「時間」だけで評価する企業の行く末

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「残業は厭わないが、それに見合った処遇を求めている」傾向

「時間」だけで評価する企業の行く末

労働に対する評価を「時間」で行うのか、それとも「成果」で行うのか。あなたは、どう考えるでしょうか?

先日、日本生産性本部・日本経済青年協議会が、2014年度の新社会人約2200人を対象に実施した「働くことの意識」調査結果が公表されました。調査結果で特に目立ったのが「残業についてどう思うか」という質問に対する回答。「残業は手当てがもらえるからやってもよい」が、平成25年度の63.0%から69.4%と急増し過去最高の数値となりました。ここ数年、世間で問題になっている「ブラック企業」や「残業代未払い」のニュースが影響しているのか、「残業は厭わないが、それに見合った処遇を求めている」傾向がうかがえます。

「時間」だけで評価すると、際限ない無駄な人件費の消費に

この結果に対する世間の意見としては、企業側は「残業代が欲しいなら、残業代に見合う利益を上げろ」「社会をなめている」等の声が上がり、労働者側からは「金がもらえない分まで仕事する意味がわからない」という意見が出ています。法律面から考えてみると、労働基準法では1日8時間、1週40時間を超過する労働に対しては原則25%増しの割増賃金を支払う義務が生じますので、企業側の言い分は通りません。

しかし、すべてを「時間」で評価することは、企業にとって大きな弊害をもたらします。「生活残業」や「ダラダラ残業」などの「必要性のない残業」や「会社の指示に反した勝手な残業」まで認めてしまうと、際限なく無駄な人件費を消費してしまうことになり安定した企業経営は成り立ちません。

また、時間内に業務を完了した労働者は当然ながら残業代は発生しないため、残業する労働者との賃金格差が生じ、モチベーションは下がってしまいます。そうなれば、優秀な人材が流出してしまう事態にもなりかねません。

法律を熟知し、「時間」「成果」「能力」を総合的に評価すべき

このような状況を解消するためには、労働した「時間」だけではなく「成果」「能力」といった要素を総合的に評価できる環境づくりが必要となります。例えば、「成果」に対する評価を昇給や賞与の基準で明確にすることにより、時間内に業務を完了させた労働者のモチベーションは維持できます。

また、管理職に対する教育も重要です。部下に適正な業務量を指示し、進捗状況を報告させるというような基本的事項を徹底することが意識改革につながり、無駄な残業を抑制できるようになります。

労働基準法は、戦前の工場労働者を守るための工場法を元にして制定された法律であり、現在の日本の働き方に合わなくなっていると言えます。しかし、あくまで労働の原則となる法律ですので、規制緩和をしてしまうと企業の暴走を助長することにもなりかねません。これからの企業は、労働基準法を熟知した上で、労働の「時間」と「成果」「能力」等の様々な要素が反映される人事システムを構築することが求められます。

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