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音楽CDや配信が売れていなくても個人の音楽を聞く時間は減っていない可能性

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この記事は中杜カズサさんのブログ『空気を読まない中杜カズサ』からご寄稿いただきました。

音楽CDや配信が売れていなくても個人の音楽を聞く時間は減っていない可能性

何度も繰り返される『音楽CDが売れない!』

このところネットを見ていると『CDが売れない!』系の話題をよく目にします。とはいってもこのテの話題は今に始まったことではなく昔から度々持ち上がってきますが、最近ダウンロード違法化法案が数々の問題を指摘されつつ成立してしまったことをきっかけに、また再燃したといったところでしょうか。

 ■参考:「音楽業界「助けて!CDが全然売れないの!(´;ω;`)」」2012念06月27日 『 なんか憑かれた速報』
http://nantuka.blog119.fc2.com/blog-entry-5405.html

さて、このテの話題を見る時、今までは「そりゃ音楽配信が既に主流メディアになりつつあるから、前時代のCDの売上げが下がるのは当たり前じゃないか」と思っていたのですが、調べてみると2007年にこそ音楽配信の伸びで売上げが伸びていたものの、そこからは双方共に売上げが伸び悩み、2007年に4666億円あった市場売上げは、2011年には3539億円と1000億以上の縮小となっています。

 ■参考:「縮み、変容する市場…音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化してみる(2011年版)」2012年3月30日『Garbagenews.com』
http://www.garbagenews.net/archives/1913865.html

つまり「CDが売れない」というのは、最近になっては「(配信含めた)音楽そのものが売れない」ということになっているようです。

さて、これは何のせいなのかというのは、非常に色々な考え方があるでしょう。音楽自体に魅力が無くなった人もいれば、不景気のせいだったり、はたまた他の娯楽に時間を奪われたり。このような理由は非常に多数であり、また事情も立場や世代、そして個人で異なります。故に断定的な一つの理由というものを出すのは不可能でしょう。最近では違法ダウンロードが原因ということで、ダウンロード違法化を含む法改正が様々な問題点を指摘されつつも行われてしまいましたが、私としては全然影響ないとは言いませんが、それが唯一でも主な原因でもないと思っております。

 ■参考:「音楽業界はなぜ縮小したか?」2012年6月23日 『ハックルベリーに会いに行く』
http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20120623/1340426744

1人当たりの音楽を聴く時間は減っているとは思わない

で、ここで思うのが、それでは日本人はここ数年、音楽自体を聴かなくなったのか? ということ。

私は趣味とほんのちょっと仕事柄、CD(主にゲーム音楽系ですね)を今月の税金の支払いヤバいかもとなるくらい買い、常時iPhoneとイヤホンを持ち歩いているくらいで、今ブログを書いている最中も横のセカンドパソコンのiTunesでは『ゼルダの伝説時のオカリナ3D』を流していたりします。たしかに一般の人から比べればCD購入数も音楽を聴く時間も多めと思われますが、それでも私が特別少数派かというと、CDの購入はともかく音楽を聴くという行為自体はそんなに減っていると思わないのですよね。何故そう思うかというと、音楽を聴ける環境というのは確実に増えているからです。

最もポピュラーなのはスマートフォン。トップのiPhoneはそもそも音楽プレイヤーのiPodの発展系でもありますから、軽く音楽を聴くのに適していますし、勿論他のスマホでもそうです。また、ガラケーにおいても多くの場合はプレイヤーを内蔵していますし、着うたをかなり活用している方も多かったでしょう。さらにiPodシリーズなどモバイル音楽プレイヤーの価格も非常に落ちてきて、誰でも手軽に手に入れられるようになっています。一昔前はこのテのプレイヤーが1万円を超さないと手に入らなかったのから比べれば、かなりの価格破壊ですね。そして家に戻ればこれまた低価格化したパソコンがあり、現在のところはCDドライブが突いているPCも多く、またiTunesなどでの音楽配信を楽しむことも出来ますね。

昔はといえば、ウォークマンやMDプレイヤーはお世辞にも安い買い物じゃなく、家でも殆どの場合CDプレイヤーが必須だったという時代に比べれば、確実に音楽を聞くことの出来る環境は格段によくなり、拡大しているはずです。特に携帯を持ち歩く習慣が出来たということは、イコール音楽プレイヤーを常時持ち歩くということにもなったのですから。

そうであるにもかかわらず、本当に音楽の売上げと比例して、音楽の聴かれる時間は減ったのか、というのが疑問で、少し考えてみました。しかし方向性を変えてみればその結果は容易く思い浮かびます。すなわち、音楽の売上げが低下しても聴く時間を保つ時に何を聴いているかということ。しかしそれは当然ですが、違法ダウンロードではなく、合法のもので。

今までに残っている多くの音楽資産

まず、自分の現在のiTunesのよく聴く曲のリストなりiPhoneに入っている曲を見ると、たしかに最近買ったものもありますが、多くは昔から聞いているお気に入りの曲になっています。具体的に言うとゲーム音楽なら『ダライアス』シリーズや『レイディアントシルバーガン』といったシューティング、『リッジレーサー』シリーズ、一番古いのだと『ビデオゲームミュージック ナムコ』という国内で最初に販売されたゲーム音楽サントラ(のCD復刻版)なんかあります。そしてJ-POP系ならブルーハーツ、ユニコーンなどを中心に昔からことある毎に聴いてきたもの、それ以外ならクラシックやクライズラー&カンパニー、平沢進にYMOなどなど。

これらはどれも発売から相当日が経ってっているものですね。しかしながら、これらに飽きるということはありません。むしろ聞き込んでいて、何かの度に聴きたくなるものばかりです。つまるところ、このような過去に出た名作(勿論人によって異なりますが)が、最近は多く聞かれているのではないかというのが一つの推論です。

近年、CDを購入しても多くの人はいちいちCDをデッキに入れ替えるのも面倒だし、iPodなどの中にも入れたいので、まずAACなりMP3なりにエンコードしてから聞くというスタイルになっている人が大半と思われますが、そこではいちいち古いCD出してくる手間が省け、聴くことが出来ます。このように持っている曲をどんな膨大であろうとも全部並列的に管理できるということは、すなわちCD時代にはよほどのものではないと棚の奥にしまわれがちだった旧作を簡単に、何度も聞くということが出来てしまうのです。当然所有しているものですので合法で。

音楽は一度観たら2度目を見る確率はぐんと減る映画DVD等と違い、何度もリピートして聴くことが出来るものです(どうもここを勘違いして、音楽も消耗品と見なしている業界の人がいるようにも感じますが)。故に前述のように簡単に過去のお気に入り曲を膨大な数から聞けるようになるということは、わざわざ新曲を買わなくてもよいという状態になってしまっているのではないでしょうか。

この状態では新曲は圧倒的に不利です。何せ過去作は過去にすでに買ったものなので0円ですが、新曲は金がかかる、そして対抗しなくてはいけないのは、今までに出た過去の名作。その上お気に入り補正までありますからね。ここから持っているという要素を抜いたとして、同じようにiTunes等で販売されたとしても、旧作の名作はかなり強いでしょう。実際iTunesのランキングでも、現役アーティストではあるけど新譜ではないアルバムとか多く見かけますし。

こうなるとお気に入りのアーティストとか自分の購買に繋がるクラスタに属している場合はともかく、新しく発売された音楽は興味を持ってもらうことさえ難しい状況になっているのかもしれません。

CDや配信以外の音楽を聴くネット文化

さらにもうひとつ。CD、そして音楽配信以外でも音楽を聴く、という方法が生まれている為もあると思います。それは動画サイト。とはいえ動画サイトと書くと違法なアップロードのものを思い浮かべますが(そういうのも存在しますが)*1、ここで言うのは最近盛り上がっているDTMで自作した『初音ミク』などのボーカロイド曲や、自作の歌ってみた曲など。現在のとりわけ若年層には、これらの人気も高まっているようですが、こういうのも新しい音楽視聴形態に含まれるのではないかと。実際、iPhoneアプリでもボーカロイド曲を聴けるようにしてあるアプリとか、そもそもニコニコ動画アプリがありますし。あと、同人音楽の人がネットを使って配信をする例も出て来ましたね。

多分これらはネットやらボカロがなければ「インディース」に分類されていたと思うのですよ。つまるところボカロや同人音楽などはかつてのインディースであり、音楽を聴かれるシェアとしてそっちが大きくなっているという考え方も出来るのではないかと。

音楽を「聴く」文化が死んでいないなら

このように、音楽の売上げが減っても、実は聴かれている時間は増えていると思うのです。さすがにこれは詳細なデータをとってみないと正確なことは言えませんが、皆が皆、音楽を聴かなくなったとは思えません。

じゃあ音楽が売れるようにするにはどうすりゃいいかという話ですが、それは前述の通り、あまりにもライバルが過去の音楽から新携帯の音楽まで広がってしまったのですごく難しいのはたしかでしょうね。でも、ここで安易に焼き畑農法的な握手券商法や種類違い複数買わせ商法に走ると、今後反動それらについて行けなくなった人が離れ、よけい音楽が売れなくなる可能性もあるのではないかと。

でも、上の様にたとえ昔のものやボカロなどビジネス的にはプラスにならないところだとしても音楽が聴かれるということは、まだビジネス的にも復活の目はあると思うのです。一番怖いのは、音楽を聴くというという習慣がなくなってしまうこと。実例を挙げると、テレビがそうなりつつあるような気もします。

例のダウンロード違法化が変な方向に作用して、(合法的な)音楽を聴く習慣自体を萎縮などでなくし、音楽ビジネスごと音楽自称を衰退させなければ良いなと思いつつ今日はこれまで。

■関連:「音楽業界に辞めてもらいたい、いくつかの売り方」2012年6月27日『絵文録ことのは』
http://www.kotono8.com/2012/06/27music.html

執筆: この記事は中杜カズサさんのブログ『空気を読まない中杜カズサ』からご寄稿いただきました。

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