あのダイエット、実はちゃんと検証されていなかった!?
低炭水化物、低糖質、一日一食…。世の中には様々なダイエットや健康法が流行しているが、そういった食事制限系ダイエットや健康法によって、日本人の多くが飢餓状態、栄養不足に陥っている。
そう指摘するのは「高須病院」理事長として、また美容外科「高須クリニック」院長としても活躍中の高須克弥院長だ。高須院長の新刊『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社/刊)では、蔓延する危険なダイエット法や健康法を痛烈に批判して警鐘を鳴らし、本当の健康を手に入れるためにはどうすればいいのかを書き尽くしている。
今回はその高須院長にインタビューを敢行。この本に込めた高須院長の想いとは? そして、現代のダイエットの何が問題なのか? “本当のこと”を明かしてもらった。まずはその前編をお送りする。
(新刊JP編集部/金井元貴)
■必要な栄養量を取れていない危険な現代人たち
―実はこの本を拝読する前まで、ダイエットをしていたんですよ。それも、低炭水化物ダイエットをやっていたりして。カロリーもかなり気にしていましたね。
「それは絶対痩せますよ」
―だいたい2ヶ月で5キロくらい落ちました。
「でも、身体が弱っちゃったでしょ?」
―弱くなりました。風邪も引いたし、夏だったからすぐにバテましたね。
「身体の具合が悪かったり、顔色が悪くなったりね。あとは仕事中にうつらうつらして、結局マイナスだったでしょ。それはね、頭の中にブドウ糖が足りなくなっていたんです」
―そうですね。仕事中に眠ってしまうことも多いです。
「そういうときはチョコレートを食べればいいんですよ。一粒でいいの。自分が低血糖になっていることはなかなか気付かないから。だから、急に仕事がトロくなった、キレがなくなった、そういうときは飴玉一つ舐めればいいんです。頭がはっきりしてきますよ」
―ありがとうございます。それで、そういうことが続いていたところに今回の本を読んだので、やっぱり「よく食べて、よく運動する」というのが一番良いんだなと思いました。
「普通の生活をすればいいんです。無理にダイエットせずに、普通の生活をしていれば、どんどん健康になって長生きできるはずなんですよ。でも、日本はアメリカの影響が強くて、今ちょうど『戦後史の正体』という本が売れていますけど、健康管理についてもアメリカの指示通りにやっているんじゃないかと僕は思っているくらいですよ」
―ただ、健康に多少影響が出ても細くなりたい、モデル体型になりたいという人たちもいらっしゃいます。
「いますね。でも、医者は、悔いはあっても長生きしてもらうのが務めですから、健康を害することは止めなさいといいますよ」
―過度のダイエットは本当に命を落とす危険もありますしね。
「ものすごく栄養状態が悪くなると、身体がその栄養を取り戻そうとして思いきり取り込むんですよ。そうしないと生きていけないから。そういう風に身体ができているんです。
逆に栄養をしっかり取れている人は生き残っていける。だから僕は、南洋の島で太っている人たちが多いのは、飢餓のときに栄養を溜めこんでいた人が生き残ったからだと思っているんですよ」
―本書の中では、今話題になっている低炭水化物ダイエットをはじめとしたダイエット法に対して痛烈に批判されていらっしゃいますが、この本を執筆した理由について教えていただけますか?
「実はこれと同じ主張の本を、30年以上前に一度出しているんですよ。しかも、出版社さんも同じです。当時は産経新聞の出版局だったかな。だから自分としては新しいことを書いているつもりはなくて、この本の30%は元々の持論を書いています」
―30年前と同じ本を出したということは、ダイエットや健康をめぐる状況は30年前とほとんど変わっていない、と。
「歴史は繰り返しているだけで、当時とそっくりですよ。あのときは青汁健康法とか、しいたけ健康法とか、いろんな健康法が流行していましたし、あとはとにかく断食が身体に良いと言われていました」
―それは今と同じですね。
「忘れているんですよね」
―先ほどおっしゃった高須先生の持論を教えていただきたいのですが…。
「人間の身体は、普通に生活していれば健康に暮らせるようにセッティングされています。喉が乾いたら水を飲みたくなる、頭の中のブドウ糖が減ったら甘いものが食べたくなる、汗をいっぱいかいたら塩分を摂りたくなるとか、ちゃんと命令が出るようになっているんですね。
なのに、甘いものは身体に悪いから低糖質がいいとか、すごく汗をかいて痙攣するくらいナトリウムが足りないのに塩は身体に害だから、とか。おかしな考えがまかりとおっているんです」
―なるほど。
「人間の身体は規制されることでストレスがかかるんですが、実は身体に一番悪いのがストレスです。自分が思っていないことを無理やりさせられることが一番のストレスなんですが、この本で言いたかったのは、そういうストレスから早く目を覚ませということなんです。
ただ、ごく当たり前のことなのに、今まで売れている本はまったく逆のことを言っているんですよね。だから、僕の方が特殊なことを言っているように思われているんだけど、何も変なこと書いてないの」
―身体に負担のない状態が一番いいということですよね。
「そうそう。身体が痛いということは動けってことじゃない。休めということなんだから。疲れたから身体が動かなくなるでしょ。それを根性で動かしたら良くない」
―カロリー摂取量の観点から、何も不自由のない日本で飢餓状態に陥っている人も少なくないとか。
「すごくおかしいのは、ちゃんとしたデータもない状態で、今は飽食の時代で、食べ過ぎてメタボが増えていると言う人がたくさんいるということですよ。でも実際は、日本人の摂取カロリー量は年々減っている。また、低糖質ダイエットにしても、それが流行する以前からコメの消費量が少なくなっているんですね。さらにパンのほうが太らないとか、栄養があると思われている。でも、今は強化米が主流だから身体に良いはずなんです。
お酒やコーヒーもそうです。お酒は身体に悪い、コーヒーは身体に害だ、と。本当は全然悪くないんです。ただ、誰かがそう言い出したんでしょうね。そしてちゃんと検証を取らないまま、引き継いでそのまま使っている情報がすごく多いように思います。健康本をちゃんと読んでみると分かりますが、孫引きみたいなものが多いんですよ。昔流行した健康法をパクッて、さらにパクッて…というような感じで、今売れている本にも、昔の健康法を焼き直して、その著者の妄想を絡めながら現代風にアレンジしているものがありますよ」
―ただ、お酒にしても、飲みすぎという話になると健康に影響を及ぼすと思います。実際に、本書には飲酒量と死亡率の相関データが掲載されており、お酒を飲みすぎると総死亡率が高まるということが実証されています。けれど、逆に全く飲まない人の総死亡率も、ほどほどに飲む人に比べて高くなることも実証されているんですよね。つまり、お酒は「適量を飲む」のが一番良いということになります。
「そうですね」
―でも、お酒に限らず、嗜好品の類は単に身体に「良い」か「悪い」か、「0」か「100」か、という論調になりがちだと思うんですね。
「これは僕が以前に出した『危ない健康法』にも書いたのだけど、長寿の人たちは、もともと長生き遺伝子を持っているか、もしくは他の要因でストレスが少なかったがために、長生きできているんですよね」
―つまり、長生きの秘訣の一つは「ストレスの発散」だった、と。確かにお酒を飲んでストレスを発散している人は多いです。ただ、日本人の場合、流されやすいところがあります。周囲が「いけない!」と言い始めると、自分もそう言わないといけないような気になってしまうというか。
「空気を読みますよね。で、今は痩せることを良しとした空気が出来ているんです。それはおかしいことじゃないか、と、僕はそう言っています。太っていた方が長生きできるし、それを教えてあげないと。流れに逆らったことを書いて伝えることで、目を覚まして欲しいと思っています」
―だから、この本がたくさんの人に読まれて、小太りで良いという認識を持てればいいんですよね。
「そうですよ。だって、エビデンス(証拠)があるんですから。厚生労働省が調べても、文部科学省が調べても、民間企業が調べても、小太りが一番長生きするし、激やせが一番短命という結果になりますから」
<後編に続く!>
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