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オッカムの剃刀

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今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

オッカムの剃刀

よく疑似科学と科学の区別の話に「オッカムの剃刀」というものが出てくる。大雑把には仮定を導入するなら最小限の組み合わせを選ぶべきという考え方だ。たとえば火星人の実在を仮定しなければならない説明よりは、すでに知られている事柄だけで可能な説明の方を尊重しましょう、と。

指針としては科学の本質を表すものだと思う。いろいろなことを仮定すればどんな説でもそれなりに辻褄が合った説明ができる。でも説明ができること=正しいこととはいえない。まあ間違っているとも言えないが。

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しかしこのオッカムの剃刀というのも、しょせんは人間の常識(主観)に過ぎない。「トンデモ科学の見破り方」という本にこんなことが書いてある(p.249)。

単純さの基準「オッカムの剃刀」は常識の一つの側面であるとみなすことができる。たとえば、ほかの条件がすべて同じであれば、あなたの腕にできた瘤を吹き出物であると診断する方が、夜の間にあなたを誘拐した宇宙人がそこに埋め込んだ装置だとするよりも単純なように思えるだろう。その一方で単純さというものの本質は、その人の信念体系に依存している。

もしたまたまあなたが、宇宙人による誘拐は日常的に起こっている出来事だという妄想にとらわれている何百万人のアメリカ人の一人であれば、埋め込まれた装置という考えは、その瘤が吹き出物であるという説明と同じように「単純」に思えるかもしれない。

科学の全歴史を通じて、一度はトンデモない考えとみなされていたものが後に真実であることが判明した事例はいくらでもあり、嘘であることが判明した事例はもっとたくさんある。科学はつねに進行中の過程であり、現在の真理はつねに暫定的な真理という性質をもっている。

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常識というのは一つではない。国によって違うだろうし、同じ日本でも3.11以前と以降では違う。3.11以前に100ミリシーベルトの放射線もたいした害がないと考えていた人がどれほどいるだろうか。電力会社系列の研究所「電力中央研究所」など原発関連の人たちは、むかしからそう主張していたけれど。

3.11の原発事故のショックは日本人の価値観(常識)を覆すほどのものだった。第二次世界大戦の敗戦にも匹敵するものだったのではなかろうか。敗戦で天皇の人間宣言が行われ、その後のGHQの教育で日本の常識は大きく変わった。天皇陛下のために戦って死ぬことは正しくないことになった。

3.11以前と以降、敗戦の以前と以降、常識は変わった。どちらが正しいというのではなく、単に「変わった」のだ。進化論と創造論(すべての世界は最初から現在の状態で神に寄って作られたという主張)も同じ。

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役に立つ常識とあまり役に立たない常識はある。仮定の導入が多い学説は、役に立ちにくい。とはいえ「役に立つ」ということですら、それはその時代の価値観に依存するから、結局はそういうものから逃れられない。

まあ要するにモデルAとモデルBがあって、それぞれのモデルはそこそこ矛盾なく成り立っているなら、モデルAとモデルBのどちらが世界の真の姿に近いかは、決められない。モデルBに火星人が必要だったとしても。

「常識」というのは、そうそう大きく変わるものではないが、まれに3.11や敗戦などの社会的ショックは常識すら変化させる。導入が必要な仮定が多い学説は、現状ではコストが高くなおかつそこから生み出せるものが少ないかもしれない。

しかし仮定か否かは外部の常識で決まるし、その学説から生み出されるものの価値が跳ね上れば、いままでイマイチだった学説が、主流に躍り出ることもあるだろう。創造論とて現在の「常識」では神を仮定するコストが高いからであって、他の研究で神の実在がそれなりの信憑性をもって証明されれば、創造論も進化論を退けて主流な学説になるかもしれない。

その場合残るネックは創造論からあまり有益な応用研究を導き出せないことだが、神の実在が実証された事実の前では、それも些細な事であろう。もともと進化論はファンタジーだったということだ。

参考サイト:
「トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説[単行本]」 ロバート・アーリック(著), 垂水 雄二 他(翻訳) 『amazon』
http://www.amazon.co.jp/dp/4794212828

執筆:この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年6月11日時点のものです。

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