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イギリスの冷酷な現実主義っぷり

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今回は谷本真由美(May_Roma)さんのブログ『英語虎の穴』からご寄稿いただきました。

イギリスの冷酷な現実主義っぷり

ワタクシの本職は一応専門コンサルで、調査もやったりするんですが、調査する際には、研究所とかお役所が作る調査報告書というのを読んだりします。

こういう報告書って、研究所が書いている事もあるし、大学の先生や民間の会社が書く事もあります。イギリスの場合は、大学側が大学の先生に「お前、外から銭を稼いできな!」と営業目標を設定している場合もありましてね(恐ろしいっしょ)大学の先生が政府の政策調査(なんか決めるために、それって平気かどうか調べる)をかなりやっとります。営業目標達成しないと首ですよ。国立大学の先生なのにね。怖いよね。日本は甘いよな。

最初から結論が決まってる場合もありますけど、それやっちゃうと先生の経歴が疑われちゃうんで、一応ちゃんとやってますよ。官僚さんは何やってるかというと、「これを調べてちょ」というお題目を決めたり、調査やる人を選んだりする。安い金額で大量にアウトプット集めるほど偉い人扱いだから(ほらここはケチ大国だから)、最近は、大学の先生に対する要求が超厳しくなってます。政府に銭がありませんので。あと、バカを選んじゃうとあとで怒られるし、非営利団体とか暇な市民からバンバン突っ込みが入って恥ずかしい思いをしますので、一応ちゃんとした先生を選ぶんですよ。御用学者みたいなのもいますけど、一応、学術的な正確性が大事だから、多くはないですね。変なことを書くと転職先がなくなるし、非営利団体とか民間企業のコンサルなんかできなくなっちゃうから。

なんでこういうことをやるかというと、税金を使って何かやったり決めたりする場合に、「こういう数値的な裏付けや、研究の結果こういう効果があるってわかったんです。だからこうやってお金使うわね」と皆さんにお知らせしないと「なにやっとんじゃ、われ!!!!!」と講義とか批判が山の様に来てしまうからなんですね。

ここの人達は強いので、文句はドンドン言うんです。なにせ税金が高いですから。年収600万ぐらい越えたら半分は税金で持って行かれて、消費税だって20%ですから。外食なんかしたらもうそりゃーお高いですよ。しかも役所以外に様々な非営利団体があったりします。そういう団体は調査のプロを常勤や非常勤でやとっていて(博士号持っている人が多い)役所の政策をバンバン検証したり批判します。だから恐ろしいんです。

日本人はやる気ないからそんな批判はしないですね。家電の値段とか、地下鉄が10円値上がりしたとか、節約とか割引には熱心なのに、なんで税金の使われ方は興味ないんでしょうね。

やっぱりバカなんでしょうね。

日本でもそういう調査は、時々思い出した様にあるわけですけど、でもまあ、イギリスが違う所はその書きっぷりですよ。

イギリスは冷酷無情だから、こういう文書に結構凄い事を書いてあって、それはそれで、読んでてなかなか面白いわけです。

例えば、ESRC Centre for Market and Public Organisation (CMPO) とthe Institute for Fiscal Studies (IFS)というところがやった「子供の学業成績には、両親の教育に対する考え方や生活パターンが及ぼす影響が大きく、貧困家庭では教育を重視しないため、子供の成績が芳しくない」という研究の結果は「うへえ、これ言っていいの?」という内容。

「Education vital for social mobility(PDFデータ)」 『Economic and Social Research Council』
http://www.esrc.ac.uk/_images/education-vital-social-mobility_tcm8-20069.pdf

以下抜粋&要約:

「貧困層の子供は、社会的、感情的スキルにかけているためコミュニケーションが不得手で、学校で会話に入って行くことができない。家庭には勉強に集中できる静かな場所がなく、親は学習が重要だと考えないため家庭で学習する習慣がない。住環境が貧弱なため病気になることが多く、勉学に集中できない。また貧困層の子供は、3歳、5歳、7歳の時点で、同年齢の子供に比べ、知能が劣っているため成績に影響を及ぼしている。貧困層の子供は幼少時から学ぶ環境や金銭的資源に恵まれないため、高い教育を受ける機会がなく、職業選択時には非熟練動労など賃金の低い仕事を選ばざるなく、一生貧困である」

「GCSEsで良い結果をだす生徒は自分にとって自信があり、試験で良い結果を残せると信じている。さらに、中等教育のうちから大学へ進学することを考えているため、進学に取ってリスクの高い行動、例えば喫煙、麻薬の使用、反社会的行動、窃盗、暴力などを避ける傾向があり、虐められることも多くはない。貧困層はその反対である」
(http://www.esrc.ac.uk/_images/education-vital-social-mobility_tcm8-20069.pdf )

要するに

「貧乏人の子供はバカで親もバカで虐められっこで社会のクズ」

と言っているわけです。だから、それは宜しくないから、補助金だしたりして、状況を改善しようという政策を考えるわけです。現実を冷酷に直視するからこそ、税金という貴重な資源を適切に配分できるという考え方があるわけですね。冷酷なのは重要なんですよ。奇麗ごと言ってても状況は改善されないわけで。イギリス人のこういう冷酷さは、まあ、なんか面白いなと思います。

*この記事はメルマガ「週刊めいろま」一部抜粋し内容を編集した物です。全文を読みたい方はこちらからご登録下さい。初月一ヶ月無料です。

「Vol.015 イギリスの冷酷な現実主義っぷり」 『BLOGOSメルマガ』
http://magazine.livedoor.com/press/8237

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神奈川県生まれ。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関情報通信官などを経てロンドン在住。
専門分野はITサービス管理、プロセス改善、 ITガバナンス、通信業界市場調査。

著作:
『ノマドと社畜』(朝日出版社)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4255007055)
『日本が世界一貧しい国である件について』(祥伝社)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4396614519)
『日本に殺されず幸せに生きる方法』(あさ出版)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4860636074)
『キャリアポルノは人生の無駄だ』(朝日新聞出版)
(http://www.amazon.co.jp/gp/product/4022735082)

海外居住経験、職業経験に基づく深い知見をもとに、@May_Romaとして舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
Twitter:@May_Roma
メルマガ:「週刊めいろま」 http://magazine.livedoor.com/magazine/80
ウェブ連載:ケイクス (Cakes) https://cakes.mu/r/rFdl
ウェブ連載: ロンドン電波事情 http://wirelesswire.jp/london_wave/
ブログ:英語虎の穴 http://eigotoranoana.blog57.fc2.com/blog-entry-80.html
CNN English Express: 「London Calling ――イギリス英語に耳をすませば」http://ee.asahipress.com/eeclub/mm.html
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執筆: この記事は谷本真由美(May_Roma)さんのブログ『英語虎の穴』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年12月19日時点のものです。

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