ペットの死で慶弔休暇、現実的に可能か
「ペットが死んだので会社を休みました」はアリ?
あるサイトで公開された「『ペットが死んだので会社を休みました』なんてアリなの?」という記事に関して、インターネット上を中心にかなり多くの反応が寄せられていました。個人の意見がインターネット上で飛び交うだけでなく、街中のカフェなどでも話題になっており、関心の高さがうかがえました。
実際のところは「ペットくらいで会社を休むのはおかしい」という批判も多かったのは確かですが、「ペットも家族の一員。その悲しみを考えれば仕事どころではない」という主張に対して理解を示す人もたくさんいました。価値観は人それぞれなので、ペットの死亡で会社を休んだことの賛否について議論しても堂々巡りするだけです。
家族が亡くなった際には、慶弔休暇が規定されていれば会社を休むことができます。今回は、その慶弔休暇の範囲を人間だけでなく、ペットにまで拡大するということは現実的に可能なのかということについて考えてみます。
慶弔休暇は、福利厚生の一つとして規定されている
慶弔休暇は、労働基準法で決められている休暇ではなく、それぞれの会社で福利厚生の一つとして規定されています。よって、慶弔休暇を設けなくても問題はありませんが、一般的には、結婚(社員自身や家族)、出産、親族の死亡の場合のための諸々の儀式や手続きに対応するために設けられています。
運用の方法は、特別休暇の一つとして有給で慶弔休暇を与えて労働を免除しているところがほとんどです。死亡の場合、対象によって日数を規定しており、例えば「配偶者や子・実父母の死亡は5日間、兄弟姉妹・孫の死亡は3日間」というような形が一般的です。対象となる親族や日数については企業規模や会社風土によっても異なっており、およその基準というものがあるわけではありません。
ペットの慶弔休暇を導入するには、現実的に高いハードルが
しかしながら、このような慶弔休暇をペットにまで拡大するとなると、慎重に考えなければなりません。何といってもペットは親族ではありませんし、また、人間ではないため、当然戸籍もありません。さらに、その対象となるペットと本人との関係度合いも、外部からではよくわかりません。昨日飼い始めたペットが亡くなったという人も出てくるかもしれませんし、お祭りの金魚すくいの金魚でも本人がペットといえばペットになってしまうので、運用する前のルールづくりだけでも大変です。例えば「対象となるペットは、犬、猫とする」などと限定するのはふさわしくないですし、ペットの種類の範囲を決めるということだけでもかなり難しいでしょう。
仮にペットにまで慶弔休暇を適用した場合、ペットを飼っていない従業員からすれば公平性に欠けると思う人もいるでしょう。また、従業員が規定に従ってペットの慶弔休暇を取得すれば、ペットに対する価値観が違う上司に嫌味を言われたり、部署内の人間関係の悪化につながったりする恐れもあります。もちろん、ペットフードやペットケア製品を取り扱っている会社等であれば、当然のようにペットの慶弔休暇を設けていますし、会社の理念や企業文化から考えても必要であると考えます。
結論として、ペットの慶弔休暇については、一般的な企業には導入が難しいと思います。しかし、慶弔休暇に限らず何らかの従業員のペット支援策を導入してみることは、時代に対応した動きとして社内外から評価されるでしょう。
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