演技派ニコケイに省エネニコケイ? オールナイト上映『顔圧!ニコケイナイト2』企画者がニコラス・ケイジの魅力を語る

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『コン・エアー』『フェイス/オフ』といったアクション大作から『天使のくれた時間』のようなラブ・ストーリー、『アダプテーション』のようなミニシアター系映画まで幅広く出演し、永く愛されてきた俳優ニコラス・ケイジ

そんなニコラス・ケイジの近年は、とにかく多作。作品規模の大小を問わず数々の作品に主演クラスで出演しまくり、そして驚くべきことに、その作品のほとんどが日本で劇場公開されているのである。

2018年だけでも、すでに『ダブル/フェイス』『ヒューマンハンター』が公開され、6月には『ダークサイド』(16日公開)、『マッド・ダディ』(23日公開)の二作品が待機している。

そんなニコラス・ケイジを愛してやまないひとりの男がいる。池袋の名画座・新文芸坐で上映企画を担当するスタッフ・花俟良王さんだ。

その“ニコケイ愛”から、ニコラス・ケイジの出演作をオールナイトで上映する『俺だよ、俺、ニコラス・ケイジだよ! 顔圧!ニコケイナイト』なる企画を実施し、二度見せずにはいられないタイトルやチラシのインパクトから話題となった。

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そして6月16日に、第二弾となる『俳優やめるなんて言うなよ! 顔圧!ニコケイナイト2』が実施される。上映作品は、2016~2017の出演作から『オレの獲物はビンラディン』『キング・ホステージ』『ヴェンジェンス』『パシフィック・ウォー』の4作。

チケットぴあ前売り券販売ページ:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1821030

第二弾が行われるからにはよほど人気なのかと思われるが、実際の事情は違うようである。

それでもなぜ『ニコケイナイト』第二弾が開催されるのか? ニコケイの魅力とはなんなのか? 企画者の花俟さんに話を伺った。“ニコケイ”の文字がゲシュタルト崩壊しそうなニコケイ愛あふれるインタビュー、是非お読みいただきたい。

『顔圧!ニコケイナイト2』企画者 花俟良王さんインタビュー

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――『顔圧!ニコケイナイト』はどうして企画されたのでしょうか。

花俟:色々な事情があるのでしょうが、ニコケイはスターなのに映画に出まくっています。そんな彼のスピードに置いてかれないように、ということと、凡作俳優のようなレッテルを貼られてるのも悔しくて前回のオールナイトを企画しました。

しかし集客はイマイチだったんです。「次回開催はないかな」と思っていたのですが、ニコケイが突然「俳優やめる宣言」をしましたよね?(※) ファンとしてとても寂しい気持ちになったので、何かアクションを起こしたくて今回の第二弾を企画しました。上司を説得するのが大変でしたが、「(客が)入らなければ次はない」と釘をさされました。

また、現在の日本で正式に公開される外国映画は非常に限られていて、スターの作品ですらソフトや配信スル―となることも珍しくありませんが、ニコケイ作品に関しては湯水のように日本公開されてますので、国内上映権があるということも後押ししています。

※「3~4年で俳優業を引退し、監督業に移行したい」と発言した旨が『Evening Standard』に掲載され、日本の各ニュース媒体もそれを報じた。

――かつての代表作が入っていない上映ラインナップに、不満を持つ人もいるようです。

花俟:これは名画座の宿命でもあるのですが、劇場上映権が切れた作品は誰かが権利を買わなければ上映はできません。大手の外国映画の権利は5~10年程度で切れてしまいます。

今回も「○○が入ってないじゃないか!」とか「知らない作品ばかりだから行かない!」などという声をいただいています。しかしこの企画は“走り続けるニコケイの現在をあなたは知っていますか?”という趣旨で開催しています。ニコケイは過去の人ではないのです。

『ニコケイナイト2』上映作の見どころ

――今回上映する作品それぞれのニコケイの魅力を教えてください。

花俟:まず一夜通して観ると「演技派ニコケイ」「省エネニコケイ」に分かれていることに気付かれると思います。

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花俟:演技派モードでは、『オレの獲物はビンラディン』で素晴らしい憑依的演技を見せてくれます。暗い役が多い中、久々の満面の笑顔もファンには嬉しいですね。

『キング・ホステージ』も演技派モードですが、カツラ・付けヒゲ・付け鼻をして確信犯的に遊んでいます。脇にまわってとにかくキレまくるのですが、そうそうこれがニコケイだよね、と思わせる貫禄もあります。

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花俟:省エネモードの今回の代表は『ヴェンジェンス』です。つまらないという訳ではなく、特に役作りせず、台詞も少ないという(笑)。今まで1万本くらい作られているであろう「法が裁かぬのなら俺が裁く」系ですが、王道の快感が味わえます。

『パシフィック・ウォー』も省エネ系ではありますが、ヘビーな史実に基づいていることもあり、それなりに気合いは入っていると思います。特に終盤の日本人との対峙は表情だけで泣かせてくれますよ。

今回の上映作品は2016年と2017年に作られたものだけなのですが、バランス良くニコケイの魅力をお伝えできると思います。

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(「『ヴェンジェンス』、みんな観てないんだよなぁ…」とポツリとつぶやく花俟さん)

ニコケイは“撮影所システムのスター”のよう

――花俟さんの考えるニコケイの魅力とはなんでしょうか。

花俟:最初は「演技派」であることから興味が湧きましたが、結局あの犬のような目がいいんだなと(笑)。ここまでスターになったのは、ずばり“あの愛嬌のある顔”じゃないでしょうか。禿げててもいいんです。

若い人に伝わるか分かりませんが、個人的には昔の撮影所システムのスターの匂いを感じるんですよ。東映なら高倉健がいて、若い時は自社作品の色々なジャンルの映画に出てました。東宝なら三船敏郎、日活なら石原裕次郎でしょうか。

専属俳優だからとにかく色々な映画に出させられるんです。でもスターはやっぱりスターなんですよね。平凡な演出でも、スターがでていると場面がもつんです。先ほど「省エネ」と揶揄したように見えますが、これはそれなりの人じゃないと成立しないんです。

眠くなりがちなオールナイト上映を楽しむコツ

――「オールナイト上映はキツい」「寝てしまう」といった声に対してはどう思われていますか。

花俟:よく言っていることですが、徹夜で何本も映画を観るなんて常軌を逸しています。体力はもちろんですが、仕事・家庭などの環境面で来られない方も多いでしょう。だから比較的自由がきく若い人には「少し無理してでも来た方がいいよ」と言ってます。

寝てしまっても、夜通し知らない人と映画を浴びるように見た、という風変わりな体験は無駄にならないと思います。場合によっては人生を変えてしまうかもしれない可能性も秘めていると思っています。

「寝てしまう」という声に対しては「寝てしまえ」と返したいですね。それも体験ですから。眠くなって当然です。眠くなったら変に我慢するより、サクッと目を閉じてしまうことをおすすめします。10分でもしっかり眠ればかなりすっきりしますし、どうしても見たければその場でロビーに出て体を動かしましょう。

ちなみに自販機では「レッドブル」を売っていますが、個人的には数時間前に飲んでおいた方が効く気がします。

――新文芸坐が活発にオールナイト上映企画を続けるのはなぜでしょうか。

花俟:ほとんど意地ですね(笑)。旧文芸坐も含め、かつては週末のオールナイト上映は都市部では当たり前のように行なわれていました。

しかし今東京で、いや日本で「毎週」「個別のプログラム」でオールナイトを行なっているのは当館だけかもしれません。まったくもってコストパフォーマンスが悪いですから、利益やシステムを優先する社会にはあわないですよね。

しかし、ここでしか醸成できない空気があり、その空気は若い世代を刺激するものだと思っています。それを感じた人たちが、映画だけではなく、これからの文化を支えていくかもしれません。こんな文化の「学校」があってもいいと思います。

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『顔圧!ニコケイナイト』にかける想いを語ってくれた花俟さん。次回開催について伺ったところ、「現状のチケットの売れ行きだと第3弾の開催はないです(笑)。この記事を読んだ方がチケットを買ってくれるのを切に願います」と返事が返ってきた。

今回行かなければ次はないかもしれない『ニコケイナイト』。なにかとハードルの高いオールナイト上映だが、一作一作をDVDや配信で観るよりも、はるかに大きな経験となってあなたの心に刻まれるはずだ。気になった方は是非足を運んでいただきたい。あなたの中の“ニコケイ”がなにか少し変わるかもしれない。

『俳優やめるなんて言うなよ! 顔圧!ニコケイナイト2』前売り券は、現在チケットぴあおよび池袋 新文芸坐窓口で販売中だ。

チケットぴあ前売り券販売ページ:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1821030

『俳優やめるなんて言うなよ! 顔圧!ニコケイナイト2』
会場■池袋 新文芸坐
開催日時■6月16日 開場 22:00/開映 22:15

<上映作>
『オレの獲物はビンラディン』
『ヴェンジェンス』
『キング・ホステージ』
『パシフィック・ウォー』

<劇場ロビーでの予告編上映>
『コンテンダー』※本編上映は無し

前売券:池袋 新文芸坐窓口・チケットぴあにて発売中(2,100円)

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レイナス

おもにホラー通信(horror2.jp)で洋画ホラーの記事ばかり書いています。好きな食べ物はラーメンと角煮、好きな怪人はガマボイラーです。

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