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アップル特許侵害、個人発明家が大企業に勝てたワケ

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アップルvs個人発明家。特許のポイントは?

アップル社の携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」に使用されている円形スイッチが、都内の会社社長S氏の特許を侵害しているとして、アップル側に約3億3600万円の支払いを命じた判決が9月26日、東京地裁(高野輝久裁判長)でありました。一般的な特許侵害訴訟の流れから、この判決について考えてみます。

本件は、特許第3852854号「接触操作型入力装置およびその電子部品」の特許権を侵害しているというもの。その図を以下に示します。

83はリング状の接触検知部で、この上を指でなぞると、その位置が識別されます。84はプッシュスイッチで、押し込むとスイッチ部分が接続してオンになります。この図ではスイッチ部分は上下左右に4ヶ所あります。つまり、ざっくりと言うと、「指の位置を一次元的に検知するリング状の部分があって、指をそのリングに乗せたまま押せばスイッチにもなっている」というのが、この特許のポイントです。

iPodには「クリックホイール」という円形スイッチがありました。これはiPodの下半分に設けられたリング状のもので、その上を指でなぞると位置が検知されるタッチパッドと上下左右および中央の5ヶ所の押しボタンが一体化しています。この「クイックホイール」が特許侵害だというわけです。

特許侵害は「特許請求の範囲」をすべて満たしているかどうか

もっとも、実際の特許侵害訴訟は、特許図面と実際の製品を比較して、侵害されているかどうかを判断するのではありません。特許には「特許請求の範囲」という部分があり、ここに特許発明の要件が文章で記載されています。その要件をすべて満たしていれば侵害、ひとつでも満たしていなければ非侵害というのが原則です。したがって、特許請求の範囲に余計な要件が入っていると、非侵害とされるリスクが大きくなります。

また、実際の特許侵害訴訟では、ほぼ必ず無効の抗弁がなされます。つまり、「問題の特許は無効だ、だから侵害もヘチマもない」という反論です。実際、特許侵害訴訟を起こして返り討ちに遭うケースは少なくありません。

そもそも平面的なタッチパッドは昔からありました。リング状の接触検知部とは、そうしたタッチパッドの一部を取り出したに過ぎないとも言えるかもしれません。また、タッチパッドとスイッチを一体化する程度のことは容易に思いつくという考え方もあるでしょう。アップル側は、このような主張をして「本件特許は無効」と主張したはずです。

今回は、こうした無効の抗弁にも耐えて、広い特許請求の範囲内にアップル製品を捕えることに成功しています。それがS氏勝訴の最大の要因でしょう。控訴審でどうなるかはわかりませんが、特許請求の範囲の書き方が勝敗を決めることは間違いありません。

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