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ウルトラマンじゃなくておれが泣く:『ウルトラマンが泣いている』

ウルトラマンじゃなくておれが泣く:『ウルトラマンが泣いている』

今回はmacgyerさんのブログ『冒険野郎マクガイヤー』からご寄稿いただきました。

ウルトラマンじゃなくておれが泣く:『ウルトラマンが泣いている』

あちこちで話題の新書『ウルトラマンが泣いている』を読んだのだが、暴露本というよりも「嗚呼、やっぱり」感が濃厚に漂う本だった。

「ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書)」 円谷 英明(著) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062882159/

著者の円谷英明は初代社長 円谷英二の孫であり、二代目社長 円谷一の息子にあたる。シャイダーを演じた円谷浩の兄にあたる。

本書では前書きと目次の後、円谷一族三代の家計図がわざわざ示される。何故か。本書で記されるのは、祖父 英二と父 一の業績への賛辞、そして叔父であり三代目社長を務めた円谷皐の放漫&ワンマン経営への呪詛、その後社長を継いだ兄 昌弘と著者がどれだけ奮闘しても経営を立て直せなかった苦悩、そして社内クーデターと外部資本による会社乗っ取り……等々である。更にその結末は、本書の帯に書かれた一文通りだ。

つまり本書で描かれるのは、円谷ファミリーによる勝者無き覇権争いなのだ。

著者の叔父 皐に対する憎悪は相当なものだ。

『80』以降、十数年に渡って国内で新作ウルトラマンを製作できなかったのは、皐社長が「我々の作ったウルトラマンをどうしてくれるのか?」編成局長に激昂し、「お前の作ったウルトラマンじゃないだろう」という返された挙句、役員室に出入り禁止となってしまったからだという。

皐社長の時代、経理部の片隅には海外でウルトラマンを放送した際の放送権収入やグッズ収入の入金記録や領収書を入れるためのダンボール箱があり、社長と担当重役以外はノータッチ。それらはハワイやラスベガスでの経営陣の遊興費に使われたという話は恐ろしい。同族経営の中小企業にありがちな話だ。

そういえば自分が高校生くらいの頃、トーク番組にゲストとして出演した円谷皐が得意そうに歌を唄った後、これが「僕のウルトラマンなんです」と青いウルトラマンを紹介していて「ウゲー、こんな金満ウルトラマンやだー!」と感じた記憶がある。ウルトラマンヒカリが出た時もその青ウルトラマンを思い出したのだが、今ネットで調べたら、その金満青トラマンは杉山清貴が円谷皐を偲んでつくった曲のお礼に使用権利を与えられたというウルトラマンキヨタカだった。ちょっと記憶が不確かだなぁ。

その他、皐社長の海外旅行好きや資産取得への拘り、円谷音楽出版への株譲渡、ウルトラマンランドでの不正や赤字なのにクローズできない問題、実兄のセクハラ事件、一夫社長によるブースカCM等々……「噂では聞いていたけど、やっぱり」感溢れる話がいっぱいだ。

「【特撮リボルテック】003 快獣ブースカ■おとなの夢みるおもちゃ!海洋堂 フィギュア」 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B007ZLPZ8E/

色々と漏れ聞こえていた話が多いのだけれど、まがりなりにも社長を務めた人物が書籍の形で記すというのはインパクトが違う。祖父や父の偉業が割合さらりと描かれるのに対し、リアルタイムで体験したであろうこれらの醜聞は、気持ちが入っているのか筆致が違う。金額がやけに具体的なのもリアルだ。

一方、それとは別の問題として、円谷プロ創業時から続く高コスト体質にもきちんと言及されている。

『ウルトラマンガイア』が終了する間際、円谷プロはたいへん漢らしい映像製作集団であるという話を聞いた。特撮ドラマは普通のドラマ以上にカネがかかる。ウルトラシリーズはテレビ局から貰う制作費だけではとうてい作れず、放送中の円谷プロは基本的に赤字で、その後何年もかかってグッズの売り上げ等で利益を回収していく、だから平成三部作がどれだけ好調でも、一度経営状況を立て直すまで新作が作れないのだという話だった。

本書に書かれているのは、円谷プロの放漫経営の実態だ。製作陣は、グッズが売れればカネは入ってくるのだからと制作費を使いまくる。経営陣は、クオリティの高い作品を作るためにはそれも止むなし、と認める一方、きちんと支出と収支のチェックをしない。円谷プロ創業時から変わらない体質だ(2000年代に入っても帳簿を電子化しない、というのは中小企業によくみられる光景だ)。円谷プロに復帰した著者が平成三部作の番組ごとの収支をきちんとチェックしたところ、実際には大赤字だったという。全然回収できていなかったのだ。

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