差別はネットの娯楽なのか(16)― 竹田恒泰「私は在日特権について事実を述べただけのこと。まして在日を差別する発言はしていない」
読売テレビが10月20日に放送した「たかじんのそこまで言って委員会」で、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」によるヘイトスピーチ(憎悪表現)の問題が取り上げられた。
パネリストで出演した作家の竹田恒泰氏は「在特会が活動したおかげで在日の特権の問題が明らかになった。例えば、通名というのがあって、日本人の名前に変えることによって、犯罪歴や金融関係の経歴を全部消すことができ、また新たな犯罪ができる」と述べた。
これに対し、在日外国人の人権保障に取り組む大阪市のNPO法人「コリアNGOセンター」は22日、同社に対し抗議を行うとともに、放送倫理・番組向上機構(BPO)にも審理を申し立てた。
23日、竹田氏は自身のツイッター上で
『そこまで言って委員会』の私の発言について読売テレビに抗議があったようだが、私は在日特権について事実を述べただけのこと。まして在日を差別する発言はしていない。私はこれまで「在日は日本の宝」といい続けてきた。
と反論している。
民族名を使うことによる入居差別は、現在も続いている。私自身、東京で事務所を出す際に何度も断られた。永住権があり収入が安定していても、貯金があっても保証人を用意できてもそれは関係なく、まず「名前」だけで判断される。
大阪では雇用の際に通名使用を強要されたとして、「イルム裁判」も行われており、民族名を名乗らせない社会の土壌がある。そういう事実が数え切れないほどあることを、竹田氏をはじめとする出演者や番組関係者は全く知らなかったのだろう。差別から逃れるために同化させられていることを知らず、分かったように通名を語ることこそ、「特権」じゃないのか。
「私はこれまで『在日は日本の宝』といい続けてきた」という言葉も、むなしく映る。「I have a black friend」と例えられるが、それが差別をしていない理由にならないし、在特会の会員や差別者などはよく、「自分には在日の知人・友人がいる」と話す。事実かどうかが問題ではなく、その言葉は自身の持つ差別を誤魔化し、正当化するために過ぎないものであることは明らかだ。都合のいい時だけ「宝」にされ、持ち上げられるのも、変な話だと思う。
また、竹田氏の発言に怒るのは、その発言が今後何を生み、育てるのかを経験上嫌と云うほど知っているからだ。差別と憎悪は、いつだって一番弱いものへと向かう。京都朝鮮学校の襲撃事件の判決が下って安堵したのもつかの間、大阪ではある朝鮮学校への嫌がらせ事件が発生した。
さらにこの放送を受けて、次に何が起こるのだろうかと不安に震える。何かが起こった時、差別を煽った張本人らが知らん顔を決め込むことも、また分かり切っている。
在日特権がただのデマにしか過ぎないということはずっと以前から暴かれており、代表的なのが「ホンマかいな在日特権?」と題されたこのブログ blog.goo.ne.jp/mpac だ。
このブログは、在特会が振りまく在日特権というデマが拡散されていくことに危惧を抱いたある人が2007年2月から始めた。そして、今も継続し更新されている。
この社会には6年以上前から「在日特権というデマ」を信じたい人がずっと存在すること、それはこの社会が関東大震災の時から全く変わっていないということでもある。もしかしたらそれが一番怖いことなのかもしれない。
「在特会の街宣は人種差別」と京都地裁に断じられた。その在特会の行為を擁護した竹田氏、それをそのまま放送した「たかじんのそこまで言って委員会」を制作した読売テレビは、今回の発言についてどう対応するのだろうか。
京都地方裁判所は判決で、ブレノこと松本修一氏が撮影した映像が果たした役割と、その責任についても言及した。差別行為を映像で公開し、拡散したことも、また差別であり罪だ。
一度拡散されたデマは、すべてを打ち消すことは困難を極める。けれど、被害者らの名誉を回復させること、デマを打ち消す努力を今すぐにでも図るべきではないのか。
読売テレビが在日コリアンや通名、京都朝鮮学校襲撃事件について正しく取材すれば、嫌でも竹田氏の件の発言が事実無根のデマであると分かるだろう。そしてその内容で番組を制作し、放映しなければならないのではないか。それがメディアとしての責任の取り方だ。
そして、私たちにできるのは、差別に沈黙しないこと。出来る人から、声を上げよう。
※読売テレビに電話取材したところ、24日14時現在、この件についての公式な回答はまだ出ていないとのこと。今後回答をするかどうか、次回の番組内で抗議などについて取り上げるか否かも未定だった。
画像: 「たかじんのそこまで言って委員会」のキャプチャー
※この記事はガジェ通ウェブライターの「李信恵」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
(李信恵)
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。