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“日本のインディ・ジョーンズ”長沼先生に聞く宇宙の謎「宇宙人からのメッセージ」は実在するのか?

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『エイリアン』『ブレードランナー』のリドリー・スコット監督最新作『プロメテウス』。地球上の古代遺跡で人類の起源にかかわる重大な手がかりを発見した科学者チームが、その謎を解明するため宇宙船プロメテウス号に乗り、未知の惑星を訪れるというSF大作です。

監督初の3D映画という事でも話題を集める本作が、ついに先週末より公開。多くの人々が劇場に足を運んでいます。

今回は、『プロメテウス』の主人公が「人類の起源」を探求する中、「生命の起源」を解明すべく世界中を飛び回る“日本のインディ・ジョーンズ”の異名を持つ生物学者・長沼毅(たけし)先生にインタビュー。映画の感想から、先生が影響を受けた作品まで様々なお話を伺いました。

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――まず、映画『プロメテウス』をご覧になった率直な感想を教えてください。

長沼毅先生(以下、長沼):人類の起源に何モノかが介入したというモチーフは『2001年宇宙の旅』などの古典的SFで取り上げられてきましたが、それが装い新たに、しかも、21世紀らしい科学技術的な世界観を背景に、かつてないほどリアルに描かれていたことに驚き、うれしく思いました。

また、古くから語られていることですが、旧約聖書の「神は『ヒトを我等の姿に似せて造るべし』と言った」(創世記1章26節)という記述における「我等」とは誰なのか。聖書は一神教のはずなのに、ここだけ複数の神々が出現していることの謎。この映画『プロメテウス』はこの謎に対するひとつの答を提示したと思います。しかも「神々」は必ずしも慈悲深くなかった。そういう神々を描くことはとても勇気のいることで、スコット監督の並々ならぬ決意を感じました。

――長沼先生おすすめの、一番の見所はどこですか?

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長沼:一つは、アンドロイド(ヒト型の人工知能ロボット)のデヴィッドと考古学者チャーリーの会話です。デヴィッドが「人間が私を造ったのは?」と訊いて「造れたから」と答える人間の身勝手さと思い上がり、そして、人間もそうやって造られたことを図らずも示唆するアイロニーが胸に刺さりました。

二つめは、この会話の後、デヴィッドがチャーリーに「黒い液体」をこっそり飲ませるところ。人類起源の謎の鍵をにぎる「黒い液体」を飲ませることで、今度はデヴィッドがチャーリーを「造りかえる」のです。あたかも、思い上がった人類=チャーリーに対するデヴィッドの意趣返しであるかのように。しかも、「小さなことが大事に至る」とつぶやきながら。

――映画には宇宙船プロメテウス号が登場しますが、先生は宇宙船の描写をどうご覧になったのでしょうか。

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長沼:ごく一般的に言って、無重力のシーンがなかったことにやや違和感を覚えました。一方、生命に関する諸装置や、よく“ガジェット”と称される小型機器類はとても良かったです。たとえば、人工冬眠装置やハイテク医療ユニット「メッド・ポッド」、レーザースキャン飛翔体「パップス」などのガジェットには迫真のリアリティがありました。

――各地の古代遺跡に共通のサインがあり、これは「宇宙からのメッセージではないか」と物語が展開していきますが、先生はこういった宇宙に関する不思議な現象、出来事についてどうお考えですか?

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長沼:これは約30年前に流行したニュー・アカデミズム、いわゆるニューアカにおける「構造主義」を思い出せばよいでしょう。構造主義とは、同じ人類なら、たとえ時代や地域が異なっていても、あるいは、外見や育ちが違っていても、本質的な深い部分では同じようなことを同じように考えるだろう、という学説です。

したがって、場所も年代も異なる遺跡に共通点がある、たとえば太陽マークがあるとか十字シンボルがあるとか、何やら「どの遺跡にもあるメッセージ」のように見えるものがあるとしましょう。それを「宇宙からのメッセージ」と考えるか、あるいは、「人類の深層意識に共通するイメージ」と受け取るか。

私はどちらかというと後者です。わざわざ「メッセージを発した宇宙人」を探さなくても、自分自身の中にある「人類のDNA」にメッセージの元を探したほうが簡単ではないでしょうか。つまり、問題の在処とその解決を人類自身の中に探すのです。これはこれで新たな物語になると思います。

しかし、この映画『プロメテウス』では「メッセージを発した宇宙人」を探すほうが選ばれました。問題の在処とその解決を地球外に求めました。そして、その場所は洞窟壁画の星図が示す星LV223かと思われたので「プロメテウス号」でそこへ行ってみたら……。あたかも財宝の隠し場所の地図を入手したばかりに、行けども行けども「次はここに行け」の繰り返しになる、そんな話を思い出しました。そういうお話はたいてい「本当の宝はオマエの心の中にあるんだよ」的な結末になると予想されますが、『プロメテウス』の今後はどうなるか、まだ予想がつきません。

――長沼先生は、お誕生日が「人類が初めて宇宙へ飛んだ日」と、宇宙に関わることが運命である様なお方ですが、先生がはじめて宇宙に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

長沼:私が生まれたのは1961年4月12日、ロシア(当時ソ連)のガガーリンが人類初の宇宙飛行を成し遂げた日です。このときアメリカはジョン・F・ケネディが大統領でした。ロシアに先を越された危機感と悔しさから、ケネディ大統領は「1960年代中に人類(アメリカ人)を月に送る」ためのアポロ計画をスタートさせました。ケネディはその2年後に暗殺されましたが、ケネディの遺志は守られ、1960年代のギリギリ、1969年7月にアポロ11号で「人類初の月面着陸」を果たしたのです。

このとき私は8歳でしたが、あの「ピーッ」という信号音に続いて「こちらヒューストン」ではじまる地上管制室とアポロ宇宙船との交信を聞いて、本格的な宇宙時代の到来を子どもながらに実感したものです。

中学3年(15歳)になった1976年、アメリカ建国200周年に合わせた火星探査機「バイキング1号、2号」が相次いで火星に着陸し、生命探査をしました。このときは生命は発見されませんでしたが、私の地球外生命探査への興味はここから始まったといってもよいでしょう。

高校3年(18歳)になる1979年、木星の衛星「イオ」でアメリカの探査機ボイジャー1号が「地球外天体では初の火山噴火の発見」をしました。火山活動は生命探査にとってとても重要なものです。

そして、私の20歳の誕生日、つまり、人類初の宇宙飛行のちょうど20周年の日、米国は「初のスペースシャトル宇宙飛行」を行いました。初号機となった機体の名前は「コロンビア」。アメリカ人にとってコロンビアといえば、日本人には「やまと」と同じような響きをもつ名前です。これもまた、私にとって「人類の宇宙進出」への興味が広がったきっかけでした。このように、私の人生において「きっかけ」は何度もあり、その度に私の宇宙への興味はどんどん膨らんでいったのです。

――5月の金環日食や8月の金星食など、“天体ショーの当たり年”と言われる2012年ですが、こういったイベント以外でも宇宙を身近に感じられる、楽しめるコツがありましたら教えてください。

長沼:私は、たとえば、いま地上から400 km近い上空を飛んでいる国際宇宙ステーションを肉眼で観るのを楽しみにしています。それができる日時や場所はJAXAのホームページなどに紹介されていますので(たとえば http://iss.jaxa.jp/iss/map/index.html)、皆さんもチャレンジしては如何でしょうか。

あるいは、沈む夕陽を眺めながら、「太陽が沈むのではない、自分が動いているんだ」と思うようにしています。そうすると、今まで自分が固定していて太陽が動いているように見えていた世界が、急にグルグルと回りはじめ、まるで宇宙に放り出されたかのように頭がクラクラしてきます。

さらに、夜空に輝く星々のほとんどは「われわれの太陽」と同じような恒星で、それぞれの星に太陽系のような惑星があることがわかってきました。たぶん、地球と同じような惑星もあるでしょう。つまり、夜空に見える星々のそれぞれに地球のような惑星があって、もしかしたら、人類と同じような知的生命体がいるかもしれないと想像するのもまた星空=宇宙を楽しむコツかもしれません。

――「太陽が沈むのではない、自分が動いているんだ」。こう考えるだけで、自分が宇宙の一員である事をいきなり実感することが出来ますね。興味深いお話の数々、どうもありがとうございました!

長沼先生オススメの「宇宙」をテーマにした作品

【映画】『サイレント・ランニング』、『2001年宇宙の旅』、『惑星ソラリス』など。

【TVドラマ】『謎の円盤UFO』、『キャプテン・スカーレット』、『キャプテンウルト
ラ』など。

【漫画(アニメを含む)】『宇宙海賊キャプテン・ハーロック』、『機動戦士ガンダム』
など。

【小説】『結晶星団』(小松左京)、『竜の卵』(ロバートL.フォワード)、『暗黒星雲』(フレッド・オイル)、『2010年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク、以下同じ)、『2061年宇宙の旅』、『3001年終局への旅』など。

長沼先生が世界各地を巡り体験した出来事、悲喜こもごもについて綴られているSF作家・藤崎慎吾さんとの対談『辺境生物探訪記』(光文社新書)も好評発売中。先生についてもっと知りたい方はぜひチェックを。

映画『プロメテウス』ストーリー

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科学者エリザベス(ノオミ・ラパス)が、地球上の時代も場所も異なる複数の古代遺跡から共通のサインを発見。それを知的生命体からの〈招待状〉と分析した彼女は、《人類の起源》の真実を探し求め、巨大企業ウェイランド社が出資した宇宙船プロメテウス号で地球を旅立つ。2年以上の航海を経て未知の惑星にたどり着いたエリザベスや冷徹な女性監督官ヴィッカーズ(シャーリーズ・セロン)、精巧なアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)らは、砂漠の大地にそびえ立つ遺跡のような建造物の調査を開始。やがて暗い洞窟を突き進み、遺跡の奥深くに足を踏み入れたエリザベスは、地球上の科学の常識では計り知れない驚愕の真実を目の当たりにするのだった…。

映画『プロメテウス』は現在大ヒット公開中。

映画『プロメテウス』公式サイト
http://www.foxmovies.jp/prometheus/

Naganuma WEB
http://home.hiroshima-u.ac.jp/hubol/members/naganuma/

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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