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「HOYA 暗所視支援メガネ MW10」を網膜色素変性症患者で夜盲症の私が実際に体験した感想

世界には様々な病気があり人はそれぞれ異なる病気や症状に悩みながら生きています。
私の場合、悩みと言えば先天性の「網膜色素変性症」です。
この病気は光を受けそれを電気信号に変換する網膜、カメラでいうところのフィルムに相当する組織が何らかの原因で長い年月をかけて機能を失っていくものです。
網膜色素変性症の代表的な症状としては、夜や暗い所が見えない・見づらい、つまり「夜盲症」です。
私は先天性の網膜色素変性症患者ですので、私にとって夜盲はもはや当たり前のことだったのですが、昨年秋にメガネレンズや光学機器の製造で有名な HOYA から夜盲症の人のための「暗所視支援メガネ MW10」が発表されたことを知り、私に激震が走り、「ぜひ試してみたい」と思いました。
そして今回、WM10 の開発メーカーである HOYA と関東圏では唯一の MW10 取扱店となっている「アサクラメガネ」の協力の下、WM10 の体験および開発者インタビューが実現しました。
本記事では網膜色素変性症で長年の夜盲に悩む私が身を持って WM10 を体験した感想をお伝えします。
私の持病がこうして当ブログの記事になるとは、自虐ネタの極みとでも言いましょうか・・・。
開発者インタビューは 3 時間以上にもわたり、製品概要の紹介、機能、使用例、医療機関における患者を対象としたテストの概要やその結果、開発のきっかけやこれまでの課程等様々な情報を得ましたが、現在はまだ WM10 の発売前なので、それらの公表は控えますが(発売後には許可された範囲内で開発者インタビューの内容をご紹介します)、今回の記事はあくまでも WM10 を体験した感想を率直にお伝えすることを趣旨としております。
そもそも「暗所視支援メガネ WM10」とはなんぞや?という方のために WM10 の概要を紹介しますと、WM10 は専用設計の超高感度カメラの映像をメガネ型スクリーンに内蔵されたシースルーのディスプレイに投影し、それを肉眼で見るデバイスです。
製品は大きく分けてグラスユニットとコントローラーユニットで構成されており、メガネと同じようにグラスユニットを頭部に装着して使用します。
ディスプレイユニットははスポーツ用サングラスのようなカッコいいデザインで、予想以上に軽くそれはスキーやスノボ用のゴーグルに近いものでした。
頭部の後方まで覆うバンド設計を採用しておりフィット感は中々良かったです。
普通に身動きする分だと、WM10 がズレたり落ちてきたりすることはほとんどありませんでした。
装着感や携帯性は日常生活の中でも使えるレベルに達していると思います。
WM10 を使うと暗い場所が明るく見える原理はスマートフォンカメラをイメージすると分かりやすいと思います。
最近のスマートフォンの多くは暗い場所だったとしてもかなり明るく綺麗に映りますよね? 基本的に MW10 はそうした見え方を晴眼者(特に眼の疾患の無い眼を持つ人のことです)レベルに近づけることを目標に開発されています。
私が WM10 を初めて使用してみてまず思ったことは、「確かに、周囲の物がめちゃくちゃ明るく見える」です。
体験談をお話しますと、夕暮れ時のアサクラメガネオフィス内の照明を全て落とすと、私はもはや何も見えなくなりましたが、その状態で MW10 を装着したとたん、その場で会話している人たちの顔がハッキリと見え、彼らの目をみて会話を継続することができました。
続いて、その部屋の壁に貼ってあった視力検査の表(C の文字もやつです)は照明が無いと何も見えませんでしたが、WM10 だと普通に「C」の空いている方向が容易に分かったのです。
さらに、ふと暗い雑居ビルの掲示版に貼ってあるポスターを見ると、そこに書いてある文字や文章がスラスラと読めたのです。
残念ながら今回は日帰り出張でしたので、一番気になる夜間の見え方を実際に試すことはできませんでしたが、これまで述べたビジョンの向上ぶりからすると、夜の街が見やすくなることは容易に想像がつきます。
WM10 の体験使用を通じて、私は「晴眼者の人たちはいつもこんな風に見えているんだ~」と普段の何気ないことであっても、晴眼者に近いジョンを共有できたことに感動し、また見えないことがこれまでごく当たり前だったのにそれが見えることに感慨深い感情が込み上げてきました。
ただ、MW10 で周囲が明るく見えると言っても、それはスクリーンの内部にある小さなディスプレイ部分の話で、目に映る全ての物や風景の明るさが向上する、というわけでは無く、また MW10 を装着し夜の街を縦横無尽に爆走したり、自動車を運転することは今のところ無理でしょう。
MW10 はスクリーンの映像を見る仕組みなので、映像の画角や距離感が肉眼とは一致しないからです。
これは WM10 の仕組みによる制約みたいなもので実現不可ということではありません。
また、MW10 を使い慣れると見方のコツが掴めますし、後述するズーム機能を活用すると見え方を自分に適したものに調節できるので、ある程度までは解消できる話です。
WM10 が想定している利用シーンは夜間の歩行や暗所での軽作業といったところまでで、乗り物の運転や本格的な業務利用はそもそも WM10 が想定している利用シーンではありません。
しかしそれらに対するニーズはとても高いでしょうから今後の製品開発に期待したいところです。
先程、スマートフォンのカメラ映像を見ると MW10 をイメージしやすいとお話しましたが、MW10 のカメラユニットはスマートフォン用カメラとは異なる方向性の下で設計されており、しかも性能についても桁違いの良さです。
HOYA さんへのインタビューの中で私が強く感じことは、WM10 のカメラユニットに相当拘っているんだなぁということです。
と云いますのも、スマートフォンのカメラは解像度を高めることに重きを置いていますが、WM10 のカメラユニットはイメージセンサーの感度や受光量、映像の転送スピードに重きを置いており、イメージセンサーのピクセルサイズはスマホカメラのなんと数倍、レンズについては HOYA の技術を応用した専用設計、さらにイメージセンサーからの映像データを無圧縮のまま処理用 LSI に高速転送する映像転送インタフェース、そのためのカスタムドライバとファームウェアを導入することにより、解像度よりも明るさや色の再現性、見やすさに優れています。
技術的なことをお聞きしていると、それだけで何時間も話が止まらないくらい HOYA さんはとても熱く語っておられました。
とにかくカメラユニットには相当の自信がお有りのようです。
WM10 の映像サイズは 720p@30fps が基本です(厳密には 30fps より少し高いそうです)。
単なる動画だと、この解像度はさほど高くはありませんが、実際に WM10 の映像を見て極端に荒いとは思いませんでした。
それよりも、WM10 の映像は単純に物や周囲が明るく見えるだけでなく、(暗所でも)色合いがフルカラーに近い再現性で、暗視スコープのようにモノクロ表示ではありません。
ちゃんとカラー表示になります。
また、体験前に懸念していた映像のラグですが、実際に WM10 を使うと暗所であってもほぼリアルタイムに近い描画性能でしたので、頭や首の動きに良く追従して映像が切り替わるような見え方でした。
WM10 にはコントローラーユニットにディスプレイ輝度と画角の調節機能が備わっています。
上下ボタンを押すと周辺環境に合わせてスクリーンの明るさを調節したり、映像をズームしたり逆に小さくすることもできます。
このズーム機能は単に表示内容を拡大・縮小するのではなく、縮小した場合はまるで魚眼レンズのようにカメラが捉えた広い視野の映像を眼の中心視力のみで見渡すことができたり、中心部分の視力よりもその周囲の視力が残っているドーナツ型の方でも、視点を少しずらすだけで WM10 の明るい映像が目に飛び込んできます。
MW10 はバッテリー駆動を採用しており、フル充電で 4 ~ 5 時間の使用が可能とされています。
グラスユニットはシースルーのスクリーンなので、たとえバッテリーが切れたとしてもサングラスと同じように少し暗く風景が見えます。
HOYA さんは MW10 のバッテリーにも拘りっておりまして、それはバッテリーパックにリチウムイオン 18650 を採用していることです。
これは耐久性が高く、丸型バッテリーなので衝撃の影響を比較的受けにくくなっています。
安全性にも配慮した設計です。
コントロールユニットはバカでかい印象で小型化は必須だろうと思いましたが(大容量バッテリーの影響で大きくなっています)、パッケージにはコントローラー用のホルダーが付属するので、携行は余裕で可能です。
WM10 は裸眼、メガネ、コンタクトレンズのいずれの場合でも使用可能で、WM10 用の少し高さのある鼻パッドを使用すると、今使っているメガネの上から MW10 を被せて装用できますし、MW10 用の処方メガネ「インナーグラス」を作成すれば、メガネをビルトインした WM10 になります。
幅広い人に対応できるデバイスです。
次の写真の透明な枠部分がインナーグラスです。
また、カラバリ(グラスユニットのボディカラー)は 5 色で、サングラス部分のレンズタイプも選べます(2 ~ 3 種)。
気になる MW10 の価格は標準セットで 40 万円前後(販売店によって多少前後すると思いますがうがおよそ 40 万円前後です)。
スマートグラスやメガネがこの金額というのはあまりにも高すぎですが、でもプライスレスな晴眼者に近い夜や暗所でのビジョンがこの金額で手に入ると見方を変えると、MW10 の価格に対する認識は大きく変わってくると思います。
WM10 は既に全国の取扱店にて体験することができます。
関東圏は「アサクラメガネ」、近畿は「大阪ライティングハウス」、九州は福岡の「丸善メガネ」です。
体験は随時可能とのことですが、各々で時間がかかるため事前に予約する必要があります。
今回私が訪れたアサクラメガネだと電話で問い合わせれば良いです。
これら取扱店では実際に WM10 を予約することもできます。
発売は 4 月以降となっているので多少時間はかかると思います。
Source : HOYA

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