レースロボット『Prosthesis』を開発中のFurrion社メカニカル・エンジニアに聞く

access_time create folderエンタメ デジタル・IT

ここ数年、『ガンダム』や『マジンガーZ』のように人間が操縦するタイプのロボット開発が進んでいます。同時に、サイズや見た目のインパクトが大きいこれらのロボットを使って、新しいスポーツを誕生させようという動きも同時進行しています。

『KURATAS』対『Eagle Prime』の裏側で巨大ロボットバトルのスポーツ化を目指すMegabots共同創業者に聞いてみた
https://getnews.jp/archives/1941644[リンク]

米インディアナ州エルクハートに本社を置くFurrion社も、巨大ロボットのスポーツ化を目論んでいる一社です。同社が開発中の高さ4.2メートル、幅5メートル、長さ3メートル、重さ3.5トンの『Prosthesis』は、時速30キロで走行可能な人間が操縦する4足歩行ロボットです。同社は、『Prosthesis』のようなロボット同士が競い合う、『X1 Mech Racing League(以下、X1)』というレースを実現させようとしています。

Furrion Exo-Bionics (YouTube)
https://youtu.be/16-lLlH0Zls

同社のメカニカル・エンジニア、Jonathan Tippett氏(以下、Jonathan)に取材しました。

―『Prosthesis』開発の原点は?

Jonathan:元々『Prosthesis』は、2003年のバーニング・マンというイベントにインスパイアされたアートプロジェクトでした。私は自分が体験したマウンテンバイク、スノーボード、オートバイ、武道などの経験値を拡張したものを作りたかったのです。最先端の技術を使って、私がスポーツから得た経験よりも質の高い経験が得られるスポーツを創造したいと考えています。

―『Prosthesis』開発の経緯は?

Jonathan:『Prosthesis』は、人間が操縦することを目的とした歩行機械として、限られた資源を使い開発されました。足が4本ある理由は、人間の手足が4つあるからです。横転を防ぐ目的と、簡単に回転できるように幅が広くなっています。歩行を簡素化できるように、4本の足は全て同軸上に配置しています。

『Prosthesis』の2/3のサイズで『The Alpha Leg』と名付けたプロトタイプを使い、足の配列、サスペンション、制御システムなどの開発に5年の歳月を費やしました。結果として、最小限の関節の動き(ガンダムより少ない)で歩行できるようになっています。『Prosthesis』は非常に規模が大きいプロトタイプで、テストはまだ始まったばかりです。最終的な理想形に行き着く前に、まだまだ大きく進化していく可能性が高いでしょう。

―『Prosthesis』のようなロボットのレース、X1の詳細を教えてください。

Jonathan:X1はまだ初期段階の入り口に立ったところです。いつ正式に立ちあがるか、レース場はどうするか、レース形式やルール、資金的な問題など具体的な点は今後1~2年かけて詰めていかなければなりません。スポンサー、放映権、チケット販売、マーチャンダイズなどをどうするかは、既存のスポーツビジネスを参考にすることができます。

X1は未来のスポーツなので、テレメトリー(遠隔測定法)などの新しい要素を取り入れていきたいと考えています。レース場の外観や建設地などは、技術及びX1に関係するコミュニティがどう進化していくかによって変化していくでしょう。X1を可能な限り魅力的なものにして、視聴者を増やしていき、スポーツの歴史の新しい第一章にしていきたいと思います。

―現時点で『Prosthesis』の最高速度は時速30キロです。レースという割には遅くありませんか?

Jonathan:X1はレースというものを再定義します。単なるスピード競争ではありません。自動車のような4輪の機械ほど速度は出ないでしょうが、より複雑な動作が可能になります。今後1年半くらいは、『Prosthesis』とパイロットの限界に挑戦し続け、これまで誰もやったことや見たことがないような興奮を生む何かを生み出すことは可能かどうか探っていきます。5~10体の『Prosthesis』のようなロボットを、障害物や距離のあるテクニカルなコースで競争させるだけではなく、時には大きな物をかついで移動させたりすることも検討しています。X1の可能性は無限大です。

―X1構想の裏には『Prosthesis』のようなロボットの軍事利用が隠されていたりしませんか?

Jonathan:当社ではプロのアスリートが乗り込む競技用ロボットを開発しています。『Prosthesis』に詰め込まれた技術は基本的に捜索、救助、建設、運搬などに転用可能ではあります。ただ、現段階ではそこが目的ではありません。まして、軍事利用の可能性を追求する予定などありません。

―『Prosthesis』のようなロボット研究の目的はどこにあるのでしょう?

Jonathan:高度なテクノロジーが進化し続ける中、人類が培ってきた物理的な熟練技やスキルを称賛するところにあります。
※『Prosthesis』は高度なテクノロジーの塊だけど、動きの良し悪しそのものは操縦者である人間の技や能力次第という点

近い将来、私達の仕事の多くはロボットにより自動化されるでしょう。(職人技など)人間が努力して培ってきた能力を、最新のテクノロジーに“アウトソース”する時代になると思います。だからこそ、鍛錬や努力で築き上げた人間の精神や経験がどれだけ重要で価値があるものかを強調したいのです

―ありがとうございました。

これまでアニメ、マンガ、ゲームの中の世界でしたなかったロボット同士のレースやバトルが現実のものとなる日はもうすぐそこのようです。

※画像:Furrion社提供

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 6PAC) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. レースロボット『Prosthesis』を開発中のFurrion社メカニカル・エンジニアに聞く
access_time create folderエンタメ デジタル・IT
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。