【Interview】契約締結もクラウド化の時代?押印や郵送も不要になる「クラウドサイン」


企業間同士の取引を行う上で、契約書の作成作業はよく発生する。押印や郵送にかかる人的コストはもちろん、契約成立までのリードタイムがどうしても長くなりがちになってしまうのが、紙での契約締結の課題であった。

そこで今回取り上げるのが、契約の締結や管理までをクラウド上で一元管理できる「クラウドサイン」だ。ペーパーレス化が注目される中、紙からクラウドへ移行することのメリットについて、弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事情部部長の橘大地氏に話を伺った。

契約にかかるコストをITで解決

Q1. まず、クラウドサインをリリースすることになったきっかけはどのような背景があったのでしょうか。

現会長の元榮太一郎が、弁護士時代から感じていた「契約事務をもっと簡単にできないか」という課題をITで解決しようと考案したのがきっかけです。

弁護士に限らず、企業間で取引を行う多くの場合に契約書の作成が必要となりますが、その中で膨大な枚数の契約書が発生することや、締結までに関与する人間が多数存在すること(つまりは関与者全員が契約書上に押印やサインする必要があること)、さらに関与者各位が日本各地、もしくは世界各国に点在することなどは、少なくありません。

こういった状況に対し、「紙の契約書を作成し、それを郵送して受け渡しするコストが企業活動や事業成長を妨げてしまうひとつの要因となるのではないか」という考えもあり、当社は、弁護士法など業界の特殊な法律や日本独自の契約慣習に精通している企業だからこその知見を生かしたサービスを提供できるはずだと考え、法律の専門集団であると同時にITの専門集団でもあるという当社の独自性を活かしWebで契約が完結するクラウドサービスを開発しました。

Q2. 従来のペーパー型からクラウドサインに切り替えることで、企業側にはどのようなメリットが生まれますか。


大きく3つのメリットが挙げられます。

1.契約締結までのリードタイム短縮
従来の紙の契約書の場合に必要となる「プリントアウト」「製本」「押印」「封入」「郵送」という手順が一切不要になるため、単純にこれらの作業にかかっていた時間分が削減されます。クラウドサイン上での契約の受け渡しは、郵送という物理的手段ではなく、メールで送受信することになりますので、契約書類をクラウドサイン上にアップロードしてから相手側が契約書を確認・合意するまでの時間は最短1分程度にまで短縮されます。

2.コスト削減
「紙代」「インク代」「郵送代」などに加え、電子契約では印紙が不要となります。また、従来の契約締結までの業務に必要だった作業に費やす人的コストも合わせて不要となります。また、クラウドサイン上で書類を締結した場合、「紙」として保管する必要がなくなるため、保管スペースの確保も不要となります。大きな企業様ですと、契約書を保管するためだけに倉庫を借りている場合もあるかと思いますが、そういったもののコストも削減可能です。

3.コンプライアンス強化
クラウドサインで締結された書類は、改ざん防止措置を施された上で、自動でクラウド上に保管されます。また、契約締結までに行われた行動はデータとして記録される仕組みとなります。したがって、書類の改ざんや紛失リスクの回避、透明性の担保などが可能となり、結果としてコンプライアンスの強化につながります。

Q3. クラウドサインを導入前と導入後とでは、何%くらい時間が短縮できるものなのでしょうか。

契約書の種類や関与者の数、所在地などによるため一概に何%短縮できるとは言えませんが、クラウドサイン上で取り交わされている契約書のうち6割以上が1営業日以内(8時間以内)に締結されています。1日以内(24時間以内)まで延長して見ると、7割以上という実績があります。

従来の紙の契約書の場合、押印・それに伴う回覧、そして郵送に時間がかかるため、契約締結までに1週間、長いものだと1ヶ月程度もかかる場合があります。そうした観点から言えば、7〜30日のリードタイムを1日以内にまで短縮できる可能性がある、という言い方はできます。

契約締結に要する「作業」が不要となることで、時間短縮に成功している例としては、大手IT企業様の事例の中で、20時間弱程度かかっていた契約作業が15分程度まで短縮されたというものがあります。これは、「紙」ではなく「データ」であるからこそ可能となる「csv」を利用した「契約書の一括作成・送信」することができることによるものです。

口コミで拡散され急成長

Q4.導入企業数が 「1万6000 社突破」と急成長を遂げている理由はどこにあるのでしょうか。

わかりやすさ、使いやすさを追求した「UI・UX」、リアルタイムでユーザー様のご質問に答えることのできるチャットサポートの提供を行なっているほか、ユーザー企業様からのフィードバックを参考にした開発要件・スケジュール調整など週単位で行なっております。クラウドサインでは、とにかく顧客視点でのユーザビリティを最重要視していますが、それがリリースから2年少々で1万5000社以上の導入実績に繋がっていると思います。

取引先がクラウドサインの利用を始めたことがきっかけで、始めて利用したお客様が「使いやすさや便利さ」からそのまま自社導入を進めてくださったり、お取引先様に積極的にオススメしてくださったりと口コミでユーザーが広がっています。

わかりやすさ、使いやすさに合わせ、お客様の視点を常に中心に据え、愛されるサービスであり続けるための努力を続けていることが、お客様が別のお客様を呼び込んでくださることに繋がっており、急速な成長を支えているのだと思います。

Q5.クラウドサインの今後の展望・目標について教えてください。

これまでの古い常識を変え、社会を変えるサービスになりたいと考えています。「紙と印鑑」をビジネスシーンから不要とする「社会的な常識を変えるチャレンジ」、煩雑な手続きから発生する無駄な作業をなくす「働き方改革」など。「クラウドで契約をかんたんに」というテーマのもとに、2017年10月には「クラウドサインペイメント」という、「契約」「決済」一元化クラウドサービスもリリースいたしました。今後も、常識にとらわれない柔軟な発想で、「契約の再発明」を行なっていきたいと考えております。

クラウドサインは企業間で交わす契約周りの変革を担い、今後かなりインパクトのあるサービスになるのではないだろうか。契約に至るまでのフローの時間短縮はもちろん、ペーパーレス化や郵送費のコスト削減など、導入に対するメリットは企業側にとって申し分ない。企業同士の契約締結に関しては、古い慣習が根強く残るなか、クラウドサインが風穴を開ける役割を担うことであろう。

Techable

Techable

ウェブサイト: https://techable.jp/

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