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私が中高生のネット依存をヤバいと思う理由

私が中高生のネット依存をヤバいと思う理由

今回はp_shirokumaさんのブログ『シロクマの屑籠』からご寄稿いただきました。

私が中高生のネット依存をヤバいと思う理由

「ネット依存の中高生、国内に51万人 厚労省推計」 2013年08月01日 『日本経済新聞』
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0104I_R00C13A8EA2000/

厚労省の研究から「中高生のネット依存者が推計52万人」という数字が出た。私はインターネットは学齢期からやっても構わない、むしろやるべきだと思っていたクチなので、この数字には衝撃を受けた。

文部科学省『学校基本調査』(H24年)*1によれば、現代の中高生の総数は約690万人ぐらいなので、10人に1人弱、30人ちょっとのクラスで3人がネット依存に陥っている勘定になる。「クラスで大体3人がネット依存」と書き直してみると、さほど違和感のない数字のような気もしなくもない。が、頻度としては高すぎる。

*1:「学校基本調査-平成24年度(確定値)結果の概要-」 『文部科学省』
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1329235.htm

参考までにアルコール依存症と比較してみると、2004年時点の厚労省の推計によれば*2、アルコール依存症は80万人、依存症疑いを含めて520万人程度と推計される。

*2:「アルコール依存症にご注意」 『東京都福祉保健局 東京都立中部総合精神保健福祉センター』
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/chusou/jouhou/izonshou.html

日本の飲酒人口は推計6000~7000万人らしいので、「疑い」も含めるなら飲酒人口のうち10人に1人弱がアルコール依存ということになる。未成年のネット依存のパーセンタイルは、これに匹敵する。

成人のネット依存とも比較してみよう。2008年に厚労科研によって行われた成人を対象としたネット依存調査では、成人は271万人が該当、との事なので(H25年精神神経学会の樋口進先生による教育公演)、未成年のネット依存のパーセンタイルは成人に比べて高い、と言えそうだ。

今回スクリーニングに使用された質問は、

Q1 インターネットに夢中になっていると感じるか

Q2 満足を得るために、ネットを使う時間を長くしていかなければならないと感じるか

Q3 使用時間を減らしたり、やめようとしたりしたが、うまくいかなかったことがたびたびあったか

Q4 ネットの使用をやめようとした時、落ち込みやイライラなどを感じるか

Q5 意図したよりも、長時間オンラインの状態でいるか

Q6 ネットのため、大切な人間関係、学校、部活のことを危うくしたことがあったか

Q7 熱中しすぎていることを隠すため、家族や先生にうそをついたことがあるか

Q8 嫌な気持ちや不安、落ち込みから逃げるためにネットを使うか

となっていて、これに5つYesをつけたら「ネット依存に該当」だ。しかしこの質問表は結構狭い――久里浜医療センターが公開しているIAT日本語訳版*3と比べると、えらくヘビーな質問が集まっているので、感度は低く、特異度は高そうにみえる。そういうテストで拾い上げた推計52万人という数字は、かなり重い数字じゃないか。

*3:「ネット依存のスクリーニングテスト」 『久里浜医療センター』
http://www.kurihama-med.jp/tiar/tiar_07.html

「ネットは呑んでも呑まれるな」

ネット依存を精神疾患とみなして構わないのか・どう取り扱うべきかは精神科医のなかでも悶着のあるところで、目下、最新の診断ガイドラインである DSM-5 ではinternet addiction(インターネット嗜癖)は独立した診断カテゴリーとはみなされておらず、appendixに掲載されている。韓国などを中心に治療や予防の研究は進められているものの、診断と治療の定式が確立したとは言い切れない。

とはいえ、実臨床の現場には、ネット依存、それも、どう考えても危ないネット依存の人が押し寄せてくる。現場は偉い人達の議論を待ってくれない。

・ 睡眠も上手くとれず、メシもまともに食べられないぐらいに神経をヒリヒリさせてしまった人
・ 遮二無二ネットゲームをやり続けて友人関係も大学も御破算になってしまった人
・ ネットユースを僅かでも妨げられると極度に暴力的となり、金を盗んででもネットをやろうとする人

こうした人々が通常のネットヘビーユーザーと決定的に違っているのは、インターネットを使う/使わないのセルフコントロールが完全に破綻し、インターネットに“呑まれて”しまっているところだ。健康も社会関係も省みなくなった結果として、他の精神疾患に(おそらく二次的に)罹患している人も多い。一個人としてのホメオスタシスが自力では立て直せなくなっている。

どれだけネットをヘビーユースしようとも、生活や就労を破壊しない自律的な営みである限り、依存と言うにはあたるまい。そういう人は、ネットをやるのもネットを離れるのも自由である。しかし、ネットに“呑まれて”しまった人はそうもいかない。社会活動や人間関係がどれほどのダメージを受けようとも、中枢神経系にどれほどの疲弊を生じようとも、お構いなしにインターネットに引っ張られ、呑まれ、どんどん弱っていく――本人は「これだけが心の拠り所だ」と信じながら。

「酒は呑んでも呑まれるな」というけれども、インターネットもそれによく似ている。呑まれてしまうと破滅が待っている。

中高生のネット依存は、どうヤバいのか

以上を踏まえたうえで、私個人が中高生のネット依存を危惧している理由を挙げてみる。

1.中枢神経系に大きな負荷をかけすぎる

ネット依存な生活は、中枢神経系にやさしくない。リンク先*4によれば、ネット依存者と判定された人の43%が6時間未満の睡眠、午前中の体調不良者は非該当者の1.6~2.7倍に及んだという。それもそうだろう、真夜中、交感神経を興奮させながら明滅するディスプレイを凝視し続けるのは中枢神経系にとって結構な負荷になるし、直後に睡眠をとろうとしても深く眠れるわけがないのだから。そんな日々が毎日続けば、日中の作業効率や学習効率は最低になってしまう。

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