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山口組と関東連合の人事制度を割と真面目に考察する

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今回は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。
※この記事は2013年12月25日に書かれたものです。

山口組と関東連合の人事制度を割と真面目に考察する

今週のメルマガの前半部の紹介です。
先日、昨年に六本木で起きた傷害致死事件の被告に対し、懲役22年が求刑されて話題となりました。男は関東連合の幹部で、海老蔵暴行事件でも名前の出た石元被告です。殺人ではなく傷害致死、それも直接参加はしていない連絡係という役回りにも関わらず22年という求刑からは、検察の関東連合潰しへの強い執念を感じます。彼ら関東連合とは何者なのでしょうか?また、従来のヤクザ組織と何がどう違うのでしょうか?

今年、ちょうどそうしたつながりがよく分かる優れた書籍が2冊ほど世に出ました。経済・雇用関連を除く一般書籍の中では、個人的に一番のヒットだったように思います。単純に読み物として面白いのにくわえ、この二冊を続けて読むと「アウトローのキャリアデザイン」まで理解できるという優れモノです。

当たり前の話ですが、アウトローの世界には労基法も判例もありません。力で全てが決まる世界、法さえ超越した完全実力主義の世界です。そこでどういった人事制度が機能してきたのでしょうか?ある意味、そこは不純物のない無菌状態の実験室のようなもの。雇用の規制緩和を求める人にとっても、雇用を規制で守るべきだと考える人にとっても、貴重な考察が得られるはずです。

「鎮魂 ~さらば、愛しの山口組 [単行本]」 盛力 健児(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/鎮魂-〜さらば、愛しの山口組-盛力-健児/dp/4796699147/

山口組最盛期である三代目体制で三次組織の組長だった著者は、1978年、対立組織との抗争(大阪戦争)で殺人の指示を出したとして逮捕されます。なんとかして山口組執行部の直接の関与を認めさせようとする大阪府警の過酷な取り調べにも屈せず、最後は舌を噛んでまで自白を拒否し、結局、16年もの長いお勤めをすることになってしまいます。

とはいえ、抗争の重要な局面できっちり組織のミッションをこなし、責任を自分一人でかぶったことで、著者の極道としての株は急上昇。94年の出所後は五代目山口組直参として迎えられ、自らの組織である “盛力会”の親分として、順風満帆な極道人生が待っているかのように思われました。

ただ、著者が塀の中にいる間に、日本社会は大きく変化していました。バブルの隆盛とその崩壊です。それは極道の世界にも大きな影響を与え、ヤクザそのものが大きく変質してしまったと著者は言います。

四代目の親分なんか、人が金持ってきても「そんな金いらんわい!」言うて蹴る人やった。袖の下なんて持っていったって「持って帰れ!」言うて一切、受け取りませんでしたよ。ところが俺が懲役から帰ってきた頃には皆、カネ、カネ、カネや。おまけに直参同士で足の引っ張り合いばかりしとる。

昭和のヤクザは名の知れた親分でさえ、そんなにお金なんて持ってなくて、むしろあったらあったで「宵越しの税には持たねえ」とばかりにぱっぱと使ってしまったそうです。それが、出所してみれば、周囲の親分衆がみな十億単位のお金を動かしている。中には百億、一千億の金を握っている者までいる。

なにより、直参(山口組の直属の二次組織で、直参と三次団体では決定的に扱いが違ってくる)の中に、明らかに資質や貢献度で劣るのに「金集めが上手いから」という理由だけで昇格している者もいる。

著者はその変わりように衝撃を受け、組の行く末を危惧します。ヤクザをヤクザたらしめているモノを失えば、いくら金は稼げても、組織としての結束力は維持できないのではないか。だいたい、そうなってしまった後で、誰が組織のために身体を張ろうなんて思うだろうか。

やがて著者の危惧は現実のモノとなります。宅見組長射殺事件と中野組絶縁処分、山竹抗争等、山口組は様々な内紛に見舞われますが、それらはすべてヤクザ自身の体質の変化が招いたものだというのが著者の見方です。著者の口から語られる宅見事件と山口組5代目引退の真相は、本書のクライマックスとも言える衝撃的な内容です。

盛力親分本人の口述を中心にした内容で、関西弁で陽気に話すせいか、おどろおどろしさはまったくありません(ぜんぜん“鎮魂”っぽくもないですけど)。

「大阪府警に捕まるとガッタガタにいわされる」
(当時の大阪府警は極道真っ青の超暴力的な取り調べをしていたそうで、府警怖さにわざわざ和歌山の敵対組織に報復しに遠征していたヤクザもいたらしい。和歌山のヤクザもいい迷惑である)

「二言目には『あのガキ、殺したる』やから。それもほんまに殺るから。有言実行やから(笑)」
(宅見組長を射殺した中野会中野会長について。ちなみに著者は仲良しとのこと)

本人の口述と編集者の解説文のバランスが絶妙で本人のカラーを残しつつ読みごたえのあるノンフィクションに仕上がっています。

さて、この盛力親分がシャバに出所した頃、ヤクザとはまったく異質の、そして若いグループが東京で勢力を拡大していました。それが暴走族OBらによる半グレ集団、いわゆる関東連合であり、その内幕を現役幹部自らが描いたのが「いびつな絆 関東連合の真実」です。

「いびつな絆 関東連合の真実 [単行本]」 工藤 明男(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/いびつな絆-関東連合の真実-工藤-明男/dp/4800209919/

六本木のクラブ“フラワー”に目だし帽姿の一軍の男たちが現れるシーンから本書はスタートします。彼らは一人のターゲットをバットで滅多打ちにし終えると、来た時と同じように足早に店を去っていきます。そう、昨年9月に関東連合が起こした六本木暴行事件です。公衆の面前で、それもバットという本来は武器ではないはずの道具で行われた犯行は、ヤクザとはまったく異質な暴力性を想起させます。彼らはいったい何者なのでしょうか。

現在の関東連合とは、都内の昭和53~58年生まれの不良グループの連合体であり、70~80年代の暴走族とはまったく関係ありません。「昭和53年以降の6年間のメンバー以外は、どれだけ年齢が上であってもメンバーとは認めないし、敬うことも無い」という著者の言葉がすべてを物語っています。

ただし「20歳を前に引退する」という昔ながらの暴走族のルールは今でも健在らしく、他の暴走族は実際にそうやってメンバーを入れ替え、多くの組織は後継者不在で消滅していきました。なぜ関東連合だけ、族を引退しつつも組織が強固なまま存続しているのでしょうか。

鍵は、組織を束ねる強烈なカリスマ性を持つリーダーと、夜の街に彼らを橋渡しした有力OBの存在でした。こうして彼らは二十歳を過ぎてもなお、“関東連合”の看板の下、渋谷や六本木といった繁華街で勢力を拡大し、さまざまな利権を握っていくことになったのです。バイクは降りても、行動スタイルや価値観自体はかつての暴走族のままの半グレ集団の誕生です。

96年のクリスマスイブ。特攻服姿の関東連合が渋谷センター街をのし歩き、その渋谷の顔役となっていたかつてのOBと邂逅するシーンはさながら映画の一場面のようです。

その後は、少年時代に起こした複数の暴力・殺人事件、そして朝青龍や海老蔵の暴行事件を織り交ぜつつ、彼らの行動原理が詳細に描写されます。終章に読みいたる頃には「なぜ六本木のど真ん中でバットを振り回すなんてことをしたのか」という理由がおぼろげながら理解できているはずです。

関東連合という暴力が支配する組織の中で日常を送り、抗争に明け暮れる中で、集団の中にはどす黒く、静かな狂気が醸造されてしまった。そして「グループのための抗争」という大義名分のもと、狂気を解放する場面を常に探し続けていたのだ。きっかけさえあれば相手は誰でもよく、理由すらいらなかった。

本書は前者とはうって変わって淡々と事実を著述していきます。おっちゃんの昔話と違い、世代的にも近く、なによりリアルタイムで公判も進行中の話である分、生々しいまでのリアルが行間からにじみ出ています。

その他、気になったエピソード。

・ メンバーは世田谷、杉並の中流以上の家庭出身。“貧困”や“複雑な家庭”といったキーワードとは無縁なものがほとんどだ。ただし中学受験はせず、塾などに通わない子供同士でつるむようになったのが非行に走るきっかけだった。

・ 現在海外逃亡中の関東連合リーダーは、少年時代に鑑別所で行われる知能検査を複数回受けているが、すべて上限を超える“計測不能”だった。

・ 海老蔵はアウトロー達から「いったいどういう育てられ方をしたらあんな傲岸不遜な人間になるのか」と呆れられるほど酒の席での態度が悪い。

以降、
意外に健全なヤクザの人事制度
なぜ“半グレ”が誕生したのか
流動性の高い関東連合の人事制度
アウトローはどこへ行くか

※詳細はメルマガにて

「人事コンサルタント城 繁幸 『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」『ビジスパ』
http://biz-spice.jp/public/detail/1007/1007/

「城繁幸 『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」 『夜間飛行』
http://yakan-hiko.com/joe.html?PHPSESSID=2lh2i8id4bkas4012essktesm7

「城繁幸の『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」 『BLOGOS』
http://magazine.livedoor.com/magazine/75

執筆: この記事は城繁幸さんのブログ『Joe’s Labo』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年12月28日時点のものです。

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