お金の話…増税と増収は違う

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武田邦彦(中部大学)

この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。
※こちらは6月21日に書かれたものです。

お金の話…増税と増収は違う

これほど連続して虚偽を言い続ける政権ですから、だれも「消費税率を上げると財政再建できる」とか、まして「社会保障の一体改革(社会保障は提案されていない)」を信じる人はいないと思いますが、ここでは「増税(税率アップ)と増収」の違いに注目します。

消費税の増税が国会で議論されています。民主党政権は「虚偽の公約」を掲げて当選した人たちでできているので、たとえ国会で決まっても議決は有効ではないと国民が判断すればよいだけのことですが、消費税率を5%から10%にあげるということは「財政再建」にも「増収」にもつながらないことを整理しておきたいと思います。

* * * * *

消費税を上げるということは「国民が何かを買うと税金を払う」ということですから国民の財布の中のお金が一定なら、消費税なしに比べて10%の消費税なら、買うものを10%減らさなければなりません。

財布の中に1万円があれば、国民は1万円の買い物ができるのですが、税金が10%になるとほぼ9000円しか買えないからです。国民が9000円しか買えないと、企業の販売量は1割へってしまうので、企業の収益が悪くなります.

もともと企業の利益率というのは3%から7%程度で、それほど充分に儲けている訳ではありません。設備稼働率が高く、仕入れたものが売れてやっと5%程度のもうけを出すのですから、1割売り上げが減れば企業のもうけはなくなります.

たとえば、消費税が無かった時代に比べて10%になると、国民は「物理的に=財布のお金は一定だから」、買い物の量が9割になり、その結果、企業の収益が無くなり、そのあおりを受けて個人の給料もへるとします.

日本の税金は、所得税、法人税、消費税、その他の税で成り立っていますが、消費税を上げた分だけ、所得税、法人税が減ります.さらに個人ベースで言うと、所得が変わらないと、所得税は取られ、税金を取られて残ったお金でものを買うと、そこでもう一度、消費税を取られるという2重取りになるのです.

すでに法人税は不景気もあってかなり少なくなっていますが、本来は消費税なら消費税にしないと、「内需を拡大して企業が収益を上げ、サラリーマンの所得が上がって裕福になり、その結果、法人税と所得税が上がって、国の財政も再建できる」というのがベストの方向に行きません。

その意味では、まず企業の収益から法人税を取り(第一税)、企業が従業員に支払った給料から所得税を取り(第二税)、さらにその個人が買い物をするとまた消費税を取る(第三税)という構造になるのは、最悪の状態です。日本人の可処分所得が減り、将来の夢からさらに遠ざかります。

もちろん、このことは税の基礎知識中の基礎知識ですから、専門家はよくわかっています.それでは、今回の5%から10%の消費税増税で、税収がどのぐらい増えるのか、ほとんど数字が示されていません.

本当は、ハッキリと「消費税の増税で何兆円の税収が増える」と選言して、それが違ったら責任を取るのが良いのですが、多くの専門家は予想が外れることを恐れて発表しません.民主党や自民党も同じです.

それではなぜ消費税を上げようとしているのか? それは税務を複雑にして、「財務省の役人が増税後に、他の税率を軽減することによって大きな得をするから」で、結局、消費税の増税も、財務省の役人が栄え、日本全体は衰退するという道なのです。
(平成24年6月21日)

平成24年6月21日『お金の話…増税と増収は違う』 武田邦彦氏音声ファイル『ニコニコ動画』
http://www.nicovideo.jp/watch/1340694486


執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

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