『白ゆき姫殺人事件』中村義洋監督が“バカッター”に言及「本当理解できない感覚」

access_time create
main1_large

化粧品メーカーの美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される事件が起こり、典子と同期入社で地味な存在の女性・城野美姫(井上真央)に疑惑の目が向けられる。テレビのワイドショーは美姫の同僚や同級生、故郷の人々や家族を取材し、関係者たちの口からは美姫に関する驚くべき内容の証言が飛び交う。噂が噂を呼び、何が真実なのか多くの関係者たちは翻弄されていき……。

3月29日より公開となる映画『白ゆき姫殺人事件』は、『告白』『贖罪』で知られる作家・湊かなえの原作を映画化したサスペンスドラマです。

監督は『ゴールデンスランバー』『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋。今回は中村監督に作品作りの裏話や、Twitter炎上に関してなど、色々なお話を伺いました。

中村義洋監督

――本作は湊かなえさんによる原作の映画化ですが、最初に小説を読んだ時の感想を教えてください。

中村義洋(以下、中村):湊かなえさんの原作はいちミステリーとして、どんな結末になるのだろうと読み進めていて、もちろんオチも最高だったけど、出てくる登場人物全員の“いやらしさ”というか裏側を表現している所がうまいなぁと思って。
物語の本筋とTwitterの画面が行ったり来たりする構成も面白かったし。

――監督は伊坂幸太郎さん原作の『ゴールデンスランバー』などを手がけられていますが、人気作品を映画化することにプレッシャーを感じたりすることはありますか?

中村:いつもファンNo.1な気持ちでいるからプレッシャーはあまりないんだよね。逆に読者の皆に「俺が映画化するんだぜ、いいだろう!」と思ってる。
『白ゆき姫殺人事件』の赤星(綾野剛)は原作では週刊誌の記者ですけど、映画だとワイドショーのディレクターに変えていて。湊さんって土俵の違いを理解してくれる方で、脚本が出来上がってからお会いしたんですが「映画だとこうなるんですね」って面白がってくれました。

――映像化にあたって苦労した所はありますか?

中村:Twitterの画面をスクリーンでどう表現するかですね。普通の会話をしながら、全く別の字幕が出てくるのってうるさくないかな? とか考えて。大変だったんですよ、文字を流すスピードとか、サイズとか調整にすっごい時間かかって。

――すごく自然で、Twitterに流れる文字が心の声をうつしている様でとても面白い表現だと思いました。

中村:ありがとうございます。新しい表現をしたつもりは無いんですけどね。「迷惑だ」って嫌そうな顔をしながらTwitterでは普通のテンションでつぶやいている。見えているその人のキャラクターとTwitterでのキャラクターが違うというのも、この物語の魅力の一つだと思ったので。

――役者さん達、皆さんこれまで見たことも無い様なイヤ〜な顔をしていました。良い意味で。監督からの演技指導はあったのでしょうか?

中村:してないしてない、全て役者さんたちのおかげです。真央ちゃんは台本にあまり書き込まなくても全て察してくれて、演じてくれました。剛君の役は嫌な奴だけど、逆に言うと裏表が無いので「みんなの方がもっと大変なんだよ」って言ったりはしましたね(笑)。

――キャスティングはすんなり決まったのでしょうか?

中村:今回キャスティングにはすごく時間がかかりました。だって真央ちゃん美人でしょ? 全く「地味で可愛くない女の子」には見えない。でもキャスティング時にプロデューサーが持ってきた、暗く見える真央ちゃんの写真を見て、これだったらいけるかなって。

後は、菜々緒ちゃんが演じた典子が決まらないと他が決まらなかった。典子が一番美人という設定だけど、宮地真緒さんだって美人でしょ。蓮佛ちゃんだってそう。菜々緒ちゃんみたいに圧倒的なスタイルの良さとか、分かりやすい“美人像”が大切だったんだよね。

――苦労されただけあって、皆さん本当にどこのコミュニティにもいそうなキャラクターに仕上がっていましたね。

中村:女性同士のいや〜な感じね。洋服を真似する子とか、噂に尾ひれをつけて広めちゃうとか「ああ、こういう人いたかも」って思うでしょ。

――長野県でロケを行ったという事ですが、地方の閉塞感みたいな物も意識していたんですか?

中村:ううん、夏の撮影だったので標高の高さ重視で(笑)。でも、原作を読み解いていくうちに「この舞台って長野じゃないかな?」と思う所があったんですね。それか北陸だろうと。それで湊さんにお会いした時に聞いたら、湊さんが海外青年協力隊に所属していた時に訪れた駒ヶ根が規模感的にモデルなんですって。それで、プロデューサーに「よし長野ロケだ!」って言って。夏場の撮影だったので、東京での撮影は本当に難しいんですよね。録音があるからエアコンも止めないといけないし……。そういう意味で、長野ロケは有り難かったです。

――本作はTwitter炎上というテーマもリアルに描かれていますが、監督ご自身は以前よりご存知でしたか?

中村:そういった現象があるのは知っていました。ここ3年くらいで特に騒がれているよね。

――昨年の夏、飲食店のアルバイトが冷蔵庫に入ったり、鼻の穴に醤油を入れたり……。「バカッター」と言われる事件がたくさんありましたね。

中村:彼らは何であんなことしちゃうんだろうね。人が炎上しているの見てるはずだよね? でも同じ事を繰り返しちゃう。赤星もそうだけど、やっぱり目立ちたいんだろうか、自己顕示欲のあらわれとか。本当理解出来ない感覚だけどね。

――赤星はまさにそんなキャラクターでしたが、綾野さんの演技が見事でした。

中村:剛君はTwitter炎上とか、バカッターについてよく知ってましたよ。よくそういう目に合ってる。プライベートで食事していて「今店に綾野剛がいる!」ってつぶやかれていて、「ああ、この中の誰かが書いてるんだな」って思った事もあったらしい(笑)。恐いよね。

――映画が公開されて、若い観客も多いと思うので、少しでもいいからTwitterや噂などとの付き合い方を考えてみて欲しいなと思いました。

中村:そうですね、まずは楽しんで観てもらって、それでTwitterに書き込む時に少しこの映画を思い出してもらえたら。こんなに嬉しいことは無いですね。

――今日はどうもありがとうございました!

【関連記事】炎上すると分かっているのになぜ? 『白ゆき姫殺人事件』は“劇場版バカッター”だ!
https://getnews.jp/archives/533517 [リンク]

白ゆき姫殺人事件
http://shirayuki-movie.jp/

(C)2014「白ゆき姫殺人事件」製作委員会 (C)湊かなえ/集英社

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 『白ゆき姫殺人事件』中村義洋監督が“バカッター”に言及「本当理解できない感覚」
access_time create

藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。