「英語、小5から正式教科」でも進まない人材のグローバル化
日本人の英語力は依然低い
英語教育の改善策について検討している文部科学省の有識者会議は、9月下旬に報告書をまとめました。報告書には、小学5年生から英語を正式な教科として教えること、大学の入学試験でTOEFLなどの外部試験を積極的に活用することが盛り込まれています。
総人口が減少に転じ、内需の拡大が望めない日本では、海外に活路を見出すグローバル化以外に生き残る道はありません。グローバル化は、これまで製造拠点の移転や販路の拡大など主に企業レベルの課題でしたが、TPPやオリンピックなど、今後は個人レベルでも否応なしに海外と接触する機会が増えることは間違いありません。
異文化交流の標準語は英語です。世界で英語を話す人口は日本人の10~20倍とも言われており、英語を理解できれば視野は一気に広がります。ところが、日本人の英語力は依然低く、英語を母国語としない人が英語圏の大学へ留学をする際に受検するTOEFLの点数ではアジア30カ国の中で常に最下位を争うなど、心もとない状況です。
言語能力よりも独創性と主体性が大切
文部科学省の発表は、このような現状を打破するため、英語教育を拡充してグローバル化に対応できる人材を育てようと動き始めた結果です。私の住む横浜でも、小学6年生に児童英検、高校2年生にTOEFLを受けさせることになるそうです。
しかし、本当に「英語教育の拡充=グローバル人材の育成」なのでしょうか。私もアメリカへの留学や外資系企業での勤務を経験しましたが、英語は流暢に話せても、一人では何一つ判断できず、仕事の段取りがさっぱりという人もいました。逆に日本語アクセント丸出しでお世辞にも英語が上手いとは言えないにもかかわらず、外国人と丁々発止やり合いながらテキパキと仕事をこなしている人もいました。言語能力よりむしろ、自分の頭で考える独創性と自分から体を動かす主体性が大切だと言えます。
週に数時間の授業では実際に使える英語が身に付くことはない
このように、日本人として海外へ留学したり外国人と仕事をするには、中学高校の6年間で英語の基礎をしっかり勉強していれば十分とは言わないまでも、何とか事足りるはずです。小学校で週に数時間歌ったりゲームをしたり、簡単な日常会話のロールプレイをしたところで焼け石に水で、実際に使える英語が身につくことはありません。むしろ、小学校で必要なことは、従来の集団画一授業を転換し、生徒一人ひとりの独創性を育む個別カリキュラムと生徒の主体性を養う学習法を導入することです。
中学高校での英語教育については、生徒が興味を持って主体的に学習できるよう、実践的なプロジェクト型の課題を取り入れると良いでしょう。例えば、学校や地域を紹介する英語のサイトを立ち上げたり、クラブ活動を通じて同じ趣味を持つ海外の同年代の生徒と交信したり、地域に住む外国人と交流する等、それぞれの学校や地域の特色を活かしたさまざまな企画が考えられます。そして、主体性を育み自立心を養うという観点から、高校生のうちに海外へ数ケ月ホームステイすることを行政レベルで制度化してほしいと思います。
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