イノベーションを起こすクレイジーな成功者たちは何の本を読んできたのか?

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イノベーションを起こすクレイジーな成功者たちは何の本を読んできたのか?

仕事柄、経営者に取材することは少なくない。その中で影響を受けた本を聞くことも多いのだが、確かに「日本の経営者は歴史小説が好き」という定説は頷ける部分がある。もし、もう一つジャンルを挙げるならば、松下幸之助といった日本の名経営者たちの本である。

しかし、この傾向は必ずしも海外には当てはまらない。

『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』(SBクリエイティブ刊)の著者であり、『Forbes JAPAN』副編集長兼Web編集長を務める谷本有香さんは、イノベーションを起こすようなクレイジーな経営者たちはもっと未来を見ていると言う。

3000人以上のVIPに会い、インタビューを行ってきた谷本さんだからこそ知っている、「トップオブザトップ」の素顔と考え方。それは成功者を目指す人にとって決して真似できないものではない。ただし、根底からマインドを変える必要はあるかもしれない。

では、「トップオブザトップ」のマインドとは…? お話をうかがった。

■日本の経営者と海外の経営者、何が違うのか?

――谷本さんは国内外問わずさまざまな人にお話をうかがっていますが、やはり日本人の気質は独特だと思いますか?

谷本:リーダーにしぼって話すと、日本のリーダーは独特ですね。今でこそ起業家やスタートアップの経営者と話をする機会は多くなりましたが、それまでは東証一部上場企業の経営者にお話をうかがうことがメインだったんです。

彼らはいわゆる「サラリーマン社長」というような方が少なくない。それは、自分の言葉を持っておらず、事前に送っている質問事項にないことを投げると、会話が止まってしまう。もしくは、答えにならずに自分が話したいことだけを話す方向に持っていくということにもあらわれていると思うんです。

国際的なカンファレンスで日本人が議論に加わっても、筋書きにない質問をされると途端に話せなくなってしまうことは何回も目の当たりにしてきました。一方で海外の経営者はどんな質問が飛んでこようが、個人の考えや未来のビジョンをどんどん話していきますね。

――確かに自分の言葉で語れる人は面白いし、何度もお話をうかがいたくなりますね。

谷本:海外のトップリーダーたちと比べると、日本人経営者には、まだまだ新しい価値を生みだす能力がずば抜けて高い人が少ないように思いますね。

これは大きな差だなと思うことがあって、経営者の方々に心に残っている本を聞くじゃないですか。日本の経営者は歴史小説を挙げる人が多いんです。『三国志』とか司馬遼太郎さんの作品ですね。一方で海外の経営者はSF小説が多かったりするんですよ。

つまり日本では過去にあったことからヒントを見つけて、ソリューションに変えていくというやり方が好まれるんです。でも、海外の経営者はまだ見ぬ、解がない世界に課題を解くヒントを見つけるわけですね。

――それはすごく面白い差ですよね。でも、今の日本の若手起業家にもかなり変わった考え方を持っている人はできているのではないですか?

谷本:これは一人のインタビュアーとして思うことですが、優秀ではあるけれど、まだ枠から外れていない感じは受けますね。

トップリーダーの中のさらにトップ、私は「トップオブザトップ」と呼んでいるのですが、彼らは必ずしも最も頭が良くて、一番仕事ができるというわけでもありません。でも、確実に言えるのはかなりクレイジーなんです。

そのクレイジーさをいかに失わないかが、トップリーダーの中のさらにトップにいける一つの要因だと思うんですね。

彼らに「小さな頃はどういうお子さんだったのですか?」と聞いて深堀りしていくと、だいたい子どもの頃から突飛だったというエピソードが出てくる(笑)。

――日本だと今は炎上リスクから、クレイジーさを取り締まるような方向に走っている気がします。企業としても炎上は避けたいでしょうし。

谷本:炎上する発言には、何かしらの悪意が含まれていることが多いように思います。

日本電産創業者の永守重信さんは「大げさなことを言ってそれを現実にするのが経営者の仕事だ」と言っていました。夢のあるホラは受け入れられるけれど、悪意のあるホラは矛盾が生まれてツッコミを受ける。

――確かに永守さん、ユニクロの柳井正さん、ソフトバンクの孫正義さんの「大ボラ3兄弟」は全員言ったことを現実にしてくれるんじゃないかという期待が持てますよね。

谷本:まさに彼らもそれが仕事であるとおっしゃっています。ただ、日本はまだホラ吹きが少ないかなあと。欧米の経営者を見ると、そういう意味においてはホラ吹きばかりですよ。

――ホラ吹きとは違いますけど、スターバックスのハワード・シュルツさんが「マクドナルドのコーヒーは美味しいよね」と言ったという本書のエピソードは面白かったです。これはまさしく本音ですね。

谷本:「あれは美味しいよね」って普通に言っていて、私も笑ってしまいました(笑)

――スターバックス内では問題になるのかもしれませんが、そういうことが言えるくらい度量が深いからスタバを使いたくなる部分もあると思います。

谷本:普通の会話の中でおっしゃっていたので、それが活字になるとは思っていなかったのかもしれません。でも、度量の深さは感じましたし、そこにメディアの人間は感化されて、何度も取材をしたくなってしまうんですよね。

■トランプ大統領は本当に嫌われ者なのか?

――今のトップリーダーの中で、最も世界を賑わせている存在といえばドナルド・トランプ米大統領です。もし彼にインタビューができるならば、どんなことを聞きたいですか?

谷本:私は経済に興味があるので、まずは経済政策ですね。あとはどうしても確かめたいことがあって、トランプ大統領の本当の姿です。

私が見ているトランプ大統領の人物像って、メインストリームメディアを通じてのトランプなので、おそらく相当なバイアスがかかって伝わってきているはずなんです。メインストリームのメディアはトランプと敵対しているから。

そのバイアスをはぎ取ったときに、トランプ大統領とはどんな人に見えるのか。そうしたメディアのバイアスがかかっていない私が報じてみるとどうなるのか見てみたいですね。

――実際に会談をするとすごく謙虚だという話もありますよね。

谷本:そうなんですよね。いっさいバイアスなしでお会いして、真意を聞いてみたいですね。いつかは取材したい人の一人です。

――さまざまなトップリーダーにお会いしてきた谷本さんから見て、トランプ大統領はどんな評価なんですか?

谷本:彼についてはまったく評価できません。それはやはりバイアスがかかりすぎているから。答えられないんです。

ただ、今までメディアを通した評価が著しく悪い人でも、実際にお会いしてみると、すごく良いリーダーだと感じるというケースがあって、その人たちと似ている気がするんですよね。

例えば、一部政策で批判されていたことのあった亀井静香さんであるとか、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のイメージに近いです。そういう例がいくつかあるので、お会いして確かめたい。ただ、本当に無能で嫌われている人は大統領のようなリーダーには選ばれないと思いますね。

――本書は「自然体」が大きなテーマの一つですが、彼は自然体なのでしょうか。

谷本:それもお会いしてみないと分からないです。話をすることで分かることですから。

――最後にご著書のお話をうかがいたいのですが、『何もしなくても人がついてくるリーダーの習慣』では成功者の習慣をテーマにされています。このテーマ設定のポイントについて教えて下さい。

谷本:仕事柄、トップリーダーの方々にお話をうかがう機会が多いのですが、周囲から「あの人って、実際はどんな人なの?」と聞かれることがあるんですね。

私自身、メディアを通して映し出されるリーダーの方々は本当の姿ではないことが多いと思っていて、その本質は控室トークや雑談であらわれるように感じています。

トップオブザトップの方々は、根底に幼少時代の経験やコンプレックス、私憤のようなものを抱いていて、それを原動力にしてトップまで登り詰めていったということが多いんです。でも、普通のインタビューではあまり出してくれない部分でもあります。

そういうところにトップリーダーたちの成功のマインドがあるのだから、これからトップを目指す人たちにも伝えたいと思ったのが、テーマ設定のポイントです。

――この本を読むと、理想的なリーダー像――外見内面ともに仕事がデキて、部下たちを牽引するようなリーダー像とは離れている気がします。

谷本:そうなんですよ。トップリーダーの下にいる人たちのほうが、リーダー然していることもよくあります。

トップオブザトップの方々は一人でふらっと電車で取材場所に来ちゃったり、話している間にも興味を持ったら「それってどういう意味?」と聞いて、「教えてくれてありがとう」と感謝してくれるとか、すごく人間らしいんですよ。いかにもなリーダーらしい振る舞いって実はあまりしていないんです。

自然体を見せること、自然体で生きることが成功の秘訣であるならば、それを教えてあげることによって、トップオブザトップを目指す人たちの助けになるかもしれない。そういう想いで書いたんです。

取材場所に家族を連れてくる方もいますしね。

――私もある海外のトップアスリートの方にインタビューを行ったときに、私たちが話をしている後ろで奥さんが取材の様子を見ていたり、スマートフォンを見ていたり…ということがありました。

谷本:それ、結構ありますよね(笑)。意外とそのトップをマネジメントしているのは奥さんだったりして。トップであればあるほど、分け隔てなく人付き合いしますよ。

――では、このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

谷本:世界のトップリーダーたちのクレイジーさなり、考えていることなりを見聞きすると、「あそこに到達するのは難しい」と思うかもしれません。だけど、実際は手の届くところにいます。

私がお会いしてきたトップリーダーたちは、一般のビジネス書で書かれているような「リーダー然」としたリーダーはいなくて、自然体だからこそ、それぞれ尖った魅力を発している方々ばかりです。

「こうならなきゃいけない」というのではなく、自分の可能性を追い求めることの延長線上に自分なりに輝けるリーダー像があるはずですから、まずは自分らしさや、自分のあり方に向かい合うきっかけとしてこの本を読んでもらえれば嬉しいですね。

(了)

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