「情報で世界は変わるのか」 ニコ生初登場・池上彰×津田大介 in ニコファーレ 全文(前編)
近年、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアの普及により、個人での「情報」の発信や共有をする動きが急激に速まっている。中東・北アフリカの一部では、ソーシャルメディアを使った情報発信をきっかけとした反政府デモが拡大し、長期政権の崩壊まで起きている。果たして情報は世界を変えたのか――。
ニュースをわかりやすく解説することに定評のあるジャーナリストの池上彰氏と、メディア・アクティビストの津田大介氏が2012年3月10日夜、東京・六本木にあるライブハウス・ニコファーレで「情報で世界は変わるのか」をテーマに対談。「いい質問ですね」のフレーズで有名な池上氏に直接「質問」できる時間が設けられたこともあり、会場には200人以上の観客が詰めかけた。
以下、全文書き起こして紹介する。
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv82788026?po=news&ref=news#0:01:27
・明かされた「いい質問ですね」の秘密 池上彰×津田大介 in ニコファーレ 全文(後編)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw215051
■池上彰氏、ニコファーレに”初降臨”
ナレーション: 池に投げる石が大きければ大きいほど、そして、石の数が多ければ多いほど、波紋は大きさを増していく。2010年、チュジニア・ジャスミン革命勃発。反政府デモの拡大により、23年間続いた政権が崩壊。革命の余波は中東地域に飛び火し、「アラブの春」に発展。2011年、「ウォール街を占拠せよ」。経済不況に苦しむ若者が中心となり、経済界・政界に対し、抗議運動を開始。デモはウォール街を飛び出し、アメリカ全土に拡大。
暴動・革命・市民運動。社会に投げる石の数が増え、波紋を大きくしたのは、インターネットの普及により台頭してきた、ソーシャルメディア。FacebookやTwitterによる呼びかけが、人々の参加を促した。個人による情報の発信、情報の交換。そして、情報の共有が大きなうねりとなり、社会を動かす大きな力の一つとなっている。
ならば今宵、あえて問おう、あえて発信しよう。果たして情報で世界は変わるのか?終わりなき紛争、逼迫する世界経済。情報はその打開策足りえるのか。あなたの意見、あなたの情報をここニコファーレに向け、そして世界に向け、発信せよ。
くだらねえ世の中にはさせねえ。ソーシャルメディアによって、ジャーナリズムの新たな可能性を切り開き、情報というガソリンで、ムーブメントを起す男。メディア・アクティビスト、津田大介。
(津田大介氏登場)
ナレーション: 自分が分からないことは、相手も分からない。とことん分かりやすく。とことん丁寧。『週刊子どもニュース』の父にして、いまや日本のジャーナリズムの神とも呼ばれる存在。今宵、ついにニコファーレに降臨。池上彰。
(池上彰氏登場)
津田大介氏(以下、津田): はい、ということで『池上彰×津田大介 in ニコファーレ』。どうもこんにちは、ジャーナリスト、メディア・アクティビストとして活動しています、津田大介です。そして、もう多分みなさんには説明不要かと思うんですけど、ニコファーレ初登場となります。ジャーナリストの池上彰さんです。みなさん、拍手をよろしくお願いします。
池上彰氏(以下、池上): よろしくお願いします。なんですかね。この、出来の悪いオープニングは・・・。
津田: いきなり駄目出しから入りましたけど。どこが駄目でしたかね。
池上: なんでこんなに大袈裟にやるわけ?出来の悪いテレビ番組みたいじゃん。
津田: そうですよね。
池上: だいぶ違和感がありますけど。
津田: これがニコファーレっていうのが360度、こういうふうにコメントがリアルタイムに出て来ているんですけど。(池上さんは)このニコファーレ初めてですよね、当然。いかがですか見渡してみて、リアルタイムでこういうコメントが・・・。
池上: すごく不安ですよね。後ろからずっと見られていると思うと。
津田: (コメントに)「池上さーん」ってありますけど。あと「最初の4分無駄だった」みたいなコメントとかね。
池上: まあ、それはせっかく作っている人がいるわけですから。
津田: もういきなり、コメントで「いい質問ですね」っていうのが。非常にせわしいんですけれども。まあ、ニコファーレは本当に新しい形で、前面がLEDになっていて、イベントやライブを発信できるスペースで、音楽のライブやったりとか、こういうトークのイベントとかもやるんですけど、世界で唯一の実験的な施設と言われていてですね。
池上: なるほど、「最初にそういう宣伝をしなきゃいけない」って言われたんですか。
津田: いや、そうじゃないですよ。単純にこのニコファーレって、もの凄い赤字を出してるらしくて。
池上: なるほど。
津田: 赤字を出している割りには、すごい、かなり、ニコニコ動画の中でも微妙な存在らしくて、ここが盛り上がってくるといいとは思ってるんですけれど。すいません。じゃあせっかくですから、お座りいただいて、議論の方を始めていければなと思うんですが。
池上: 津田さんが最近、朝日出版社から『情報の呼吸法』という本を出されましたね。これを朝日新聞出版と間違えている人がいましたから。朝日新聞出版じゃないですね。朝日出版社という前からあるんですが・・・。
津田: 宮沢りえの(写真集)『Santa Fe』を出した方ですね。
池上: あれ、そうか!
津田: そうです。あれでビルがすごく綺麗になったらしいですからね。
池上: なるほどね。で、本の宣伝だっていうから、はいはいって言って来たら、なんかいつの間にか、こんな話になっちゃって。また諮られたか、騙されたかと。
津田: この辺の諮られた話っていうのは、池上さんの『伝える力』のあとがきに書かれているんですね。みなさん、ぜひ読んでいただければなって。
池上: 宣伝していただいて、ありがとうございます。
津田: いえいえ。お互いの、こういうステルスマーケティングが終わったところで。池上さんの目の前に小さなCCDカメラがあるかと思うんですけど。これは池上さんだけを映すカメラで、今、ネットで中継されているんですけれども。自分の方でクリックして、全体の風景と池上さんやつと、視点を自分で選べるんですね。そういうインタラクティブな仕組みになっているので・・・。
池上: 映らない位置はどこかな。(池上、立ち上がる。会場爆笑)
津田: いやいやいや。一応ここに座っていただけると、って感じなんですけれども。池上マニアの方は、そちらの池上さんの表情だけを映すカメラを楽しめる。
池上: うわぁ、悪趣味。
津田: テレビとはまた違った、楽しみ方があるんじゃないかなと思うんですけど。今日は、ジャーナリズムの世界に携わるようになって久しい池上さんですけれども、当然、いろんな方といろんな議論をされてきたり、情報を伝えたりしてきたと思うんですけど。せっかく『ニコニコ動画』、しかもこの『ニコファーレ』っていう新しい、全面に意見がリアルタイムで出て来て、多分これ全部見ていると、きりがないんで、たまに目に入ったときに、反応するみたいな形でやっていけると思うんですけど。
せっかく池上さんに来ていただいたんで、僕らのトークだけではなくて、これを見ている会場の人、そしてパソコンの前で見ている人たちと、リアルタイムにいろんな意見を交換しながらやっていく、ぽんぽんと進めていく濃密な90分くらいに出来ればなと、思っています。よろしくお願いします。
■池上彰「まだTwitter始めていません」
池上: 分かりました。最初に、津田さんにお詫びからでいいですか?前に、日本テレビの『池上彰くんに教えたい10のニュース』の特番がありました。あの中で津田さんが出てきて「Twitter始めるんでしょうね」って言われて、(僕は)「考えます」って言ったきりになっていてですね。
津田: 「考えます」というか「やりましょう」って言ったんですよ。
池上: 「やります」と言わず、「やりましょうかね」って微妙なところがあったんです。
津田: ちょっと政治家的な回答を。お茶を濁して。
池上: やれるかどうか自信がなかったんですが、最初にお詫びを。まだ(Twitterを)やっていません。ごめんなさい。
津田: その話は『伝える力2』でも、わざわざ僕の名前出して書かれていまして、ありがたいんですけれども。池上さんは、Twitterはやられないんですか?これは、なぜですか?
池上: そうじゃなくて。特に津田さんが、『思想地図β』という本で東北での救援支援活動でTwitterが非常に役に立ったって言う。あるいは、震災直後に大混乱する中で、津田さんが情報ハブとして使ったのを見て、私はいたく反省をいたしました。俺は何をやっていたんだろう、と。そういうのもありなんだなっていうことを思ったんですね。
その一方で、前にも言いましたけど、Twitterやってフォロワーからいろんなコメントがきたら、全部対応してあげなければ申し訳ないなって思っちゃったりするんですよ。
津田: 性格的に真面目なんですね。
池上: それやっていたら、自分が何にもできなくなっちゃいますよね。そこをどっかで、自分なりに切ってしまえばいいんでしょうけど。
津田: あの1年前の日テレの特番のときは、(池上さんは)Twitterを見てらっしゃるって話をされていたんですね。丁度、「アラブの春」が起き始めていたときだったし、それで興味はあって、恐らく「アラブの春」の一番ビビットな最新の情報って、Twitterから出てくることが多いので。当然、その辺りを追いかけられている池上さんは、Twitterを見ているとは思ったんですけども、
その後、3.11があって、まあ恐らく本当に、(池上さんは)それどころじゃなくなったんだろうなと思った。僕も池上さん始めてくれればいいなとは思っていたんですけど、本当にやりたいけど、見てもいるだろうけれども、自分で発信するのはまだ敷居が高いのかなって。
池上: 後に話となってくるかも知れませんが、そこなんですけど、すみません、津田さんが私に話を聞くというシークエンスらしいんですが。ついつい、いろいろ質問したくなっちゃうんです。
例えば、東日本大震災の時にTwitterで情報のハブになれたのは、つまりそれまで常に発信していたからですよね。Twitterを使っていたから「あ、津田大介なら信頼できる」と思った人たちが情報を受け止めたっていうのがあるわけですよ。
津田: 客観的に役に立つ情報をっていうので、僕は、ある程度裏が取れたものだけを流すようにしていたっていうのもあると思いますけどね。
池上: つまり、私が突然「Twitter始めなきゃ」ってやったからって、やっていることをみんなが知らなかったらダメですよね。つまりある程度ずっとやっていて、「あ、やっているんなら何言うか」って見てくれる。
津田: でも池上さんが公式に「Twitter始める」っていうふうに仰ったら、たぶん僕、2日でフォロワーが抜かれる気がしますよ。池上さんなら、多分すぐ50万とか100万とかいきますよ。
池上: つまり、いざっていう時に役に立てるためには、日ごろからやってなければいけない。でも、日ごろからやっていたら他のことができないという。今、そのジレンマに陥っています。
■情報で世界は変わるのか?
津田: ちょっと。じゃあ、また終わった後に相談に乗りますんで、ぜひ前向きに検討していただければなと思います。
これはニコニコのコメントだけではなくて、Twitterでも意見とか募集していまして、Twitterでハッシュタグで「#nicoron」というハッシュタグで書いていただければ、僕の画面に表示されるんで、適宜、良い質問があったら池上さんにぶつけていきたいなと思います。
はい、ということで長い前置きになったんですけれども、本日のディスカッションテーマを発表しましょう。テーマはこちらです。大仰なタイトルなんですが、「情報で世界は変わるのか」。これは僕が考えたんですよ。
Twitterとかニコ動とか、いろんなソーシャルメディアがすごく注目され始めて、ここ2年くらいになったんですけれども。そうしたら本当に去年おととしぐらいから、「アラブの春」みたいなものが起きてきて、「オキュパイ・ウォール・ストリート」も含めて、どうやら本当にネットで起きていることが現実の世界のデモだとか革命につながるみたいなことが起きた。
そして日本でも東日本大震災という大きなことがあって、復興なんかの、今まで繋がりのなかった人が勝手に集まって、復興のために働くというようなことが起きていて。そこで改めて情報で人が繋がって、それで動き始めているという状況で、情報で世界は変わるのかっていうことをずっと、まさにNHKでずっと情報を伝えるっていうことに携わってきて、現在はフリーの立場で、単行本を書かれて、分かりやすく人に伝えるっていうことを考えている池上さんに伺いたいということが、今日の趣旨ですね。
だから、「そもそも情報とは何なんだろうか」とか「じゃあ本当に、情報で世界が変わっているのだろうか」とか。あと、「変えるにはどういう伝え方、まさにどういう伝える力っていうものが今後、このネット時代の今、必要になってくるのか?」っていう辺りの話ができればというふうに思っています。
池上: すごい、タイトルが大仰ですよね。
津田: 大仰ですね。でも、これぐらい大きいテーマでじっくり90分話すとか、テレビでもなかなかできないと思うので。
池上: 永遠のテーマだろうなとは思いますけどね。
津田: そういう意味で、インターネットの発達でどんどん大きくなってきているわけですけれども、テレビやマスメディアがいま非常に変化に晒されていますよね。テレビや新聞のビジネスモデルもちょっと危なくなってきているんじゃないかなと思って、代わりにネットが台頭して、また、こういうニコニコ動画みたいなサービスが出てきたり、Twitterみたいなものが台頭してきているわけですけれども。この辺りのメディア環境の変化はどう捉えていますか。急速ですよね、この3、4年くらい。
■TwitterやFacebookは革命のきっかけにすぎない!?
池上: じゃあ、あまり一般論をしてもしょうがないので、「アラブの春」の話をちょっとしようと思うんですけれども。「Twitterで革命が起きた」「Facebookで革命が起きた」というような言い方をされたりして、そういうふうに思っている方がいらっしゃると思うんです。現地を取材し、これまでのいきさつを見ると、そんなに簡単なものではない、というのがありますよね。
きっかけはたしかにTwitterやFacebookだったんですね。例えば、チュニジアにしてもエジプトにしても、みんながソーシャルメディアをやれているわけではないわけですよね。そういうインターネット環境がある人は実は非常に少なかった。
ところが、これまで何か不満があって、独裁者に対する反対運動をしようとしても、呼びかける手段はなかったわけです。ポスターなんて貼っていたら捕まるし、あるいはみんなに「こんなことがあるんだけど」って伝言ゲームをやってくのは、どこに当局への密告者がいるか分からない危険で、できなかったわけですよ。
津田: イランなんかも、反政府運動がTwitterでやられたって話がありましたけど、あのときも電話とか全部盗聴されていたらしいですよ。
■「アラブの春」におけるアル・ジャジーラの役割
: だから結局、イランは途中で潰されてしまいましたよね。ところがアラブにはアル・ジャジーラがあったんですね。カタールのテレビ局ですね。あれはアラブ全域に流していますから、イランはペルシャ語ですけど、それ以外はチュジニアにしてもエジプトにしてもリビアにしても、みんなアラビア語ですからね。アル・ジャジーラの放送を見てれば、何やっているか分かるわけですよ。
それでTwitterは当然、カタールのアル・ジャジーラの記者たちもチェックしていますから、TwitterあるいはFacebookで、「この日ここに集まろう」や、あるいは例えばカイロであれば、金曜日の集団礼拝の後「タハリール広場に集まろう」というメッセージがあるでしょ。それを読んだ一握りの若者たちが集まるわけですよ。
そうすると、アル・ジャジーラもそれをキャッチしていますから、取材に行くわけですよね。そしてそれが放送で出るわけですよね。そのときに最後に「なお来週金曜日も集団礼拝の後、タハリール広場に集まって集会が開かれます」って言えば、みんな見るんですよ。「おー、来週の金曜日そこに行けばいいんだ」。そこから大きく広まっていったという。
津田: なるほど。エジプトだと、ネットに繋がる携帯の所有率って3、40パーセントぐらいだっていう話もあって、デモに参加していた多くが、別にネットリテラシーが高かったわけではないけれども、一部のエリート層とか知識層とかで政府に不満を持っている人たちがソーシャルメディアを使って、そういう集まることを始めて、それにアル・ジャジーラっていうマスメディアがより情報を拡散させて、いろんな人が動き始めたっていうことなんでしょうね。
池上: ネット環境にない人も知って集まったということがありますね。イランの場合はTwitterで、相当程度の反政府運動が起きたんですが、その反政府運動をまたイランの人たちにきちんと知らせるメディアが存在しなかったから潰れていったんじゃないか。
津田: なるほど。じゃあ、ソーシャルメディアはソーシャルメディアだけで、情報だけで、ソーシャルメディアの発信する情報だけでは革命は起きなかったけれども、ソーシャルメディアにマスメディアの情報がミックスされたことによって大きなうねりになっていった。
池上: だと思うんですね。例えば、中国でも「ジャスミン革命」が飛び火をして、Twitterなどで「集まろう」ってやりましたよね。集まったのは、読んでいた一握りの若者たちばかりで、それを読んでいた当局の公安がその道路を予め封鎖してしまって、あるいは海外のメディアもそこに集まったけれども、全部排除されてしまって、多くの中国の人たちがそんなことがあったってことを知らないままになっているわけですね。だからこれはやっぱり革命にならなかったんだ、と。
津田: これは、だから一つ、ソーシャルメディアと、旧来のテレビみたいな多くの人に伝えるマスメディアが両方組み合わさった良い例でもあると思うんですけど。エジプトなんかだと。逆に言うと、テレビの今までのマスメディアの方法論というのは、そこであったことを伝えるってことですよね。要するに、アル・ジャジーラがアル・ジャジーラとして「政府を倒すためにデモを起こそう」って言い方はしないわけじゃないですか。
池上: その通りですね。意図に何があったかはともかく、表向きそういう言い方はしません。
津田: アル・ジャジーラだけでは「アラブの春」は起きなかったってことは、最初の発火点みたいなものは、誰かが「変えたい」と思ってデモを起こし、そしてそれが多くの人に伝わり始めたっていう情報環境の変化と、やっぱり歴史的に不満がずっと溜まっていたっていうことが、ああいう発火につながったってことなんですかね。
池上: もちろんそうだと思いますよ。いわゆる旧来のメディアについても、例えばチュニジアにしてもエジプトにしても国内のテレビ局はすべて徹底的に管理されていたわけですから、報道の自由はなかったわけですよね。
よそのカタールから、空から情報が降ってきたことによって、大きく広がっていった。ところが国内で、そういう情報管理を突き破る形で、TwitterやFacebookが運動を起こしていったっていう。これはやはり画期的なことですよね。
津田: またアル・ジャジーラはアル・ジャジーラで、自分たちがテレビで当然録画してきたものを編集して放送するだけじゃなくて、そのデモの会場に行ってそのデモで起きていることを、それをまたスマートフォンとかを使ってTwitterで発信して、それによってまた情報が拡散してっていうこともありましたね。
そういう意味で言うと、テレビもTwitterとかネットでも利用できるものは利用する形でやって、それで人々の心は動いていくっていうことだと思うんですけど。
池上: 新しいメディアと旧来のメディアが非常にうまい形でミックスしたことによって、大きく動いたのかなって思います。
津田: 今までもそういう反政府運動の気運みたいなものはあったし、何十年もあって、それが潰されてきて成就しなかった。でも、なんであんなに急にドミノ倒しのように「アラブの春」が起きたのかっていうのは、中東・アラブをずっとウォッチされている研究者の人とかも、すごく驚いているっていう方が多いですね。
池上: そうでしょうね。でも、それはやはり最初にきっかけになっていったのは、TwitterでありFacebookであったと思いますよね。
■SNSの普及で上がる情報統制コスト
津田: やはり、その尾を作っていったっていうのがネットの環境の変化なんでしょうね。
池上: その後、さらにそれを全体に広げる力がイランや中国には存在してなかったっていうことだと思うんです。
津田: 逆に言うと、あの非民主的な国であると、国家にとっては相当そのマスメディアっていうのを握ってコントロールして、情報統制をするということが、そういうデモとかに繋げない意味で非常に重要になっているし、ただ権力側にとっても権力を維持しているコスト、そういうTwitterとかFacebookが出てきたことによって上がっているってことなんですかね。
池上: それは一段とですよね。中国では、要するにインターネットをひたすら監視して、反政府的な書き込みがあったら、すぐに削除するという要員が、ちょっと何年か前には3万人って言われていましたけど、今とても3万人じゃ対応しきれないですよね。
津田: そうなんです。でも別に、中国政府には3万人いるわけじゃないので、どうやって検閲しているかというと、その書き込みとかをチェックするのを全部、民間の企業に委託しているんですよね。
いま僕は早稲田の大学院で教えています。そこに、中国にいたときに検閲企業で検閲をしていたという女の子がいるんですよ。
池上: ほお!
津田: その子がすごいのは、要するに、日本にとって有利な情報、中国にとって不利な情報みたいなものを全部プチプチ消していくわけですよね。消していくと、ある種メディアリテラシーが出てきていて、親日的な情報を全部削除するんですけど、それは内容を確認しなきゃいけないじゃないですか。親日的な記事をいっぱい見て、すごい親日になっちゃって、その子が、日本のアニメとかアイドルが大好きになっちゃって、それで日本に留学してきたっていう。
池上: 不思議!面白いね!
津田: それはやはり面白いなって。
池上: それは情報の力だよね。
津田: そうなんですよね。本当に普通にかわいい女の子なんです。でも、彼女はいま早稲田のジャーナリズムコースで勉強している。今の僕のジャーナリズムコースには、中国人留学生がすごいですよ。半分くらい中国人留学生で、だいたい卒業して帰って行くんですよね。
だから、日本で、例えば「Twitterでこんなことが起きている」「世界ではこんなネットによってジャーナリズムがこう変わっているんだ」みたいなことも含めて学んで、中国のメディアとか新聞とかテレビに帰って行くから、多分そういう子たちが10年後とか、どんどん情報発信してくようになると、けっこう中国とか日中関係も変わっていくんじゃないかなって思うんですよね。
池上: その可能性は十分あるよね。
■「オキュパイ・ウォール・ストリート」が蒔いた種
津田: そうなんです。だから、そういう絶対にやはり10年前や20年前だったら起きないようなことが起きているし、だから多分中国は中国でネットを統制しながらも、一緒にうまく付き合うやり方っていうのを今考えているんだろうなっていうのは思いますね。一方で、もう一つ、人が集まって世の中変わりつつある新しい社会運動だと、ニューヨークの・・・。
池上: オキュパイ・ウォール・ストリートですね。
津田: あの動きはどう見てらっしゃいますか?
池上: それこそアメリカの場合は、ネット環境がアラブよりもずっと広がっているし、多くの人が見ているから、テレビがわざわざ報道しなくても、あの呼びかけだけで大勢の人が集まったということはありますよね。
やはりアメリカは今、とりわけ前のブッシュ政権以降、とてつもない格差社会が広がっていて、それに対する皆の不満がずっと溜まっていたわけですよね。ところが、いわゆる既成メディアがなかなか報じてくれないという思いがあって。それが一挙に「あ、この手があったか」ということだと思いますけどね。
津田: だから、あのオキュパイ・ウォール・ストリートが面白いのは、ウェブサイトに行くと、「この方法論をみんなで共有して、どんどん世界中で広げていきましょうね」とか、それこそ池上さんのアル・ジャジーラの話みたいな感じで、「ここでやります」と。「次はこうです。こういう行動です」みたいなのが細かくできているんですね。デモみたいなものとか、自分たちの主張を実現していくための方法論というのが、ものすごい勢いで共有されていて。
池上: 例えば、あのジョージ・ソロス。とてつもない金を儲けて、その後でも「世界に民主主義を広げなければいけない」みたいなことをやっている彼は、旧東欧や旧ユーゴスラビアで、どの反政府運動、民主化運動に対して、背後からずいぶんいろんな支援をしている。例えば、ウクライナとかグルジアでのいわゆる反ロシア運動っていろいろあったでしょ。あのときに「こうやればいいんだよ」っていうのを、ずいぶんノウハウを教えているんだよね。
津田: なるほど。
池上: それが今まさに、「オキュパイ・ウォール・ストリート」のようになると、ネットでノウハウを教えるようになって、さらに拡大していったのかなと思いますよね。
津田: なるほど。ああいったデモの動き、例えばデモっていうと日本でも、3.11で原発が事故を起こして以降、脱原発を求めるデモなんていうのも、少しずつ目立つようになってきています。日本って、どうしてもデモに対するなんか抵抗感みたいなものがあって、なかなか起きなかったのが、今はけっこう起き始めていますけど。その辺りの変化っていうのは、日本にいても感じられます?
池上: そういう意味で言うと、本当に日本っておとなしくて、デモはほとんどないし、あっても本当に一握りの人だけでデモをするもんだから、たまたま通りかかった人が「変わった人がやっているなぁ」みたいなことになっていたのが、やはり原発の事故以来、「ごく普通の人たちが普通にデモするんだ」って、デモに対する違和感・偏見みたいなものを全然持たなくなってくると、これはやはり広がってくることがあるんですよね。
津田: だから、さっきのソーシャルメディアが世界を変えるのかっていう以前に、結局、「『オキュパイ・ウォール・ストリート』にしても、『アラブの春』にしても、海外の出来事だからじゃないか」とか「中国とか、ある種の社会主義や情報統制をしている非民主的な国だからこそ起きるわけで、日本じゃなんか全然変わらないんじゃないの?」っていう穿った意見とか、ちょっとネガティブな意見とかもあるとは思うんですけど。やはり海外と日本は状況が違いますかね?
池上: 例えば、チュニジアにしてもエジプトにしても、あれだけのこう閉塞感というのかな、日本も最近ずっと閉塞感があるんだけども、とにかくあの自由なことがまったく言えない、ちょっとなんか言っただけであっという間に捕まって、帰って来ない、死体になって戻ってくるみたいなことがあると、どうしようもなかったわけでしょ。
本当にマグマのように溜まっていて、それが一挙に噴き出したっていうことが一つ。もう一つは、人口論の観点から言うと、チュニジアやエジプトの辺りは非常に若い人が多いわけですね、
津田: ああ、なるほど。
池上: ものすごく若い人が多くて、その多くが失業しているわけですよね。やはり不満とかエネルギーっていうのは、すごいですよ。
津田: 今もう日本、平均寿命が40歳とか50歳とか高くなっていますからね。
池上: なっているでしょ。ヨーロッパでも、いわゆる先進ヨーロッパというのは、なかなかデモが起きないですよね。やはり高齢社会になってしまっていて、若い人の比率が非常に少ないと、なかなか大きな運動になりにくい、と。そういう点で言うと、日本も非常に同じなのかな、と。アメリカは今非常に若い人多いですから。言ってもアラブ世界と同じくらい若年者が多く、また失業者が多いから、同じような社会状況で、こうなったのかなっていう思いはありますけどね。
津田: 今ちらっと目に入ったコメントだと、「デモって言うと海外っていうイメージがある」とか、「日本だと格差っていうのはまだ少ないほうなんじゃないか」っていうコメントがあったんですけど。池上さんは世界のいろんな状況をチェックしていく中で、格差問題については、日本の格差って、海外と比較するとどうだという印象でしょうか?
池上: つまり、どこと比較するかっていう話。アメリカや中国と比較すりゃ日本は本当に格差ないですよ。アメリカや中国の格差社会って、とてつもないですから。それに比べれば日本に格差社会はない。あるいは、中東にしても開発途上国の現状を見て、日本に帰ると「あぁ、日本は本当に平等だな」って思いますけど、北欧辺りから比べると「やはり日本は格差社会なんだなぁ」というのがある。
あるいは、日本の中での歴史を見てくると格差がかなり広がってきたという動きはありますよね。どこから見て格差社会というのかで、ずいぶん違ってきますよね。
■池上彰が語る「日本のメディア」
津田: それで、どういう世界を目指して我々が政治選択を投票していくのかっていうのもあるとは思うんですけど。もう一つ、僕『伝える力』を読んでいて、すごい気になったので、伺いたかったんですけど、(本の)最初の方で誌面を割いて、「日本には『けしからん罪』がある」っていう話が書いてあるんですよね。
「けしからん罪」。村上ファンドの村上さんが逮捕されたときの問答も引いて、要するに言い方が問題だった、と。「けしからん罪」と「濡れ手に粟罪」という、本当にあんまり苦労もせず、儲けちゃうような人に対する嫉妬社会というか、そういうようなところがあるっていうのを、けっこう言い切る形で書かれていて。それが結構な分量、いろんな言葉を変えて書かれていた。
要するに、「日本は情報を伝え共感を呼ぶときに、日本なりの空気を読まないと伝わっていかないんじゃないか、それを考えてやることが重要なんです」っていうことが、『伝える力』の前半の結構重要なポイントだったと思うんです。ああいうふうに思うようになったきっかけとかは、いつぐらいからなのかなと思って。
池上: 例えば、ネットでいろんな若者たちが新しい企業を次々に立ち上げていったでしょ。ライブドアのようなものもあったときに、東京地検特捜部が、なんか「こういう濡れ手に粟は許せない」とか「額に汗した人たちがバカを見るような社会は許せない」と。「おいおい、それは東京地検が考えることじゃないよ。それは政治家が考えることだ」という思いがあったりした。
ああいう若者たちも、ずいぶんいろんな行き過ぎがあったかもしれないし、ライブドアの彼もふてぶてしい様子を見せたかもしれないけど。でも、それはそれで、ただそれだけで「けしからん」って言って「捕まえてやろう」みたいなことになっちゃうと、それは違うのかな、っていう思いがあって。そのときに日本の世の中っていうのは、「けしからん」というふうに思ってしまうのがあるのかな、という気がしますけどね。
■「学生時代、日本のジャーナリズムはおかしいと思った」
津田: 池上さんの本の中で、「けっこう子どもの頃は引っ込み思案だった」みたいな話が入っていたりとか。要するに日本では、やはり空気を読んで生活していかなきゃいけないっていうのって、同調圧力だったりもしますし、勝手な僕の想像なんですけど、池上さんは性格的に結構そういう同調圧力に対して「なにくそ!」みたいな強い思いがあるんじゃないかな、って勝手に予想しているんですけれども。
そうだとしたら、もし「なにくそ!」みたいな反骨精神という古い言葉で言えば、その反骨みたいなものが、折り合いをつけて今のような情報発信のスタイルに変わっていったのかな、っていう。
池上: それで言うと、つまり私も自分なりに学んでいったんだろうと思うんですよ。要するに、「なにくそ!」の反骨精神だけでやると潰されていくんだよね。だからと言って、ひたすら空気を読んでいるだけじゃ、世の中まったく変わらないし、空気を読みながらでも少しずつ意義申し立てをし、「ちょっとその考え方おかしいんじゃないの?」ということを、極めて戦術的に、戦略的とも言ってもいいかもしれないけど、それを考えていかないとダメかなという思いはありますよね。
津田: そういう考え方に変わったのはいつぐらいですかね?何歳くらいとか。何年前とか。
池上: いや、多分・・・。
津田: 自然と?
池上: ジャーナリズムを志した頃からでしょう。学生時代は学生時代で、ジャーナリズム、日本のジャーナリズムのあり方はおかしいなって思いがずいぶんあって。そこは、なんとか変えなきゃいけないんじゃないのという思いもあって。
津田: その頃、(ジャーナリズムの)おかしさって一番どこにありましたか?
池上: なんだろうね。どの新聞読んでも同じことが書いてあったりね。テレビも、なんとなく大本営発表みたいなイメージがあって、なんかおかしいんじゃないのって。「誰かが、ああしろ、こうしろと命令しているんじゃないの」みたいなね。
津田: ある意味で言うと、そんな池上さんが、言葉はちょっと悪いかもしれないですけど、大本営と言えば大本営に一番近いであろうNHK、公共放送ですよね。国民からお金を集める公共放送の中に入って、ジャーナリストとして、記者として非常に活躍され始めて、NHKに入る前と入った後で「あ、こんなところだったのか」みたいなものって何か・・・。
池上: それはありますよねぇ。意外に自由な会社なんだなっていうイメージは確かにあったんですよ。つまり私が就職活動しているとき、そもそも民放ってコネがないと受けさせてくれなかった。
津田: ああ、そうなんですね。
池上: 私もだから、「受けたいな」とか「入りたいな」と思うテレビ局がありました。それで、こっそり採用試験をやると聞いていたんで、だから「入れてくれ」じゃなくて「受けさせてくれ」「試験受けさせてくれ」って頼みに行ったんですよ。どこの放送局とは言いませんけども、赤坂に行ったんですよ。
津田: (笑い)
池上: 赤坂に行って、「なんとか受けさせてください」って言ったら、「社員の推薦のない方は受けさせるわけにはいきません」と。
津田: なるほど。
池上: そのときNHKは誰でも受けられたんですよ。
■専門性をもった記者が養成されていない!?
津田: じゃあ一番オープンで
池上: 非常にオープンだったっていうことがありますよね。それから入ってみると、本当に自由で、何を言おうが何の問題もない。ただ、要するに記者としては裏付けが取れないものは絶対に出すな、と。本当に裏付けが取れたもの、本当かどうかを二重三重にチェックをして確実なものだけを出せと、徹底的に叩き込まれました。
そうすると確かに見ている人にしてみれば「なんでここで止めちゃうの?ここから先はなんで出ないわけ?民放じゃやっているのに、ここで止めるってことは誰かに言われているんだろう」みたいな。
津田: ああ、なんか圧力があるんだろうと。
池上: うん、圧力があるんだろう、みたいな。そんなふうに思われちゃうんだなぁというのは発見でした。
津田: そういうファクトチェックみたいなものが、おそらくNHKの記者とか報道部は人数もすごく多いですから、多分そこに細かく時間をやっているっていうところがあったと思うんです。
一方で、先週、実はテレビ朝日と朝日新聞のシンポジウムで池上さんともご一緒した時に出た話題でもあるんですけど。やはり原発事故とか3.11、特に原発事故の伝え方に関していうと、メディア側もあんなこと初めてだったし、全然分からなかったわけですよね。
分からないときに、でも分からないけれども、とりあえず裏が取れている情報だけっていうと、結局のところ政府の公式の発表しかなくて、それに対しての知見もテレビ側にもないので、でも分かったように報道しなければいけないから報道する、と。ただ、分からないことは、自分たちも分からないんだっていう伝え方みたいなものが、必要なんじゃないかなって話になったんです。それをもうちょっと聞きたいと思うんですが。
池上: 原発事故がありました。それまでは、とにかく我々は分かったことだけをやれということになると、分からない人が非常に多くて。官房長官が発表したことは事実でしょ。官房長官が発表した内容が事実かどうかはともかく、「官房長官がこういう発表をしました」ってことは事実ですよね。それを伝えますよね。「東京電力がこう言いました」「原子力安全保安院が言いました」っていうことを事実として伝えるけど、そこから先どうしたらいいかっていうのが、多くの人たちにそういう専門知識がなかったでしょ。NHKの場合は、ひたすら原子力発電所の事故が起きたときのための要員をずっと養成し続けてきたわけですよね。
津田: その一人が水野(倫之)解説委員でもあるわけですよね。
池上: だから、過去に私が現役の頃にも、私の先輩にも、あるいは私の後輩にも、原子力発電所の問題だけをひたすら取り組んできた記者がいるわけですよ。
津田: その報道部の中にその専門記者がいるんですね。
池上: ええ。社会部の。その後は科学文化部になったんですが、ひたすら原発の専門記者が一人、それからそれを支えるサブのような人がもう一人みたいな形でいて、徹底的に調べて何かあったらすぐに伝えられるようになっていた。
でも幸いなことに事故がなかったもんですから、その人たちは結局活躍の場がないまま卒業していったわけですね。今回たまたま水野記者がそこにぶちあたったということですよ。
津田: なるほど。
池上: 彼はよく分かっているわけですから、いろんな報告を聞いただけで「これはメルトダウンの可能性があります」と言っていますよね。
津田: そうですよね。早い段階で言っていますね。
池上: 早い段階で言っていますよね。それは専門の知識があったから、今の発表を聞けばこれはメルトダウンだろうと言えたわけですよね。ところが残念なことに、他の民放各局には、いわゆる専門性のある記者っていうのは養成されていなかったわけですよね。そうすると記者会見が終わってスタジオに戻ってきたときに、よく分からないし、何を言っていいか分からなくなるわけですね。
でも今になって見れば、「分からないことは分からない」って言えばいいと思うんですけど、うっかりしたことを言ってパニックになっちゃいけないという思いがあって、結局何も言えなかったんだろう、と。(記者の)専門性に非常に大きな問題があったんだと私は思いますね。
津田: そうでしょうね。でも、そういう中でも、例えばTwitterとかFacebookだと事故をきっかけにどんどん科学者の人とかが、いろいろな情報発信を始めていて、そこから拾い上げられる情報とか、そういう人がスタジオに呼ばれて解説をするみたいなところで、ちょっとメディアが足踏みしていたというか、遅かったのも事実かなと思いますけど。なぜテレビとか新聞は、そういうのを拾い上げるのが遅くなるんでしょう?
池上: 例えば原子力について、「どれだけの知識を持った人がどこにどれだけいる」という情報を、そもそも持っていなかったと思いますよ。つまり、メディアも「原子力発電所は安全だ」となんとなく思っていたから、事故があった時には誰を呼べばいいのかとか、どこにどんな人がいるのかとか。
京都大学の小出(裕章・京大助教)さんのような方は有名でしたから、そういう方は分かるわけですけども、それ以外に「一体どういう人がいるのか?」、まして「放射線の話になったら誰に聞けばいいのか」なんていう情報を、そもそも持っていなかったんですよ。
それがTwitterなりネットなりで出てきて、それを見て「こんな人がいるのか。じゃあ呼ぼうか」というように、既成のメディアの方がネットの情報を後から追いかけていったという部分はあると思うんですよ。
津田: そういうことも、今後はマスメディアのほうはいち早くキャッチして取り込んでいかないと、未来はないということでしょうね。
池上: そうですね。あと、どこの放送局とは言いませんが、ある民放のプロデューサーと話をしていて・・・。(そのプロデューサーは)「もし、原発の事故があったらどうしようかと思い、(話を聞ける専門家を)リストアップしていた」と。(予め)連絡をとっておいて、「いざという時はよろしくお願いします」とやっていたんだそうです。
そうしたら、事故が起きた途端に、そういう(専門家の)人たちは、みんな官邸に連れて行かれて、危機管理の地下の部屋に入れられて・・・。あそこは携帯がつながりませんから。まったく連絡が取れなくなっちゃったって。
津田: なるほど。
池上: そういう専門家がゴッソリいなくなって、連絡が付かなくなったっていう話を後から聞きましたけどもね。
津田: なるほど。その話も興味深いですけども。そんな話をしていると、もう40分も経過してしまって・・・。今日は、「あんまりコメントを見てくれないよね」という話もあるので、コメントの方もちょっとディスカッションをしていきたいなと思うのですが。
・池上彰×津田大介 in ニコファーレ 全文(後編)
http://news.nicovideo.jp/watch/nw215051
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv82788026?po=news&ref=news#0:01:27
(書き起こし:ハギワラマサヒト、武田敦子、吉川慧、内田智隆、小浦知佳、湯浅拓、編集:山下真史)
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