塊肉を塩に埋めて焼く調理法「塩釜焼き」は自宅のオーブントースターでつくれる
マンガなどで見るあこがれの調理法「塩釜焼き」。
筆者は茄子が出てくる某マンガで見て、食べたい! 作りたい! と思ったものです。
マンガに影響を受け続ける人生です。
あこがれの塩釜焼き。
それは肉や魚を塩の塊で包んでの蒸し焼き。
ああもう想像するだけでおいしそう。
しかしこれを作るには大きなオーブンが必要なんじゃないか、ウチでは調理できないんじゃないか。だってウチにあるのはオーブントースターなのだもの。
オーブンとオーブントースターの違い
オーブン
・広い(熱源が遠い)・温度調節ができる ・高価
オーブントースター
狭い(熱源が近い)・温度はワット数で調節 ・安価なものもある
オーブントースターの方がちょっと不自由なので難度が高そうに感じるんですよね。
でも、それしか道具がないなら、それでやってみるのが『メシ通』魂です。そんな魂、初耳ー。
遠くから憧れていただけのアレをオーブントースターでこさえてみましょう。オーブントースターならほとんどのご家庭にありますし、まあ安いところでは2,000円台で買えますし。
食材の量は悩む余地なし
材料は「卵白」「塩」「スパイス」「肉」です。 卵白 1個ぶん 塩 500g 牛肉(今回はモモブロック) 250g 黒胡椒 ローズマリー
まずは塩を卵白と混ぜて、ねっとりしっとりさせた塩で塩釜を作るのです。
材料の配合比ですが、卵白の計量が最もめんどくさい部分ですよね。
ですから、ここを基準にします。
卵白1個ぶんで、塩を500グラムくらい練ることができます。塩釜に必要な塩の量は肉の約2倍。塩2:肉1です。
つまり卵白1個で肉250グラムほどを焼ける計算です。
図にするとこう。
そして都合のいいことに、500:250の塩と肉は、ちょうど一般的なオーブントースターのキャパシティいっぱいくらいの量になるんですね。
なので、オーブントースター塩釜焼きは、このセッティングで自然と決まりです。
これが塩釜の材料です。
卵黄は今回は使わないので、めんつゆと醤油で漬けたTKGにしてスタッフがおいしくいただきました。
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閑話休題。
塩500グラムと卵白を混ぜます。「卵白を泡立ててメレンゲにしなければいけない」的なレシピもありますが、直接混ぜ始めても塩釜は作れます。
卵白べしゃー。
大きめのボウルの中でざくざくと混ぜる。気分は砂遊びや雪遊び。
事実、混ぜ始めて1分もしないうちに塩の手応えが急に変わります。
シャーベット状のなめらかさ、滑りの良さになって、これちょっとびっくりするし、おもしろい体験です。
オーブントースター調理用の耐熱バットにクッキングシートを敷き、その上に塩でベースを作ります。肉を囲む塩釜の底の部分にあたります。
ねっとり塩が意外と粘るのでスプーンとかで平らにならすのが難しいんですが、もう1枚のクッキングシートで上から「むにー」となで回すときれいにフラット面を出せます。裏ワザです。
肉にはハーブとスパイスをたっぷり効かせろ
肉です。牛の赤身のブロックをおおよそ250グラム。
10~20グラムの誤差は気にしないでいきましょう。
今回はモモのブロックお買い得品を見つけることができました。
冷蔵庫から出して室温にまで戻しておきましょう。
(※ 今回は2回チャレンジしまして、工程解説の中で違う個体の肉の写真が混ざっております。2回の調理でいい方を採用していますので高い肉と普通の肉が入れ替わりながら出演します。最善の調理法をご紹介するためダブルキャストなので、あらかじめご了承くださいませ)
差し渡し18センチ級の国産牛。おほほほ。
塩釜焼きなら厚みが欲しい。
3センチものです。賞味消費期限直前なので半額でした。
室温に戻した肉にスパイス&ハーブを擦り込みます。黒胡椒をミルでひき、このときはローズマリーをウェイウェイしました。なくてもかまいませんが「肉をおいしくいただくためには、スパイスは過剰に多く使うべし」という教えもあります。ありゃ多いかな、と思ってからその2倍いく姿勢がうま味をメイクします。
食べた筆者が言うのですから信じてほしいのですが、スパイスとハーブは多ければ多いほどよろしいです。思いっきりいきましょう。ゴシゴシと擦り込んでおきましょう。
肉を塩で埋める
塩釜の土台に肉をどーん。
塩釜の、基礎工事やー。
塩で肉を埋めます。
肉の指宿修学旅行やー。
最後にクッキングシートで上からぎゅっと握って肉と塩を密着させ、同時に成型します。
塩のかまくら雪まつりやー。
1分くらい予熱したオーブントースターに塩釜を格納。
焼きます。
さて、ここから焼きの時間で2パターン展開します。 よく焼き20分コース
レア焼き10分コース
500~600Wで20分+余熱調理コース
だいたいのオーブントースター、高出力は1000Wくらいなはず。
高温でガツンといくと肉が固くなります。お手持ちのオーブントースターのセッティングから、中くらいの出力で焼き、あとは余熱で仕上げる方策です。塩釜焼きですから、なにしろ肉を目視にて確認することができません。
経験と勘と失敗から学ぶしかないのです。
オレが人柱になります。
600Wで20分焼いて、炉から出して10分くらい放置、粗熱をとったものです。
うひー、塩釜カチカチです。焦げ目がおいしそうです。塩の塊ですが。
舞台用語でいう「ナグリ」、つまりカナヅチでスマッシュしますと、焼けて硬化した塩釜にヒビが入りました。塩釜を叩き割る快感。
これがやりたかった。
塩釜の破片を取り除きます。捨てます。
もったいないようですが、価値としてはエビの尻尾やカニの殻、牡蠣の殻みたいなものです。
肉が縮み、塩釜との間に隙間ができているのが見えるでしょうか。
国産牛の、塩釜焼きやー。
断面はこう。ミート感あります。600Wで20分、電力量200Whですね。
わりとしっかり火が通っております。
かみ締めたい肉の味。表面に塩がついているので意外としょっぱみがあります。
塩分の量はそうでもないポテチが塩辛く感じるのと同じメカニズムなのかもしれません。そんなわけで酒の肴にチリバツです。
そして、お茶漬けに肉をトッピングして「ぐわッガッ」といただく。
茄子が出てくるマンガを読んでからずっと、これがやりたかったんですわー!
わさびをちょっと乗っけるのがサイコーなんですよね。
ぐは、うめえ。単なるお茶漬けの格が上がり、お肉を食べる意味が変わる体験です。
500~600Wで10分+余熱調理コース
焼き方のふたつめ、こちらは電力量でいうと約100Whです。無駄な言い換えです。
10分焼いて、取り出してから10分放置です。
塩釜にはさほど焼き目はついてないですけど、カッチカチです。興奮します。
カナヅチでガンと叩くとヒビが入りましたので、塩釜のパーツを慎重に取り除きましょう。ちなみにこの段階で、すンげーいい匂いすんのよ。
スパイスはともかくハーブって肉の臭み消し的な役割だと思ってたので、新しい肉に使う意味がいまいちわからんかったのですが、こうして割れた塩釜から立ち上るうま味ローズマリー蒸気スメルを嗅いでいると、なるほどそそるものがあります。相性次第かもしれませんが、いろんなハーブ&スパイスをなにも考えずに混ぜるのは楽しいかもしれませんね。
あ、多すぎる塩は手やフォークなんかで払い落としましょう。しょっぺーです。
ぷりっぷりだ。モモ肉がぷりっぷりなんだよー!
見た目がローストビーフみたいになってしまって、だったらローストビーフ作りゃいいじゃんという気持ちになりもしましたが、事実として仰け反るほどおいしかったです。塩とハーブとスパイスが外側にちょっとだけついてるので、ベースとなるウマい肉の味にプラスでちょうどいい塩梅になりまして。
なにより火加減がブラボーなので結果的に宇宙一です。
タイマーひねるだけのたった10分間の焼き時間で牛肉がこんなウマそうな色に仕上がるのですよ。
塩釜焼き・イン・ザ・オーブントースターは可能でした。
そして火加減の調節についても知見を得ました。もうね、豚肉も鶏肉も魚も、とにかく塩釜で焼きたくてたまらん気持ちです。
※この記事は2017年5月の情報です。
※記事初出時、一部内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
書いた人:鷲谷憲樹
フリー編集者。ライフハック系の書籍編集、専門学校講師、映像作品のレビュアー、社団法人系の広報誌デザイン、カードゲーム「中二病ポーカー」エバンジェリストなど落ち着かない経歴を持つ器用貧乏。 Twitter:@nwashy
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