NY Issue : Interview with Alexander Muret

溶かしたクレヨンを用いた独特のペインティングや文字を組み合わせたドローイング作品で知られるAlexander Muret。23歳にしてエディ・スリマンによるイヴ・サンローランのラストコレクションでアートワークを起用され、自身もモデルをつとめたことで話題を呼んだが、若き成功者というハイプなイメージとは裏腹に、気取りもなく地に足のついた発言が印象的だった。
ーーあなたのHPを見たときに、ドラえもんを見つけて笑ってしまいました。ドラえもんが好きなんですか。
Alex「(笑)。うん、大好きだよ。ドラえもんはすごくキュートだ」
ーーシンプソンズも見かけましたが、私はバートが特にお気に入りです。
Alex「彼はいたずらっ子だよね。あのファミリーは全員楽しいから好きだよ」
ーー元々アニメーションが好きなんですか。
Alex「アニメーションは好きだけど、画家だから静止画の方が好きかな。多分将来的には動画の人気がどんどん上がると思うけど、個人的にはやっぱりスチールの方が好みだな」
ーーなるほど。小さい頃から創作をするのが好きだったんですか。
Alex「塗り絵やドローイングなどなにかしらのアートをいつもしていたよ。でも、生来のアーティストというわけではなかった。家族にアーティストが多いわけでもない、すすめられたけでもない。でも17歳でアーティストになることを決めたんだ」
ーー決めてから、実際にどのようにして始めたんですか。
Alex「17歳の時に決めたけど、始めたのは19歳。最初は自分で材料を買って、家でひとりで制作していたんだけど、すぐ散らかしちゃってよくないから小さなアートスクールに通い始めたんだ。毎日小さなテーブルで作業をして、いろんなアーティストに囲まれていた。アジア人が多くて、18歳から80歳ぐらいまでの幅広い年代の人たちがいて、とてもクールだった。先生たちもアーティストだったし、みんな経験豊富でおもしろくて、デッサンや彫刻などのクラシックなアートをやっていた。そこで教育を受けたんだ」
ーー溶かしたクレヨンを使い始めたきっかけは?
Alex「蝋画というオイルペインティングの前から行われていた古い方法があるんだ。昔の人たちはワックスと色素を混ぜたもので絵を描いていた。それに興味を持って習ったんだけど、自分が既に持っていた素材の中からクレヨンを見つけて、クレヨンはワックスだし、安いから使ってみようと思った。アートの材料はとても高いからね。で、実際使ってみたら、とても気に入ったというわけ」
ーーそれはもしろい。
Alex「ある日、アート用品店で子供用のセクションを見かけて、『大人だけど、こっちの素材を使ってみよう!』って思ったんだよ」

ーーいろんな線、丸、四角を使った作品ですが、どうやってこのスタイルに辿り着いたんでしょう。
Alex「少し子供っぽいというか、シンプルでベーシックな物が好きなんだ。物事の本質はみんなの意識内や言語の中にあると思う。そうした言葉や形の双方にインスパイアされた結果、こうなった。最初に言葉を色々書いていって、その連なりを基に形を作っていってアートにしていたりね」
ーーでは、丸と四角の違いについてはどう思う?
Alexe「とても大きな哲学的な質問だね。哲学的じゃない答えをすると、同じだけど形が違うだけだと思う。違いより共通点の方が目立つかな」
ーー多くのアーティストが線や丸を使う中、誰が見てもわかるような個性的なスタイルを見つけた方法は?
Alex「 ひたすらに興味のあることだけをやっていたら、自然とスタイルが生まれて発展していった。例えばあるアーティストやその作品群に興味を持ち学んでいくと、いつの間にか自分らしい形ができる。自分が作っているものの共通点に気づき始め、同じことを繰り返していくうちに自分の癖がわかるようになる。アートだけじゃなく、日常生活の中でも、自分を客観的に見て、自分の習慣に気づくことが多いよ。起きて外に出た時に、5日間連続で9:30に起きたことに気づいたり、毎日午後2時にコーヒーを飲んでいることに気づいたりね。アートや生活の中で、共通点を見つけるんだ。僕は習慣を持つことを大切にしているし、毎日同じことを繰り返す。習慣づけ、繰り返し、しっかりとした形式と決まりを決める。それがアートにも反映されているのかもしれない。制限というのが、自分の世界観にとって大事なんだと思う」