ブラック企業で働いていたら、健康保険証を取り上げられそうになった?

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日本年金機構の次は、横浜市役所からの国民健康保険の督促である。
このシリーズの記事をご覧になる方は、経緯がまったくつかめないと思うので、まずは前回までに寄稿した記事をご覧いただきたい。
ブラック企業で働いていたら労働基準監督署のガサ入れにあった
ブラック企業で働いていたら日本年金寄稿から差し押さえ予告が来た

あわせて、前回までの経緯を説明したい。

昨年上梓した「うちの職場は隠れブラックかも」という、ブラック企業対策本を書いた際、数ヶ月ながらブラック企業に潜入した。もちろん、在籍中は、他の社員とふつうに働いていたが、そこで行われていた労働関係の違法行為について、あえて反論せず、取材をだいたい終えた時点で、労働基準監督署に告発し(私が告発したことはバレていない)、業績不振から偶然にも解雇を申し渡されたが、社判を押させた解雇通知書を受け取り、退職した。(会社都合の離職になる)

はっきりいって、この会社は、私が取材したブラック企業の中では、まだまともなほうである。
とはいえ、入社時の面接から違法行為のオンパレードなので、とりあえず法的に問題になる点を列挙してみる。

■契約時に、賃金体系ほか、休日など、労働条件を詳しく説明していない。
労働基準法第15条では、賃金、労働時間その他の労働時間を明示しなければならないと規定されている。

■労働契約の内容について書面により確認していない(ぎりぎりグレー?)
労働契約法第4条では、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとすると規定されている。
(ただし、厚生労働省は、書面での確認を勧めているので、コンプライアンス的にはかなり問題と思われる)

■働き始めた日から10日以内に雇用保険加入の届け出を行っていない。
雇用保険法第7条では。31日以上働く見込みのある者で、1週間の労働時間が20時間を超える者を雇い入れた場合は、働きはじめた当日から雇用保険に加入させなければならず、また10日以内に届け出をしなければならないと規定している。

■社会保険(健康保険、厚生年金保険)の未加入。
法人の事業所、もしくは、常時5人以上雇用する個人の事業所の事業主は、健康保険(健康保険法48条等による)、および厚生年金(厚生年金保険法27条等による)に加入させなければならない。

私は、フリーランスで働いていたので、ブラック企業に入社するまでは、国民健康保険と国民年金だった。
入社時に、健康保険や厚生年金が切り替わることは知っていたので、会社の総務に、ことあるごとにかけあっていたが、申請中ですと、のらりくらりと逃げるばかり。
そういった対応を取材したかったので、ブラック企業に入社したのだが、会社で勤めている間、保険の切り替えがなされないので、私自身が国民健康保険と国民年金を滞納したことになる。会社側が申請していると明言した録音をいくつも残しているので、会社の健康保険と年金に加入させられたと解釈し、国民健康保険と国民年金からの請求にはその旨を説明して、私が全額支払うのは妥当ではないと主張してきた。

たとえていうなら、身に覚えのないスピード違反で警察から検挙され、罰金を払えばその後、法律上の問題は起きない。
だが、自分にまったく違法性がないと信じるなら、逮捕・起訴されても罰金を払わず闘えばよい。私は、そういったスタンスでこの記事を書いていると考えていただいて差し支えない。

ところで、あきらかに、法令に違反するブラック企業に対して、日本年金機構は、強制加入などの対処をしてくれるだろうか。
ちなみに、日本年金機構に対しては、健康保険・厚生年金に会社が加入してくれていないので、不当な請求であるということを、答弁書と証拠資料を添えて、一度郵送している。(うかつにも控えを紛失してしまったので、ここに掲載できないのが残念だが)

残念ながら、違法行為による被害にあっていることを訴える私の文書について回答はなく、どうみても督促状としか思えないような文書を、いきなり送りつけてきた。日本年金機構から送られてきた督促状が、この文面である。

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到底、承服できる内容ではないので、年金事務所まで出かけて事情を説明したが、「松沢さんの言っていることはわかるが、法律がある以上、我々も手のうちようがない」という回答だった。その顛末は前回寄稿した記事に詳細を書いたので、ご覧いただきたい。ブラック企業で働いていたら日本年金寄稿から差し押さえ予告が来た

日本年金機構には、別途説明を求める機会をもつとして、国民健康保険はどうだろうか。
実は、ブラック企業に在籍中に、会社が健康保険を切り替えてくれないと、私の住所がある横浜市役所に相談した。

「わかりました。まずは、ご自分の健康のことを考えてください。今まで国民健康保険は、銀行引落しでしたよね?」
「そうです」
「では、ご面倒ですが、銀行引き落としを解除してください。そうすると、自動的に督促状が届くことになってしまうのですが、ご事情をよくうかがいましたので、実際に財産を差し押さえしたりされることはありません。お時間のあるときに、一度是非来所されて詳しくご相談なさってください」

ずいぶん、日本年金寄稿と対応が違うものだと思っていたが、届いたのがこの督促状である。

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説明を受けてても、これじゃビビるだろ……

さすがに心配になって、役所に電話してみた。
「すいません。会社が健康保険を切り替えてくれない件でご相談させていただいた松沢と申しますが、督促状来てるんですけど、本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、驚かせちゃってすみません。あれってシステムで自動的に届くんで、仕方ないんですよ。気になさらないでください」
多少勘ぐったが、実際に督促の電話などもなかったし、電話をすると、親切に対応してくれた。時には、長時間残業をさせられていて、健康を損ねていないか慮ってくださることもあった。
健康保険といえば、さすがに人の命がかかっているわけだから、それだけ対応も慎重になっているのだろうか。

ブラック企業を解雇になったあと(私的には取材を無事に終えて、脱出したという感じなのだが)、さっそく役所に行って健康保険の相談をしてみた。再び、フリーランスに戻った以上、国民健康保険に切り替えなければならないからだ。

「私自身は、税金や公金の納付について、異論を唱えることは好ましいと思っていません。国民健康保険に切り替えた今からの保険料は遅滞なくお支払いします。ただし、会社に在籍していた際の保険料については、不服がありますので、正当性を求めて争いたいと考えています。それはかまいませんでしょうか。」

「わかりました。会社と係争されるということですよね。大変でしたね。」
役所の女性職員は、ずいぶん淡々としていた。似たような事例があるのかもしれない。
「ところで、松沢さんは、会社から不当に解雇されたという形になるんでしょうか。」
「解釈にもよりますが、そうなります。」

「そうですか、それでしたら、このプリントの条件に当てはまる場合は、健康保険料の減免などが受けられる場合がありますから、遠慮なく相談してくださいね。元気でいられるのが一番ですから。大変だったでしょうけど、元気出してくださいね。まずは、お心を鎮めてくださいね。」

なんてやさしいんだ。姉さん惚れてまうやろー

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しかし、健康保険と年金の対応のここまでの違いは、なんなのだろうか。
また、あきらかな違法行為を取り締まれない現行の労働法の罰則制度も。
この問題は、メディアに公表されていない部分が多い。追ってまた、誰もが「あすは我が身になる問題」を中心に
伝えていきたい。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「松沢直樹」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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