緊急掲載 被曝の限度は民主主義で・・・1ミリと20ミリの違い(中部大学教授 武田邦彦)

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緊急掲載 被曝の限度は民主主義で・・・1ミリと20ミリの違い(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
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緊急掲載 被曝の限度は民主主義で・・・1ミリと20ミリの違い(中部大学教授 武田邦彦)

原子力規制委員会が一般人に対する1年1ミリの規制を、1年20ミリまで「容認する」というような記事があちこちにみられます。でも、これには1つの大きな間違いと、1つの疑問があります。

【大きな間違い】

1年1ミリというのは「安全の議論をした後の結論」であって、規制のための単なる数値である。実質的には次のようにして決めなければならなりません。

被曝の規制値に二つあって、一つは「免除レベル」と言われるもので、これは「免除レベル以下なら健康に影響がない」というレベルで、日本では1年0.01ミリです。

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福島民報の記者の方、悪意で新聞の見出しを作ったのではないと思いますが、正しく書いてください。この新聞に「健康に影響なし」とありましたが、これは被ばく限度(線量限度)ではありません。新聞は社会的公器ですから、主義主張はかまいませんが、事実は新聞記者として正しく見出し(整理部でも同じ)を出してください。

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つまり、上の図はなんどもこのブログに出していますが、被曝の規制は二つに分かれていて、低いほうが「免除レベル」で、高いほうが「線量限度」です。その下に説明がありますが、免除レベルというのが「受け入れできる線量」、つまり実質的に健康影響がないことを決めるレベルです。

これは日本では1年0.01ミリになっていて、それを超えることをした人は、実に「懲役1年以下」の罰則になります。当然ですが、人の健康に影響を与えるのですから、いわば傷害罪です。

次に「線量限度」があり、それが1年1ミリです。これは「望ましくないが社会的に耐えられる線量」ですから、健康影響はあるのですが、耐えられる限界というものです。これについて、がんセンターで明確に示しています。

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この表はがんセンターから出ているもので、専門的な表ですから「10万人あたり」になっていますが、「社会的に耐えられる」というのですから、国民が一般に理解しなければなりません。国民は普通は「火災や交通事故に比べて犠牲者が多いか、少ないか」で耐えられるかどうかを決めます。これはこれまでの毒物などもそのように議論されました。

それを次の表に示します。この数値は1億2700万人で、どのぐらいの犠牲者(火災の場合は焼死者、交通事故は交通事故死亡者、被曝の場合は(致命的発がんと重篤な遺伝性疾患)の合計です。致命的発がんというのは読んで字のごとく「死に至るがん」を意味し、「重篤な遺伝性疾患」は言葉に出すのもかわいそうな子供が生まれるということです。

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この表は、他の災害と比較するために10万人あたりを12700万人に計算したもので、社会が耐えられるかどうかは、この表で決まります。火災で2000人、交通事故で5000人で、これに対して1年1ミリなら8001人、1年20ミリなら16万人です。

交通事故死が1万人になった時、「交通戦争」と呼び、日本国民は耐えられないと感じ、現在は5000人で国民が耐えられると思っています。だから、「自動車ぐらい価値があれば、5000人は仕方がない」という感じです。

現在の1年1ミリは8000人ですから、「どうしても原発は必要」と考えている人は「しかたがない」と思うでしょうし、「火力発電で良いじゃないか」と思っている人は少し多めと感じるでしょう。

しかし、原子力規制委員会や福島民報のように、「16万人」はどうでしょうか?まず、福島民報が報道したような「健康影響なし」というのははっきりとした「ウソ」ですから、福島民報は訂正が必要でしょう。

【疑問】

それでは、原子力規制委員会はなぜ「16万人の死亡」を「我慢できる」と判断しているのでしょうか? 日本国内の自然死は約120万人で、平均して83歳です。火災、交通事故、原発事故の犠牲者は83歳ではなく、平均してもっと若く、小児も犠牲になります。その点で16万人というのは異常な数値であることははっきりしていると私は思います。

次に、もともと原子力規制委員会というのは、「国会などで決まった安全規則を守らせる委員会」であり、「国民がどのぐらいの犠牲なら耐えられるか」を決めることはできないと思います。

原発や被曝は多くの人が影響を受けますから、次の質問をしたら1年1ミリか20ミリかが決まると思います。

【国民への質問】・・・誠実な政治家ならこれを聞くでしょう

あなたは原発事故の際の被ばく限度として、どの程度までなら耐えられますか? 火事の犠牲者が2000人、交通事故の犠牲者が5000人、自然死が120万人程度(死亡者数の3分の2が75歳以上)であることを念頭にして決めてください。

1)800人程度
2)8000人程度
3)8万人程度
4)16万人程度
5)80万人程度

まず、これを決めたら、1)なら0.1ミリ、2)なら1ミリ、3)なら10ミリ、4)なら20ミリ、5)なら100ミリ、と決まるのであり、最初に「何ミリシーベルト」などと決まるものではありません。

まして「1年20ミリで健康影響なし」というのはまったくのウソですから、犯罪の予備行為として処罰対象にしなければならないでしょう。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年11月13日時点のものです。

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