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被災体験が引き起こすPTSDのケア

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PTSDは、「異常な状況に対する正常な反応」

「PTSD(Post traumatic stress disorder)」は、心的外傷後ストレス障害と訳され、大きなストレス体験に接した後に、「トラウマ反応」の一つとして発症する障害です。トラウマ反応は個人の素因に関係なく誰にでも起こりうる障害で、「異常な状況に対する正常な反応」と言われています。

大規模な地震など、災害に被災した人たちは、心に大きな傷を負うことになります。今まで暮らしていた街が一瞬にして廃墟と化す。大切な家族や友人の命が奪われる。自らも生命の危機に遭う。家や職を失う。非日常的で、衝撃を与えるストレス体験に接すると、その出来事がトラウマとなり、多くの人が「ASD(急性ストレス障害)」の状態に陥ることが報告されています。

人の心には元来「自然治癒能力」が備わっており、衝撃的な体験によって心の傷を負ったとしても、時間の経過とともにそれが薄れて、自然に通常の心の状態に戻るケースも少なくありません。しかし、トラウマ反応が慢性化し、1か月以上の長期にわたって症状が継続する場合に、PTSDと診断され、適切な治療とケアが必要となります。

トラウマの症状が慢性化すると、生活を営む上で大きな障害に

トラウマ反応ではさまざまな症状が起こりますが、主な症状としては、意思に関係なくトラウマ体験時の情景と感情が想起される、いわゆる「フラッシュバック(侵入)」があります。この侵入に伴い、物音や刺激に対して過敏になり落ち着けず眠れなくなる「過覚醒」や、心の防衛反応からトラウマ体験を意識から遮断し記憶や感覚が乏しくなる「麻痺」、また「感情の変化(抑うつ・無力感・罪責)」、「対人関係の変化」も起こります。このような状態が慢性化すると、生活を営む上で大きな障害となってしまいます。

大災害に被災した人に対するケアで、最も優先するべきは「安全と安心の保証」です。被災直後の状態であれば、置かれている環境がいまだ危険を伴う場合もあり、一刻も早く安全な場所へ避難する「環境的安全の確保」が第一です。続いて「身体的安全の確保」、けがの手当てなどの「医療的援助」、そして「精神的安心の確保」となります。

被災直後は「何が起きたのか」「自分は何をすればいいのか」を、正確に把握できず精神的混乱の状態が起こります。ケアをする側は冷静に「起こった出来事」「今、何をすべきか」「危機は過ぎ去ったこと」「今いる場所は安全であること」などを、正確に伝えることが重要です。 さらに、トラウマ反応が出ている人には、それが当り前に起こる「異常な状況に対する正常な反応であること」「決して、あなたがおかしくなってしまったのではない」と、伝えることも必要です。ストレス体験の直後にこのようなケアを行うことは、その後のトラウマ反応の慢性化や精神的問題を予防するために有効な方法です。

できるだけ早期に適切なケアと治療を行うことが望ましい

前述したように、トラウマ反応は時間の経過とともに消滅することも多いのですが、図らずも症状が慢性化してしまった場合には、専門家の治療が求められます。トラウマ反応の治療には、「薬物療法(睡眠剤・抗不安薬・時に抗うつ薬・SSRI)」、「心理療法(認知行動療法・カウンセリング・EMDR)」などが有効であり、必要であれば両者を並行して行います。

PTSDなどのトラウマ反応は、できるだけ早期に適切なケアと治療を行うことが望ましいのですが、被災した人の中には、「心に症状が出ているのは自分が弱いからだ」「自分はおかしくなってしまった」「大勢の人が亡くなったのに、自分はおめおめと生き残ってしまった(サバイバー・ギルド)」などと考え、症状を隠したり治療に消極的な人もいます。被災した人に関わる際は、このような事実を十分に理解して接し、必要であれば専門機関への受診を促していきましょう。

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