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夏はやっぱり怪談の季節! 江戸から現代の怪談について、小説家・高原英理さんに聞いてみた

夏はやっぱり怪談の季節!

 最近、どんどん暑くなってきましたね。もうすぐ夏本番、という気温で、クーラーが欠かせない毎日です。そんな夏の定番と言えば、やっぱり怪談! 夏の夜にみんなで集まって怖い話をした、なんて経験、ありますよね。日本では昔から怪談が盛んで、数多くの話が残っています。そんな怪談をたくさん収集して、『怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影』(立東舎)という本を出した、小説家の高原英理さんにお話を伺いました。

怪談を集める小説家

ーー『怪談生活』には、江戸から現代までの様々な怪談が収録されています。これらの話は、どうやって集めていったのですか?

 江戸の随筆を収録した『日本随筆大成』(吉川弘文館)の、『新著聞集』の入った巻が古本屋に100円で出ているのを見て、これを買ったのがきっかけでした。柴田宵曲が江戸時代の怪談を紹介した『妖異博物館』に出典のひとつとして『新著聞集』があるのはかねてから知っていました。同じ宵曲編の『随筆辞典 第四巻 奇談異聞編』(東京堂出版、後、ちくま文庫)には巻末に、怪談の含まれる随筆の題名が列挙されていたので、その後、主に『日本随筆大成』から、それらの入っている巻を買っては読んでゆきました。それと、高田衛編の『江戸怪談集』上・中・下(岩波文庫)を読みました。また、『幽』誌に「記憶/異変」の連載が始まってしばらくした頃、国書刊行会から「江戸怪異綺想文芸大系」叢書の第五巻で『近世民間異聞怪談集成』という大部の怪談奇談集が出たので、これをよく参照元にしました。ほかに、同じ国書刊行会から「叢書江戸文庫」として出ていた『近世奇談集成』『百物語怪談集成』『続百物語怪談集成』『浮世草子怪談集』もいくつか出典とさせてもらっています。現代の怪談については知人友人から聞いたものと自分の記憶に頼っています。

ーー怪談が好きになるきっかけは何だったのでしょう?

 昔から「怪談」「こわい話」「お化けの話」は好きでしたが、特に怪談ならではの技を教えてくれたのは岡本綺堂の『西瓜』でした。1970年くらいに講談社から『世界の名作怪奇館』という子供向けの怪奇小説アンソロジーのシリーズが出ていて、その第5巻の「日本編」に収録されていたと記憶しています。それと、父の蔵書に古い春陽堂文庫の『青蛙堂鬼談』があって、これで綺堂の代表的な怪談集とされる一冊を読むことができました。こちらでは特に『猿の眼』がよいと思いました。どちらも原因不明の怪異を語っていて、従来知られた「出る理由のわかる怪談」とは違う不気味さが新鮮でした。ずっと後の木原浩勝・中山一朗による『新耳袋』の中にもそれに近い味わいの怪談がありますね。

江戸と現代の怪談の違いは?

ーー江戸時代と現代の怪談で、違う点はどんなところでしょう?

 江戸時代に広く親しまれた怪談の多くは何らかの形で因果応報の形式をとっていますが、現代の怪談では、原因理由の明示を敢えて徹底させず、どこか不条理で不明な何かを残している方が「凄みがある」と、私には感じられます。現代でも因果応報的な怪談を好む方は多いと思いますが、私自身は、因果に収束してしまう怪談には飽き足りないものを感じます。これは私が近代以後の者だからでしょう。最近はなにやら世の中が差別的になってきたとも言われていますが、江戸時代はそういう批判さえ考えもできない、差別と不平等が当然の社会でしたから、虐げられた立場の弱い人の無念が生前、合法的にはらされることはあまりなく、だったら神仏の祟りや怨霊の力によって、死後にそれが復讐として果たされる、といった物語を信じていないと怒りが収まらないという事情があったのではないかと思います。それで、皆が語り聞く怪談にまず、霊的な必罰の実在を示して心の倫理的均衡を保たせる、この世がこの世だけでないことの証明の意味合いが含まれた。前近代の怪談は、怨霊が悪人を地獄に落とすことでこの世の不正をただしてくれたらよいのにという気分の一端を担っていたのだと考えます。その結果、(現代ならたとえば女子高生コンクリート詰め殺人事件のような)許しがたい酷い事件や権力犯罪があると、その犯人が呪われて無残に死ぬ、という形の怪談が広く受け入れられたのでしょう。

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