mekakushe、改名後初ライヴで川本真琴と共演「信じられないくらいうれしい」 グランド・ピアノで貴重な連弾も――ライヴ・レポート

mekakushe(メカクシー)が2月8日、川本真琴との2マン・ライヴ〈秘め事、秘め音〉を東京・北参道ストロボカフェで開催した。
シンガー・ソングライターのヒロネちゃんが2月1日、音楽活動の名義をmekakusheに変更することを発表。この日は”改名”後、初のライヴとなった。また、この春に大学を卒業する彼女は、学業専念を理由にライヴ活動を控えていたため、この日は久しぶりの公の場でもあった。
そんな特別な日の対バン相手に選んだのは、かねてからファンだという川本。ともにクラシックを学び、ピアノ演奏するという共通点も。そんなふたりがグランド・ピアノが設置されているこの会場で共演するということで、彼女たちのファンも楽しみにしていたことと思う。しかしライヴ直前に思わぬアクシデントが襲い、一時は開催が危ぶまれていた。
2月上旬、川本が滞在していた地元・福井県は37年ぶりの大雪に見舞われ、交通が断絶。帰京するすべがなく、一時はmekakusheのワンマン・ライヴとなる可能性がアナウンスされていた。しかし当日になり、なんとか一部交通機関が復旧。無事に2マンが開催できることが発表された。
■川本真琴との2マンは「信じられないくらいうれしい」
迎えた当日の夜。この日のチケットは早々に完売しており、会場には満員の観客が詰めかけていた。予定より10分ほど押して、薄紫色のドレスを着たmekakusheがステージへ。「みなさん、こんばんは。いろいろありましたけど、今日という日を無事に迎えられてよかったです」と安堵の笑顔を見せた。
グランドピアノの前に座り、鍵盤に指を置くと、ラヴェルの「高貴で感傷的なワルツⅠ」を演奏して会場を暖め、そのままライヴがスタート。「こおりのなか」「思い出せない夢みたいに」では、冒頭の躍動感あふれる演奏から一転して、繊細なピアノと歌声を披露した。
ここでmekakusheはピアノを離れ、彼女の楽曲のアレンジなどを担当している野澤翔太をステージに招き入れる。野澤が奏でる暖かいアコースティック・ギターの音に歌が重なり、「内緒」「アイニー」の2曲を続けて演奏。目で合図を送ったり、マイクを両手でぎゅっと握ったりしながら、丁寧に歌詞を紡いでいった。
そしてmekakushe名義での初音源となる「真冬の熱帯夜」もふたりで演奏。「やりたいことや、やりたい歌詞を詰め込んだ、おもしろい滑稽な曲になりました」という彼女の言葉通り、リズミカルなギターと軽快なメロディが印象的な楽曲が披露された。
「わたしのなかですごく大切な曲です」という紹介からはじまった、新しい名義の由来と思われる「目隠し」では、野澤のギターにくわえてmekakusheはピアノを演奏。息ぴったりの演奏で、ふたりのパートを締めくくった。
ここでふたたび、mekakusheの弾き語り演奏へ。「さよならモンスター」を披露したあと、紙袋を手に取り、「バレンタインが一番近いライヴだったので、みなさんにチョコレートを持ってきました」と観客にプレゼントを贈るひと幕もあった。
続くMCでは、無事にこの春で大学が卒業できそうだと報告。卒業後も引き続き、学校で学んでいたクラシック音楽を勉強したいと考えていることを明かした。また、川本が福井で足止めされていたことに触れ、「今日の日を迎えられて本当に良かったです。心待ちにしていました」と心境を吐露。「奇跡のような出来事だと思っています」「当たり前じゃないなって思うんですよ」と日常の尊さについて話すと、「そういう気持ちも重なったので」と新曲「もしものはなし」を演奏。もし災害が起こったら、もしミサイルが落ちたらと考えていたら怖くなって作ったという同曲を、大切に、丁寧に、噛みしめるように歌った。
そして「きょうは本当にお集まりくださり、ありがとうございました。川本真琴さんとの2マン・ライヴは、本当に本当に信じられないくらいうれしくて、すごい優しくて、優しすぎて、一緒に音楽をやらせていただいて本当にうれしいです。これからこの日のことを忘れずに前に進んでいきたいと思います」と感謝を述べ、最後は再び野澤とともに「ハロー青」を演奏。情感豊かな歌声を披露すると、最後に深く一礼。暖かい拍手のなかで、出番を終えた。
■「きょうはここへ来たことを話すしかない」
転換を挟み、真っ赤な衣装に身を包んだ川本がピアノの前へ。この日はキーボードの葛岡みちを迎えた編成で演奏した。後半に葛岡が退場するまでは、演奏の合間にふたりで軽快なトークも。終始、和やかなムードでライヴは進行していった。