それと知らずにゴーギャンと同居…日本における遺失物の行方は?

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それと知らずにゴーギャンと同居

1970年に盗まれた巨匠ゴーギャンとボナールの絵画が、イタリアの工場勤務の男性宅から見つかった。入手経路が遺失物の競売であったことから話題になっている。
ロンドンの民家から盗まれた二枚の絵画は、パリとイタリアのトリノを結ぶ列車に放置されていた。1975年に競売にかけられて男性が落札。その値段は4万5000リラ、日本円にして約3000円であったという。警察によればゴーギャンの絵画は1889年の作品で、時価14億円以上の価値がある。
男性はフィアットに勤務する作業員で、台所に似合う絵画を探していた。その後職務を引退してからもシチリアに持っていったというから愛着があったことが伺える。そして、友人がその絵を見て警察に連絡し、専門の捜査班が調査したところ本物だったことが判明。
盗難品が遺失物として放置されていた点や、何気なく競売によりゴーギャンの絵画を手に入れてしまった男性の生涯がなんともドラマティックだ。
ゴーギャン絵画を列車に置いた人物は窃盗犯そのものだったのだろうか。或いは、何らかの理由により入手した者が、ほかにいたのだろうか。うっかり忘れてしまったのだろうか? それとも、想像もつかないような秘密が絡んでいるのだろうか。
ドラマティックで興味深い一件として、ネット上でも話題になっている。

日本で「忘れ物」とめぐりあうには?

さて、ここで着目したいのは日本における遺失物の取り扱いだ。
もしも日本で忘れ物をした場合はどうなるのだろうか。うっかり電車に傘を忘れてしまったことのある人も多いだろう。貴重品などの忘れ物はどうなるのだろう?
地下鉄での忘れ物は、まず総合取扱所に集められ、その後警察の遺失物センターへ。それでも持ち主が見つからない場合は処分されるようだ。
しかし、処分と言っても取得物はすべて廃棄されるわけではない。
業者や警察署に引き取られた後、業者によっては、不定期に「鉄道忘れ物市」といったリセールが開催されることがある。また、デパートによっても忘れ物市を行うことがあるようだ。

そういった忘れ物市の取り扱いで圧倒的に多いのは傘。日本は世界一傘の忘れ物が多いというから、必然の結果だろう。さすがに名画が数千円で売られている機会に遭遇するのは難しそうだ。しかし、ブランドもので数千円する傘も100円や200円で売られている…といったことならあるようだ。ラッキーに遭遇したい人はチェックしてみてはいかがだろうが。
筆者は買ったばかりの漫画の単行本をまるまる数冊コインロッカーに入れたきり、多忙のために取りに行けず、そっくり業者の手に渡されてしまった…という経験がある。自業自得とはいえ、こうした市で誰かの手に渡っているのなら、廃棄されるよりは慰めになるというものだ。

20世紀最大の美術品窃盗

また、ゴーギャンの一件に関連して想起される事件がある。二十世紀最大の美術品モナ・リザの盗難だ。ご存じない方のために簡略に紹介しよう。

1911年8月、ルーブル美術館から、レオナルド・ダ・ヴィンチ作の世界的な名画「モナ・リザ」が盗まれた。犯人は保護ケースの設置業務に携わったことのあるビンセンツォ・ペルージャ。彼は美術館が閉まる日の前日に中に潜んで隠れ、目立たない服装で無人の状態となったサロンから絵を外し、階段吹き抜けへ移動。ケースや額縁を取り払い、モナリザをスモックに隠して警備室の前を通過して外へ出た。このときの警備員は水を汲みに席を立っていたという。
その後、釘しか残っていない状態のサロンを見ても、警備員たちはモナリザが撮影のためにスタジオへ移されたと思っていた。そのため、ただちに騒ぎとならなかったようだ。
ペルージャは、二年もの間パリのアパートメントにモナリザを隠していた。しかし、その後イタリアへ戻り、フィレンツェのギャラリーオーナーと連絡をとってしまったことがきっかけで逮捕される。
注目したいのは盗んだ動機と彼が帰国した経緯だ。フランスに置かれているダヴィンチの名画をナポレオンが強奪したとし、イタリアへ「帰還」させたいという愛国心からそうしたというのがペルージャの主張だったという。この解釈は誤りで、モナ・リザは宮廷画家を目指したダ・ヴィンチがフランスへ贈ったものであるのだが…。また、売却を目的としてオーナーに連絡をとっていることから、単純な愛国心だけであったのかどうか一概に定めるのは難しい。後世、ペルージャの窃盗は詐欺師であるエドゥアルド・デ・バルフィエルノの助力により操られたもので、模造品の価値を高めるための窃盗だったとする説も浮上している。
また、彼が美術館のオーナーに連絡したきっかけは、モナリザの微笑みにより罪悪感に耐え切れなくなったためだ、という説もあるようだ。これは、窃盗事件の真偽としては判別しがたいが、モナ・リザの逸話の一部としては起こりえそうな現象だ。あくまでも推測だが、拾得物をそれと知らずに偶然買い取ったわけでなく、国家規模の財産を故意に盗んだのだから、今回のケースのように気軽に飾っておけるような心境ではなかったのではなかろうか。

それを本物と知らずに気軽に台所に飾っていた男性と、ゴーギャンの絵画のエピソードはまるで寓話のようだ。真物であり、高価なものと知っていたなら、男性はその絵画を気軽に台所には飾っておけなかっただろう。一方、金庫に隠されたままの絵画が本来の役目を果たしているとは言い難いだろう。その価値を知らないからこそ為されたゴーギャン絵画との同居。一切を金銭に換算したがる生活よりも、遥かに真摯で洗練されており、本当の贅沢と言えるのではないだろうか。何しろ彼が探していたのはゴーギャンではなく、ただの「台所に合う絵」だったのだから。

3千円で買った絵の1枚、ゴーギャン作だった イタリア
http://www.asahi.com/articles/ASG432DXXG43UHBI00F.html?iref=comtop_6_02 【リンク

盗まれたゴーギャン作品、イタリア男性宅の台所で44年ぶり発見
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140403-00000044-reut-int 【リンク

盗難のゴーギャン作品が台所の壁に、40年ぶりに発見 伊
http://www.cnn.co.jp/fringe/35046051.html 【リンク

東京メトロ お忘れ物の流れ
http://www.tokyometro.jp/support/lost/index.html 【リンク

電車忘れ物市
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20140108/zsp1401081400004-n1.htm 【リンク

鉄道の忘れ物市「おおにし」
http://www.mydo.or.jp/kodawari/i46.htm 【リンク

鉄道 忘れ物市 よろづや
https://twitter.com/yorozuya_jp 【リンク

ビンセンツォ・ペルージャ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A9%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A3 【リンク

 

画像提供元:ラブフリーフォト 【リンク

※この記事はガジェ通ウェブライターの「小雨」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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