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「専業作家になってから強烈に…」 “仕事小説”の作者が経験した働き方とは?

「専業作家になってから強烈に…」 “仕事小説”の作者が経験した働き方とは?

ブラック企業や過労死の問題が明るみになり、「働き方」の見直しが叫ばれるようになり、社会全体で「働き方改革」が進んでいるようにも見える。しかし、今までの慣習を急に変えることは出来ない。とにかく残業をして仕事に没頭する人もいる。

『わたし、定時で帰ります。』(朱野帰子著、新潮社刊)はウェブ制作会社を舞台に、リーダーが勝手に進めてしまった無謀なプロジェクトが物語の中心となりつつ、どのように仕事と向き合うかという個々人の苦悩にスポットライトが当てられた新時代の仕事小説だ。

これまでの仕事小説は、一つの大きなプロジェクトを苦難を超えて成し遂げ、大団円を迎えるという筋書きが「王道」と言えるものだったが、この作品は、より個人の働き方にフォーカスして描かれている。

作者の朱野帰子さんへのインタビュー。その後編は朱野さん自身の「働き方」について、そしてこの小説を通して伝えたかったことを聞いた。

前編「組織に呑みこまれる怖さを書かずにはいられなかった」はこちら

(聞き手・文/金井元貴、写真:山田洋介)

■「専業作家は孤独。同僚が欲しいし、会社は楽しい」

――結衣の元恋人である同じチームの晃太郎はとにかく仕事一筋タイプで、結果も出せるという優秀なビジネスマンですが、こういうタイプの人が遅くまで職場に残っていると周囲も帰りにくくなるのは「あるある」だなと思いました。

朱野:そうですよね。「代えが効かない人材」がいるのは組織としてはあまり良いことではなくて、業務をナレッジ化して、その席が空いてもすぐに誰かが座れるようにしないといけません。

私が2社目に勤務した会社では、1年に1回必ず一週間休みを取らないといけなかったのですが、その間の業務は他の人に預けることになります。そこで業務のナレッジ化がなされて、個人の業務のブラックボックス化を防いでいたんです。

――すごく良い会社ですね。ただ、休みたがらない人もいるのでは?

朱野:1週間休みを取らなかったら始末書なんですよ。そのくらい徹底されていて、風通しも良かったです。

自分がいないとダメだと思いたい人は多いですよね。私もそうなんですが、就職氷河期世代は特にその傾向が強いように感じます。本当に低い倍率の中で就職先という自分の居場所を勝ち取ったので、手放すものか、と。

また、晃太郎のように、それまで褒めてもらえなかった人が初めて仕事で褒められて、その後も褒められるために仕事を頑張り過ぎてしまうということもあるでしょうし…。

――働き方にはその人の人生と重なるところがありますからね。

朱野:私、会社員時代に「君の働き方はみんなを苦しくする」と言われたことがあるんですよ。求められる以上の品質をアウトプットするように頑張っていたんですけど、それは本当にみんなのためになっていたのか、ただの自己満足だったのではないか、と考えてしまって。私の後を引き継いだ人は、おそらく同じ品質のものをアウトプットするためにはかなりの工数がかかってしまうでしょうし、効率を余計に悪くしているかもしれない。

ただ、晃太郎のような働き方を否定しているわけでもないんです。より良いアウトプットを…と誰もが思っているでしょうし、結衣と晃太郎という2人の極端な面をどちらも持っているのがサラリーマンなのだと思います。

――朱野さんは、現在は専業作家でいらっしゃいますが、作家になってからの働き方は変わりましたか?

朱野:2社目で定時に帰る会社を経験したのにも関わらず、作家になってからは逆に強烈な働き方をするようになりました(苦笑)。フリーランスなので、とにかく居場所を確保しないといけない。一度この場所を手放したら二度と戻って来られないという強迫観念があって、自分を追いこんでしまったんです。

でも、疲れた時に書くと必ず後で書きなおすことになりますし、良い商品なんだろう、良い仕事ってなんだろうと考えていくと、わけがわからなくなっちゃうんですよね。

■「原稿より健康」 追い込まれた作家の心をほぐしたメールとは?

――朱野さんは2009年に小説家としてデビューされていますが、その時はまだ会社員だったんですよね?

朱野:そうです。最初の会社には7年勤めていたのですが、小説家になろうと思って文学賞に応募した勢いで辞めました。ところが、その直後にリーマンショックが来て、さらに賞の落選通知も来て…。急いで転職活動をして、先ほどお話しした2社目に就職するんですけど、その2社目の内定とダ・ヴィンチ文学大賞の通知が同時にきて、二足の草鞋を履くことになりました。

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