【映画クロスレビュー】20年ぶりの続編は今の時代の閉塞感にひりつく『T2 トレインスポッティング』

T2

『T2 トレインスポッティング』

【ストーリー】
かつて仲間たちを裏切って大金を持ち逃げしたマーク・レントンが、20年ぶりにオランダからスコットランドに戻ってくる。そこでは、パブを経営しながら売春や恐喝で荒稼ぎするシック・ボーイや家族に愛想を尽かされたスパッド、刑務所に服役中のベグビーら、当時の仲間たちが未だに悲惨な人生を送り続けていた。
モノ分かりの良い大人になれずに荒んだ人生を疾走する彼らの再会、そして彼らが選ぶ未来とは……。

【スタッフ】
監督:ダニー・ボイル
原作:アービン・ウェルシュ

【キャスト】
レントン:ユアン・マクレガー
スパッド:ユエン・ブレムナー
サイモン/シック・ボーイ:ジョニー・リー・ミラー
ベグビー:ロバート・カーライル
ダイアン:ケリー・マクドナルド
ベロニカ:アンジェラ・ネディヤルコーバ

現在公開中
http://www.t2trainspotting.jp/

640

成長しなさ、青臭さがツボ

『トレイン・スポッティング』20年ぶりの新作! ということで、前作のハードルを越えるには、続編を作るのはある意味、あの完全な着地してからの続編『トイ・ストーリー4』より難しいんじゃないかと思う今日この頃。
良い意味で何も成長してない! 良い意味で青臭い1本を観させていただきました。

監督のダニー・ボイルはもちろん、ユアン・マクレガー含むキャスト陣が再集結ってこれも奇跡的なことだと思うのですが、この4人じゃなければ出せない空気感は最高。40代後半となったのにいまだに本当のところは何考えてるか分からないレントン、落ちぶれたけど相変わらず甘いハンサムなシック・ボーイ、見た目ジジイなのに激コワなベグビー……地元の恐い先輩って年老いてもなお恐いみたいなリアリティありましたね。そして、スパッド。本作の一番のキーパーソーンであり、良心ではないでしょうか。

成長しないメンツの中で誰が一歩抜き出せるのか? 前作の90分の勢いはやや失速していますが、音楽の使い方、ロケーション、ファッション、どれをとってもシビレます。ちなみに個人的には『トレイン・スポッティング』を鑑賞してからの続編突入をオススメします。

(20年前:埼玉のダイアン→現在:江東区のぽっちゃりダイアン)

鑑賞後は瓶ビールバカ飲み必至!

当時の『トレイン・スポッティング』の影響力って本当にすごくて……と若い映画ファンに語り始めると、一気に老害扱いされそうな当方アラフォー。老害の“老”とは年齢関係なく、昔を懐かしむあまりに現在を見失っている人のことだなと思うのです。
と、リアルタイム渋谷のシネマライズで観た者としては、並々ならぬ気持ちで『T2 トレインスポッティング』を鑑賞しました。

そしたらビックリ、劇中の中でもまさに老害……までとはいかないけど、思い出語りおじさんと化したレントンとシック・ボーイの姿が! まるで観る前の俺の気持ちが見透かされた様な展開に涙。20年経ってもダニー・ボイルの手のひらに転がされてる的な! 映画全体としてはスッキリシニカルに終わるので、一瞬思ったよりあっさりだったなと思いましたが、だから良い、だからトレスポなんだと。鑑賞後はできるだけきったねえパブを探して瓶ビール飲みまくりました。

(20年前:杉並区のシック・ボーイ→現在:渋谷区の働くシック・ボーイ)

オリジナルよりも閉塞感はアップ

relax!!! 20年ぶりの続編最高でした!
オリジナル作品と同じロケーションのシーンをふんだんにとりいれつつ、あの音楽で終わるこのかっこよさ。
みんな40代後半になり“ワル”度はかなり減った感じがしますが、よく考えると本当に悪い、後戻りできない感は上かも。若者だけではなく、中年も強く感じている今の時代の閉塞感。行き詰まり感を見事にポップなエンターテイメントにしてくれていると思います。
暗証番号のシーンで腹抱えて笑いました。

(20年前:九州のスパッド→現在:目黒区の健康的スパッド)

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 【映画クロスレビュー】20年ぶりの続編は今の時代の閉塞感にひりつく『T2 トレインスポッティング』

藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。