新吉原公園之惨状

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新吉原公園之惨状

今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

新吉原公園之惨状

「韓国記録写真研究家が関東大震災の朝鮮人虐殺写真を訴える 別の写真を使い捏造の可能性?」 2013年02月03日 『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/287724

上記の記事によると、明治44年に起きた吉原大火の写真を、韓国の研究家が大正12年の関東大震災の時の朝鮮人虐殺の写真と偽って発表した可能性が高いと述べている。しかも東北芸術工科大学のアーカイブにあるオリジナルでは「新吉原公園之惨状」と書かれている箇所をわざわざ消して捏造しているという。

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だが、写真を見るとそもそも2つの写真のアングルが微妙に違う。

「関東大震災朝鮮人虐殺当時の写真か 韓国研究家が公開・【捏造と判明!】・写真入手したチョン氏「見て驚愕した。女性の下衣が脱がされ、恥辱的だったので公開したくなかった」・吉原大火の別の写真を使い捏造!」 2013年02月04日 『正しい歴史認識、国益重視の外交、核武装の実現』
http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-entry-4954.html

右上奥の建物を見ると、東北芸術工科大学の写真はギリギリ建物が写っているだけだが、韓国人の示す写真の方は建物のさらに右の部分も写っている。一方左の部分は東北芸術工科大学の写真の方が余計に写っている。上部も韓国人の写真の方が上の方まで写っている。

写っている部分だけを比べればまったく同じと言っていいから、本当のオリジナルの写真があり、それをそれぞれトリミングしたのが2つの写真のように思う。韓国人の写真の方が写っている範囲が狭いなら、東北芸術工科大学の写真の方がオリジナルで、韓国人の写真はそれをトリミングしたものだということができるが、どうやらそうではないっぽい。

また「新吉原公園之惨状」という文字は写真に後から説明のために書き加えられたもののようだから、一概に韓国人の研究者が「消した」とは言えない。たぶん本当のオリジナルには書かれていないのだろう。つまり2つの写真のどっちがオリジナルというものではなく、共通のオリジナルの写真が存在し、両方ともそれをトリミング&書き加えたものなのだろう。

その意味で韓国人研究者がどういう経緯でこの写真を入手したのか興味深いところだ。

これもトリミングが違う写真だ(3つの中では一番狭い)。「新吉原公園之惨状」という文字はない。

「吉原の惨状(関東大震災)」写真 『 Old Photo Library [古写真文庫]』
http://www7b.biglobe.ne.jp/~ophl/yoshiwara/taika/taika/target25.html

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「新吉原公園の惨状」 2013年02月04日 『半可通日記』
http://blogs.yahoo.co.jp/ynm0/66058118.html

によるとこの写真はやはり大正12年の関東大震災時の吉原の写真だという。明治44年の吉原大火は火災範囲は広かったものの、死者は8人だったという。

「 写真と新聞記事で見る「吉原炎上」 」 2012年04月12日 『探検コム』
http://www.tanken.com/yosiwaraenjo.html

東北芸術工科大学のアーカイブの説明にも特に吉原大火の写真だという記述はないように見える。「新吉原公園の惨状」→「吉原大火の写真」というのは、ネットで誰かが思いつきで言い出したことなのではなかろうか。

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ネットで「大震災で大変なときに、写真とってる暇なんてあるわけねーだろ」という声があった。こう考えることがそもそも由々しき問題。未来のためにいまなにが起きているか記録しておかなければならない。

昨今、報道に対する批判が著しい。阪神淡路大震災の時も、記者やカメラマンに対して「写真とってないで、救出を手伝え」という暴言を吐く人々が少なくなかった。そして少なからぬ国民がそれを支持した。

東日本大震災でも、避難者の生活を取材するのは避難者に迷惑だからやめろという人々がいた。上空からヘリコプターで撮影するのも、救助の妨げや、避難者の生活の平穏を壊すからやめろ、と。

はっきりいって、史実を記録する重要さを軽視しているとしか思えない。いま自分が興味のないことは記録する価値がないという安易な考え。

我々は未来のためにきちんと記録を残しておかなければならない。そのために多少救助の妨げや被害者の迷惑になったとしても、それはしかたのないことなのだ。こうしたことを批判する人間こそ、偽善といわねばならない。

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唐沢俊一だったか誰かが、オウム真理教事件の時に盛んに世間に蔓延したジョーク、たとえば「ああいえば、上祐」とか、誰か記録をとっておかないと忘れ去られてしまうと言っていた。

実際、いま覚えている人はほとんどいないだろう。俺も忘れてしまった。すごい量あったと思うのだが。

10年ぐらいたてば人々の記憶は薄れ、当時なにがあったのか曖昧になってしまう。リアルタイムで体験している時は、そんなくだらないこと、いちいち記録する必要などないと思いがちだが。

歴史を記録し、未来へ残していくことは大事。

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「韓国人写真研究家が、関東大震災で亡くなった吉原遊女の写真を悪用して朝鮮人虐殺写真として公開」 2013年02月04日 『小さな自然、その他いろいろ』
http://blog.goo.ne.jp/ginga7788/e/a93d215ac90040b9922000121eaf9b9a

によると、どうやらここにある写真が本当のオリジナルっぽい。アングルが一番広いし。

「関東大震災の写真集」 『指爺のモノグロームへようこそ』
http://www.toshima.ne.jp/%7Eesashi/shockphot.htm

執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2013年02月18日時点のものです。

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