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薬ネット販売、規制は必要か?

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薬事法改正案にネット販売業者が反発

今年1月の最高裁判決において、薬のネット販売を一律に禁止していた厚生労働省令が、薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効と判断されたのを受けて、規制がないまま、いわゆる「野放し状態」で販売が行われています。そのような中、多くの市販薬のネット販売を認める一方で、医療用医薬品(処方薬)から切り替わって3年以内の市販薬と処方薬は対面販売に限るとする薬事法改正案が閣議決定され、今国会で成立して来春からの新ルール導入となる見通しです。

これに対し、ネット販売業者は一様に反発しており、楽天の子会社のケンコーコムは、医療用医薬品(処方薬)をネットで販売する権利の確認を求め、国を相手取り東京地裁に提訴しました。処方薬のネット販売については欧米では認めている国も多く、今回の改正案の規制は合理的な理由を欠くという主張です。 ネット販売の一部に規制を設けることに関し、この法案提出の責任者である田村厚労相は「薬局での対面販売によって薬剤師の五感で安全性を確認する必要がある」と述べていますが、その説明では不十分ではないかという印象があります。

「公共の福祉」という観点から規制はやむを得ない

「職業選択の自由」は日本国憲法第22条第1項に明記される基本的人権ですが、そこから派生して「営業の自由」も含まれるというのが通説的解釈です。医薬品をネットで販売することも営業の自由の対象となるわけですが、この自由権は「公共の福祉に反しない限り」と限定がされています。つまり、今回の薬事法改正案は、「営業の自由」を規制しても良いだけの「公共の福祉」があるのか、という基準から判断すべきなのです。「公共の福祉」というとわかりにくいかもしれませんが、具体的には、ネット販売によって薬害や薬物依存者が増加するリスクが高まるかどうかといった観点からの検討がなされなければなりません。

現実にネット販売を幅広く解禁している欧米では、ネットで偽薬を購入した人に健康被害が出ているという報告もあるようなので、全面的に解禁することにはやはり問題が多いでしょう。したがって、「公共の福祉」という観点から規制はやむを得ない、というのが私の基本的な考えです。

それに、偽薬の問題だけではなく、ネットやテレビショッピングなどで買い物依存に陥る人が少なくない現状を考えると、ネットによる薬の買いやすさが薬物の過剰摂取を引き起こす恐れがあることは気になるところです。特に、処方薬のネット販売が解禁されれば、そのリスクは市販薬よりもさらに高まります。対面販売であれば、処方箋は薬局に回収されるため、同じ処方箋で何度も処方薬の購入はできませんが、ネットで販売する際には複数回購入を防止することは難しいでしょう。

処方薬から切り替わって3年以内の市販薬を一律に限定するのは過剰

このように考えると、処方薬を対面販売に限定するという改正の方向は評価すべきではないかと思います。しかし、一方で、処方薬から切り替わって3年以内の市販薬を一律に対面販売に限定するというのは過剰な規制だと思います。基本的人権に対する制約は限定的であるべきというのが法解釈の基本ですから、薬の特性に応じて対面販売に限定する市販薬を個別に指定するというルールを検討するべきではないでしょうか。

いずれにしても、ネット販売で薬を購入したときには、これまで以上に自己責任が求められます。ネット販売業者もサイト上に薬の副作用等のリスクは表示するのでしょうが、それをきちんと理解する自信がないのであれば対面販売で購入した方が良いでしょう。

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