「普段とは違うくどまゆを見せたい」 舞台『ひとひら』一ノ瀬野乃役・工藤真由さんインタビュー(前) [オタ女]
極度の上がり症の麻井麦を中心とした演劇研究会のメンバーの友情を描いた桐原いづみさん原作『ひとひら』の舞台化。制作は演劇団体はっぴぃはっぴぃどりーみんぐ(以下はぴどり)で、東京・中野区のWestEndStudioで2014年7月2日から6日までの間に全9公演が行われることになっています。
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演劇研究会の代表・一ノ瀬野乃役に起用されたのは、『プリキュア』シリーズの主題歌などで知られる工藤真由さん。はぴどりプロデュース作品には『Vol.3 大正浪漫探偵譚』より継続して出演しており、代表の鈴木茉美さんも「何に対しても常に100%でぶつかれるし、現場のことも把握している」と全幅の信頼を寄せるまでの存在になっています。
そんな工藤さんに『オタ女』ではインタビューを実施。まずは舞台にかける思いから、野乃というキャラクターを演じる上でのポイントなどをお聞きしました。
ーー今回『ひとひら』の一ノ瀬野乃役を演じられますが、はっぴぃはっぴぃどりーみんぐプロデュース作品にはずっと出演されて、常連と言ってもいい存在になっていらっしゃいます。はぴどり作品に出演するきっかけは?
工藤真由さん(以下・工藤):実は、はぴどりさんの最初の公演の時にも(出演の)声をかけられたんです。当時は事務所に入っていたので実現できなかったんですが、「出たかったな」と思っていて…。知り合いが出演していたこともあって舞台を観に行った時に、代表の(鈴木)茉美さんにご挨拶させてもらって、「芝居をやりたいです」というお話をしたんです。それでオファーを頂いて、「ぜひ!」ということになりました。
ーー演劇をしたいという気持ちがずっとお持ちだったのでしょうか?
工藤:演劇には昔から興味があって、中学では演劇部に入って…。私、デビューがミュージカルだったのですけれど、それから5年間くらいは歌に専念していたんですね。それで「久しぶりに芝居をやりたいな」と思っていたところに、はぴどりさんとつながって、いろいろな役をやらせてもらえるようになりました。ほんとうに感謝しかないです。
ーー『Yes!プリキュア5』ではご自身で考えた振付を披露されてもいました。振りを決めたり覚えたりするのも得意?
工藤:小さい頃は、好きなアーティストさんの振りを完コピして、それが得意になっていきましたね。それで、自分流のダンスを考えたり…。振りを考えるのも好きですね。やっぱり表現できる仕事が好きなので、歌もダンスも芝居も、私でしか出せないものを出せるといいなと。
ーーそういったダンスや歌手としての経験を、お芝居でも活かすことができる?
工藤:常に人前に立っていたい、という気持ちがたくさんあるので、ありのままの自分でどのような表現ができるか、というところではダンスも歌も芝居もつながっていると思います。芝居だと、表情だったり声の出し方だったり、そういった表現力ですね。台詞を覚えて感情を乗せて話して感動させるというのが、すごい力を使うことなんだな、と大人になって分かるようになりました。
ーー今回の舞台『ひとひら』ですが、桐原いづみさんのマンガ原作があって、2007年にはテレビアニメ化もされています。最初に作品を観たり読んだりしたのは?
工藤:TVアニメは知っていました。漫画は、この話が決まって買って読みました。
ーー原作は高校の演劇研究会が舞台で、登場人物が舞台を作ったり合宿に行ったり、まさに「青春している」という甘酸っぱさもありますよね。学生の頃のご自身と重なるところはありますか?
工藤:中学の演劇部も、女の子ばかり4、5人しかいなくて、私が脚本と演出をやったりもしました。もちろん発声練習をいつもしていたし、ケンカや言い合いもたくさんしたし、そういったことを思い出したりしますね。
ーー野乃は演劇研究会の代表で、クールだけど熱いキャラですよね。これまでの舞台とはまた別の役になります。
工藤:そうですね。これまで自分の性格のままの明るく元気な女の子という役が多くて、クールな役はなかったので新鮮です。だからこそ、私の中でイメージがつきやすくて。最初の稽古で、茉美さんが「真由固めてきたね」と言って下さったんです。「自分を信じてひとつひとつ丁寧に言葉を発していけば大丈夫だよ」と。
ーーでは、工藤さんの中の野乃像はすんなりと定まったのですね。
工藤:私と野乃は気持ちの部分で本当に似ているんですよ。熱かったり、負けず嫌いで強気な部分だったり、でも実は自分のことを責めていたり、自信がなかったり…。表情に出るか出ないかというところが違うだけで、想いはすごく似ている。
ーー野乃の抑揚が少ないけれど感情はこもっている、というところを表現するポイントは?
工藤:目で訴えることを意識していますね。あとは、常に落ち着くこと。リラックスしたままで、「眠いんじゃないか」というくらい、ゆっくりと言葉を発したりとか。でも、野乃さんは大人っぽいので、今の自分の年齢でやっと落ち着いた感じを出せているんじゃないかな。自分が18歳の時にはたぶん出せなかったです。はぴどりさんでは10代の役が多いのですが、周囲にも10代の子が多いので、若さを吸収しつつ、おばちゃんぽくならなければいいのかな、と思っています。
ーー作中には野乃の声が出なくなるシーンもあります。演じる上でも難しいのではと想像するのですが。
工藤:大変ですね。ただ、私自身も3年前に一度、いろいろなことが積み重なって高音が出なくなったことがあって…。声もカスカスだったし、思い通りに発することができない悔しさや悲しさ、辛さがわかる。「それでも負けない」「声が出なくても私は出たい」という部分が、私と全部リンクしているんですよね。そこを演じる上で、声が出ない時の声をいま自分なりに研究しているところです。
ーー観る側はハラハラしそうですね。
工藤:そこでお客さんが「これ、大丈夫なの?」とヒヤヒヤしてくれたならば私は正解だな、と思うんですよ。お客さんも生徒としてリアルな『ひとひら』の舞台を見てくれている、という感覚になってもらえるならば、「勝った」と思うんです(笑)。そういう雰囲気を出せればいいな、と思っています。
ーー『ひとひら』は劇の中で劇を演じることになります。日常のシーンとの切り替わりがポイントになるのでは、と思いますが。
工藤:やはり、「舞台の上で舞台するの?」とか、みんな疑問には思っていて、共演者同士でもどうするのか、たくさん話してもやっぱり分からなくて、最初は不安だったんです。でも、蓋を開けてみると、茉美さんの演出や脚本が分かりやすく作られていたので、もう大船に乗った気持ちです。見る方は自然と入っていけると思います。『ひとひら』の舞台の中で、さらに舞台が始まるのがデジャブに感じてもらえると嬉しいです。
ーーほかに、演劇研究会で稽古するシーンもありますよね。
工藤:野乃さんが麦たちに教えたりして、演出家としての厳しさやピリピリ感を出せればと、稽古で茉美さんが言っている言葉とか態度とか雰囲気とかを見て勉強しているんです。でも、今回の舞台では女性キャストで最年長なので、皆も頼ってくれるし、私も教えたくなる。野乃も他人に言っていることを実は自分に言っていたりして、それを「もっと私やらなきゃ」とプレッシャーにしている。稽古の稽古まで、気持ちは全部つながっているんだな、と思っています。
ーー今回、経験の浅いキャストも少なくない中で、野乃と同じ役回りになっている、と。
工藤:やっぱり面倒見たくなっちゃうんですよ。私は言いたいことがあると、全部言っちゃうタイプだし、直接アドバイスしたり、「茉美さんに聞いてみなよ」とか、聞かれるだけでなくて自分から言いに行っちゃっていますね。おせっかいかもしれないけれど、心配になっちゃう。私自身も周りからたくさん助けられてきたので。今も迷う時には茉美さんや(榊美麗役の)葉山美侑さんに相談したりしています。
ーーそれでは、工藤さんが考えるこの舞台の見どころや、一番伝えたいことはどういったところになるのか教えて下さい。
工藤:恥ずかしがり屋で人前では声の出ない、引っ込み思案な主人公の麦ちゃんが、どう変わっていくのか。その子を野乃がどう育てるのか。あとは、演劇研究会と演劇部の対決や、野乃と美麗との友情も見どころです。人は努力をすればどんどん変わっていけるというのが作品の大きなテーマで、野乃の台詞には勇気づけられるものがいっぱいある。だから、皆さんが「がんばろう」とか「もう一回やってみようかな」という皆さんのひとひらの自信や勇気を持ってもらえる舞台にできると思います。私自身としても、普段とは違うくどまゆを見れるんじゃないかな。この舞台を機会にマンガも見て頂けると嬉しいです。
(以下、後編 http://otajo.jp/40335 に続く)
舞台『ひとひら』特設サイト
http://www.hitohira2014.com/ [リンク]
工藤真由オフィシャルブログ「Going MAYU Way」
http://ameblo.jp/kudoumayu/ [リンク]
乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。
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