モウリーニョに見る、優秀なリーダーの特徴
秋になると毎年のように、各書店にはその年のプロ野球の優勝監督によって書かれたマネジメントの本が並びます。
野球に限らず、プロスポーツのチームというのはひと癖ある個性の強い人間の集まり。彼らをまとめ上げ、勝利という一つの目標に向かわせることに成功した監督の方法論は、スポーツ以外、たとえばビジネスシーンでの組織マネジメントなどにも応用可能だということなのでしょう。
あまたいるプロスポーツ指導者のなかで、ひときわ輝きを放っているのが、レアル・マドリード監督のジョゼ・モウリーニョです。
チェルシー、インテル、レアルと、率いたチームを全て常勝軍団に育て上げてきた彼が行っているマネジメントとは、一体どのようなものなのでしょうか。
今回は『モウリーニョのリーダー論 世界最強チームの束ね方』(ルイス・ローレンス/著、タカ大丸/訳、実業之日本社/刊)より、彼のマネジメント方法について紹介します。
■命令するのではなく、ガイドする
リーダーの役割として多くの人が思い浮かべるのは「部下に対して命令する」というものでしょう。しかし、モウリーニョのマネジメントは、そういったイメージとはかけ離れています。
彼は「リーダーがすべきことは、命令を下すことではない。ガイドすることだ」といい、可能な限り自分の視点や考えを出さないことで、選手が自主的に動ける環境をつくっているといいます。
■自分の立ち位置を理解し、自己顕示欲を表さない
プロスポーツの指導者として成功すると、マスコミはこぞって取り上げ、その人を「神格化」しようとします。それは、本来人間がもっているナルシシズムや自己顕示欲をくすぐる誘惑。真のリーダーたるか否かはその誘惑に打ち勝てるかどうかにかかっています。
リーダーとて普通の人間。変に自分の立場を意識しすぎると、選手との関係が悪くなります。
監督として世界中から評価されているにもかかわらず、普段は選手と冗談を言い合い、全員が楽しめるようにしていることも、モウリーニョのマネジメントが優れている点の一つなのです。
■選手以上に勝利を信じて疑わない
自分が率いる集団の勝利を決して疑わないのも、優れたリーダーの条件。
2003年、モウリーニョが率いていたポルトがUEFAカップ準々決勝のホーム戦に敗れた時のこと。ホームでの敗戦にショックを隠せない選手たちを鼓舞するためか、モウリーニョは勝利に沸く相手チームの監督のところに出向いてアウェイ戦では絶対に勝つと宣言し、自チームの選手には『もうあっちの監督には予告しておいてやったぞ』と言って発破をかけたのです。
当時、ポルトでプレーしていたヴィトール・バイアは、その時のモウリーニョの行動について「ものすごく意味のあることでした。なぜなら、私たちは完全に死んでしまっていたのですから」と、モウリーニョの発破によってチームが蘇生したと語っています。
本書からは、モウリーニョの人となりや、彼がいかに選手と信頼関係を築くか、チームを一つの目標に導くかといったマネジメントの方法論を読み取ることができます。
リーダーの数だけマネジメントの手法がありますが、常勝チームを作り上げたモウリーニョが行っているやり方には、いかに個々の力を最大まで引き出し、チームとして成果を上げるかという普遍的な問題へのヒントが隠されているのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
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