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女の子ウェブとは何か?

女の子ウェブとは何か?

今回は『ねとぽよ』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/279399をごらんください。

女の子ウェブとは何か?

「ねとぽよ 女の子ウェブ号」所収の、稲葉ほたて&ねとぽよちゃん2号『女の子ウェブとは何か』を、以下に掲載します。
【共同執筆:稲葉ほたて&ねとぽよちゃん2号】

1.女の子ウェブの誕生~「出会い系」が生んだ「厨ニ病」の楽園

◆ 出会い系から考える「女の子ウェブ」
女の子ウェブとは何か。それを俯瞰的な視点から探求するのが、このコーナーの目的である。ここでは、まずはなぜ女の子ならではの特殊なネット利用が生まれてしまったのかを考える。

大前提として、インターネットは、別に男女で利用に制限を設けているわけではない。情報のやり取りをする装置なのだから、現実での男女関係のように肉体的な性差が効いてくることもないはずだ。では、社会的な性差はどうか。日本に関して言えば、ハンドルネームを使った文化が、古くから存在してきた。理由は諸説考えられるが、地縁的共同体に紐付いた「世間」がいまも大きな力を持つ日本で、地理的条件を飛び越えて人と人を繋ぎ、時には独自の共同体を生み出すネットが、「異界」として迎えられてきた歴史は確実にある。パソコン通信の時代については議論もあろうが、近年まで日本のネットは、基本的に「脱社会」化された空間としてあったと言ってよいだろう。とすれば、やはりここにも性差の原因は存在しない。

しかし、このような「仮想空間」としてのウェブは、実際にはフィクションである。なぜなら「出会い系」という現実と仮想が結びつく穴が、ぽっかりと日本のインターネットには開きつづけてきたからである。出会い系サイト規制法が施行されたのは二〇〇三年だが、日本のネットでは、出会い系利用は古くから非常に多く行われてきた。いや、もっと言えば、ネット以前の、ダイヤルQ2やポケベルの時代にまで、日本人の情報技術利用と「出会い系」の繋がりは遡ることができる。日本は、人口密度が高く、交通機関も発達しているため、そもそも人と人が出会いやすい。しかも、九〇年代には援交の存在が顕在化したことで、未成年者に対して成人男性が性的視線を向ける土壌も出来上がってしまった。「脱社会」化されたバーチャル空間を求める圧力と裏腹に、実は「出会い」の余地がふんだんに存在する日本的インターネット。男女のネットにおける性差は、この「出会い系」という穴に端を発する。

それを示す証言も、数多くある。例えば、次の特集に収録された「放課後インターネット」のイベント参加者から、参加アンケートで「これまでに受け取った中で一番キモいメッセージ」を募集した。すると、見知らぬ男性からの露骨な性的視線が向けられたメールや、mixiメッセージの体験が多数寄せられたのである。しかも、それらを彼女たちは、ネットを始めた低年齢の時期から受け取りつづけている。また、同イベントで語られた、個人HP全盛期の体験でも、彼女たちの口からは「オッサン」との戦いがぽつぽつと登場する。女の子のコミュニティに登場してメンヘラの女の子を病ませようとするオッサン、チャットルームに女の子のふりをして登場するネカマのオッサン、掲示板で理屈にもならない理屈でプライベート情報を要求するオッサン、などだ。当時のネットは、現在からは考えられないほど薄暗く、アングラな空気に満ちた空間だった。しかし、そこにおいてすらも、男女の目に映る光景は大きく違っていた。男性からの性的視線の圧力は、リアルより遙かに露骨に、しかも低年齢のうちから、彼女たちに浴びせられていた。

◆ オッサンへの防波堤

この男から見れば異様としか言いようがないこの状況下で、彼女たちはどのような戦略を取ってきたのだろうか。もちろん個々の女の子が各々に行動したに決まっているが、その歴史を見れば一定の傾向は抽出できる。そこでは、大きく二つの戦略が取られてきた。一つは、HN文化の徹底、そしてもう一つはホモソーシャルである。

HN文化の徹底とは、バーチャルとリアルの峻別を厳格化することである。身バレを防ぎ、ネットというバーチャル空間からの影響を遮断するのだ。そして一方で、ガラケーでのメールやキャリアウェブにおいて、リアルでの、主に学校内の人間関係に向けた発信を行うのである。これを、Facebookのような会員制SNSとGoogleの対比で語られるような、プライベートとパブリックの問題として考えてはならない。彼女たちが活動していたのは、基本的にはHTML/CSSのみで記述されたwww上の空間である。そこを、リアルの自分に結びついた情報を出す「前略」のような場と、バーチャルなHNの人格を活動させる場に分けているだけなのだ。ちなみに、この区別はほぼ、ガラケーメイン/PCメインの区別と一致する。ガラケー向けに作られたページは、構造的に検索エンジンに補足されにくく、実質的なクローズドウェブとして機能するため、オッサンの侵入を防ぎやすいのである。

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