導するあり方、僕はそこも変えて行きたかったんです」

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プロのパン職人として必要な事、それは製パンの知識や技術に留まリません。栄養学にはサイエンス分野の知識・センスも必要、経営学もパン屋の延長上にあるものではありません。多岐にわたる知識と経験を積み「進化と深化」を突き詰めます。その姿勢は共に仕事するスタッフに毎日伝えています。指導者として厳しくありながらも反論の余地は残す、ですから販売スタッフも厨房で働くスタッフもその表情は明るく生き生きと仕事をしています。

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シェフ「僕は学校で勉強しなかった事を全く後悔していません。むしろ先生に教わらなくて良かったと思っています」
フランス料理にも興味がありその道に進みたい気持ちもあったそうですが、ブーランジェリー歴1年の時に人気ベーカリー「デュヌ・ラルテ」に就職、才能を開花させ革新的、独創的なパンづくりでお店の売り上げに貢献しました。そして現在、自身の店を拠点として国産小麦の魅力を伝えています。国産の小麦は焼き立ての小麦の香りと味がとても良いんだそうです。

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