大阪維新の会市議のあきれた“ゴミ箱”パフォーマンスは「見せしめ」恐怖政治への第一歩

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大阪維新の会・井戸正利市議のブログ

 

東日本大震災で発生したがれきの広域処理を大阪市が受け入れたことに反対を表明し、大阪市会に提出された複数の陳情書は平成25年度第1回定例会民政保健委員会で「議決を要せず」として採否の判断をしない扱いが決定しました。

 

ところが、この陳情書の扱いを巡って市会の最大会派である市長与党・大阪維新の会の井戸正利市議がブログに陳情書を中傷するエントリをアップしたのみならず、“見せしめ”のつもりかその陳情書をゴミ箱に投棄した写真を掲載するパフォーマンスを行ったことに対して『Twitter』を中心に批判が殺到し、翌日に「誤解を招く」としてエントリが削除される“炎上”騒動に発展しています。

 

請願と陳情の違い──陳情の採否決定は義務付けられていない

問題の陳情書は「震災がれきの広域処理に関する陳情書」「広域処理住民説明会に関する陳情書」「瓦礫受入れ反対の陳情書」など署名を集めたグループによって何通りかの表題に分かれていますが、大まかに言うと以下の2点を大阪市に求めるものとなっていました。

(1)放射性物質が焼却処理によって広範囲に拡散する危険性が高いので受け入れに反対する

(2)がれきの搬入と処理を行う舞洲(まいしま)清掃工場がある此花区だけでなく大阪市内の他の区でも住民説明会を開催すべきである

2月から3月にかけて開かれた市会第1回定例会では事務局から委員会に回覧された関連する55件の陳情が一括処理され、全て採択・不採択の意思を表明しない「議決を要せず」とする扱いが決定したのですが、この「議決を要せず」は請願法によって取り扱いが定められている請願書(署名)と違って法律に明確な規定が無い陳情書の場合は議会として賛成(採択)・反対(不採択)の決定を行わず「こう言う陳情が議会に出されました」と言う記録を参考として残すと言う扱いを意味します。

 

請願と陳情はどちらも「国や自治体に求めることを書いて署名し、議会に提出する」と言う手続きに変わりはありませんが、議会に所属する議員が紹介したものが「請願」、議員を通さず議会事務局へ提出し事務局の方で議員に扱いを一任するものが「陳情」とされるのが一般的です。国会では衆議院・参議院の両事務局とも原則として紹介議員を通じた請願のみを受け付けているのに対し、都道府県や市区町村の地方議会では議員を通さない陳情についても請願と区別せずに同等の扱いをする場合があります。また、請願の場合は提出する自治体に居住していなくても紹介議員がいれば提出可能ですが、陳情の場合は提出者を自治体の住民に限定している場合があります。大阪市の場合は陳情の提出要件を「大阪市民に限る」とする要件は定められていません。提出された陳情の扱いは自治体によって異なりますが、大阪市会の場合は以下に挙げたうち(2)の扱いとなります。

(1)紹介議員がいる請願と区別せず採択・不採択を決定する

(2)議会が特に必要に判断した場合に限って採択・不採択を決定し、そうでない場合は「議決を要せず」として参考記録のみを残す

(3)議会での採否は判断せず、事務局がまとめて参考資料扱いで議員に回覧する

 

「印刷自体が紙の無駄」「あとは焼却処理あるのみ」

まず最初に確認しておきたいのは、日本国憲法第16条では以下の通り国民に請願権が認められていると言うことです。

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

従って、議会を通して大阪市にがれきの広域処理に反対する意見を表明する権利は認められていますし、その意見に反論することもまた権利として等しく認められています。

 

今回の陳情は法律に定められた請願手続きに沿ったものではありませんが、大阪市会では陳情の手続きについても規定を設けてサイト上に案内を掲載しており、その手続きに沿って行われた陳情である以上は憲法第99条(憲法擁護尊重の義務)を持ち出すまでもなく第16条の請願に準じて扱うべきであると考えられます。しかし、委員会で審議した結果の「議決を要せず」と言う結論のみを報告すれば済むところを、井戸市議はブログで以下のような中傷を加えて陳情書をゴミ箱に投棄した写真を掲載すると言う非常識極まりない行動に出たのです。

いずれにせよ予算の可決でガレキの陳情書等が議決を要しないものとなりました、
大半は市外からの扇動家が送り付けてきたデマだらけのメチャクチャなもので、
金太郎あめのように同じような中身で、印刷すること自体が紙の無駄と議会でも言ってました。
仮置き場である机の上に山積みしていたのが片付きました、あとは焼却処理あるのみです。

 

今回の騒動は決して、単なる「市議1人の問題」ではない

今月初めには、橋下徹市長が推進している市営地下鉄民営化に絡んで井戸市議と同じ大阪維新の会に所属する丹野壮治市議が自身のブログで民営化に反対する自民党会派所属議員を「アリンコ達」「お前はもう死んでいる」と中傷して謝罪に追い込まれる騒動が発生しましたが、複数人の構成員によってこのような際立ってモラルの低い行動が何度も繰り返されると、もはや個々の議員の問題ではなく維新の会と言う組織の体質そのものに疑念の目が向けられるのは当然の成り行きと言えるでしょう。

 

4月14日には兵庫県伊丹市と宝塚市で市長選が行われますが、両市長選とも維新の会が公認候補を擁立する方針とされています。そのタイミングで起きた今回の“ゴミ箱”パフォーマンス騒動は、14日の選挙結果次第では「自分たちの方針に反対する住民の意見をゴミ箱に投棄してさらし物にする」ような政治体制が大阪の外にも次々と拡大して行くのではないかと言ううすら寒い不安を抱かせるのに十分すぎるインパクトを持った事件だと言えそうです。

 

“大阪維新の会”市議が市民陳情書をゴミ箱に… ブログ記事削除も批判相次ぐ(NAVERまとめ)

 

画像:井戸正利市議の3月28日付ブログ(現在は削除)

※この記事はガジェ通ウェブライターの「84oca」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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