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冷たく暴力的なのにめまいがするほど美しい……サスペンス映画『ノクターナル・アニマルズ』レビュー

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ノクターナル・アニマルズ

現在、上野の森美術館で開催中の「怖い絵」展、連日大混雑の賑わいを見せています。人はなぜ、怖くて美しいものに惹かれるのでしょうか。ついそんなことを考えてしまうような、冷たく暴力的、それでいてめまいがするほど退廃的な美しさに満ちたサスペンス映画『ノクターナル・アニマルズ』が11月3日(金)から公開されます。

画廊を経営するスーザン(エイミー・アダムズ)は、成功した医者(アーミー・ハマー)と再婚し、経済的には恵まれているものの、夫婦の仲は冷え切っています。ある日、長い間連絡がとだえていた元夫エドワード(ジェイク・ギレンホール)から突然小包が届きます。それは出版される前の原稿の束でした。小説のタイトルは『夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)』。なぜ突然彼女に送られてきたのか意図がわからないまま、スーザンはその小説を読み始めたのですが…。

物語は、現在のスーザン、小説内の出来事、スーザンとエドワードの過去で構成されています。エドワードが送ってきた小説は、ある平凡な一家が旅行中に巻き込まれる凄惨な事件とその顛末を描いたサスペンスでした。小説家志望だったかつてのエドワードの作品にはなかったすさまじく暴力的な内容に、スーザンは困惑し、現実とフィクションと追想の迷宮に足を踏み入れた彼女の日常は崩れ始めていきます。

監督は『シングルマン』のトム・フォード。本作は、世界的ファッション・デザイナーとして有名な彼のこだわりと美意識が、全編いたるところに感じられます。ひとつひとつのシーンの完成度はいうまでもなく、華やかでゴージャスなパーティ場面はもちろん、背筋が凍るようなショッキングな犯行現場でさえ、謎めいた妖しい魅力を放つのです。そしてその邪悪な美しさに魅入られた観客は、うしろめたさを抱きつつも、目をそらすことができません。

オースティン・ライトによる原作『ノクターナル・アニマルズ』(ハヤカワ・ミステリ文庫 *『ミステリ原稿』を改題し新装版で刊行)は、20年前に発表され、批評家に大絶賛を浴びました。映画版では画廊のオーナーという設定のため、スタイリッシュで豪華な衣装を次々に身にまとうスーザンは、原作では3人の子を持つ平凡な主婦。ですが、エドワードと現在の夫との間にかなり複雑な過去を持っており、それが明らかにされていくにつれ、小説内小説とは別のサスペンスが浮かび上がります。エンディングも若干異なる二つの作品、視覚と聴覚が刺激される映画と、じわじわと心理的に追いつめられる小説、どちらが先でも大丈夫ですので、ぜひ両方ともお楽しみ下さい。

【プロフィール】♪akira
翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP、月刊誌「本の雑誌」、「映画秘宝」等で執筆しています。

ノクターナル・アニマルズ ノクターナル・アニマルズ

『ノクターナル・アニマルズ』11月3日公開
http://www.nocturnalanimals.jp/
(C)Universal Pictures

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