Lapsley 『Long Way Home』Interview

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昨年、アルバム『Long Way Home』でデビューを果たしたイギリスのシンガーソングライター、ラプスリーことホリー・ラプスリー・フレッチャー。ジェイムス・ブレイクやアデルが引き合いに出される彼女の音楽世界は、その後、DJコッツェが手掛けた「Operator」のディスコ・リミックスやカン国際映画祭で審査員賞を受賞した映画『アメリカン・ハニー』のサウンドトラックに提供した「8896」を通じて、静かな、そして確かな広がりを見せている。そんな前途ある20歳のシンガーソングライターは何を語ってくれたのか?

――ホリーは、スポーツとして、ヨットに乗っていたり、勉強も優秀で、活動的な学校生活を送っていたそうですね。

ラプスリー「そうです。だから、作る音楽と私のバックグラウンドがリンクしないとか、私の性格から作る音楽が想像出来ないとも言われるんです(笑)。まぁ、でも、どう言われようとも、私は気にせず、自分の内面から出てくるものをそのまま曲にするだけなんですけどね」

――いつから自分で曲を作るようになったんですか?

ラプスリー「楽器は5歳から習うようになって、曲作りをするようになったのは13、14歳から。そして、4年前からレコーディングをするようになったんですけど、その時に(音楽制作ソフト)GARAGE BANDを使うようになったことで、自然とエレクトロニック・ミュージックの要素が曲に加わるようになって。ただし、エレクトロニック・ミュージックそのものを作ろうと思っているわけではなく、もともとのベースであるクラシックミュージックから私が好むヘヴィーな音楽まで、試行錯誤しながら、その中間の音楽を作ろうとしていていますね」

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――ホリーは、シンガーであり、ソングライター、トラックメイカーでもありますが、ご自身ではどのパートに比重が置かれていると思いますか。

ラプスリー「ソングライティングですね。ピアノを弾きながら歌うことから始めて、そこからどんどん曲を構築していくのが私の曲作りのスタイルなんですけど、構築していくとはいっても、私の曲には入っているのは必要最小限の音だけ。だから、その一つ一つの音を吟味して、さらにその音が一つ一つ際立つような曲作りを意識していますね」

――無駄なものが削ぎ落とされた楽曲から音楽に対するホリーなストリックな姿勢がうかがえるように思います。

ラプスリー「ストイックというより、私は曲に音を詰め込むことで空間を息苦しいものにしたくないんです。曲が深く呼吸出来るような、そんな空間をイメージしていますね」

――エレクトロニックミュージックの要素を交えたミニマルな楽曲に対して、リリックでは痛みのある世界を描いていますよね。

ラプスリー「今回はたまたま自分が経験したネガティヴな恋愛経験がベースになって、痛みや悲しみが表現されているんですけど、私は自分が置かれた状況やその時の感情を正直にそのまま歌いたいんです。だから、その状況の変化に応じて、恋愛のポジティヴな面を描くかもしれないし、はたまた、政治や女性の権利について歌うかもしれない。それを変化と取るか、それとも普遍的な表現と解釈するかは聴く人それぞれだとは思いますが、私が私であることには変わらないと思いますね」

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――そして、ベッドルームで全てが簡潔していた曲作りもアルバムではスタジオでレコーディングするようになって、どのように変わりましたか?

ラプスリー「大きいスタジオに入ってレコーディングすることで、自宅で作業していた時と比べて、曲を形にするうえで、選択肢が増えて、そのことが作品の成長に繋がったと思います。その際、今まで触ったことがない機材の使い方を覚えたり、以前と比べて、時間や手間はかかったんですけど、覚えるのはそこまで難しくなかったですし、ベッドルームとスタジオでは音の響き方も違うので、その違いも自分なりに消化して、スタジオならではの響きも作品に反映させることが出来たと思います」

――ホリーがラプスリーとしてアーティストデビューするにあたって、大学進学を選ぶか、音楽家を選ぶかという葛藤があったとうかがっていますが、どのような思いで音楽家の道を選んだんでしょう?

ラプスリー「以前から曲は作っていたにせよ、せっかく学校の勉強を真面目にやってきたのに、全く活動経験がないところからいきなり音楽の世界に足を踏み入れることに対して、私の両親は快く思っていませんでした。でも、大学に戻ろうと思ったら、いつでも戻れますし、今では両親も音楽の世界での活動は一つの勉強、人生経験だと理解してくれるようになりました。日本もイギリスも変わらないと思いますが、今は音楽ビジネスが複雑で、音楽を生業とするのはなかなか難しい状況であるとは思うんですけど、幸いなことに私の場合は、色んなレーベルやマネージメントから話が来て、契約を結べるという前提で、音楽の道を選ぶことが出来たんですね。それ以前はまさか自分が音楽家になることは夢にも思っていなかったんです。でも、こうして音楽活動するようになった今は、自分の作品制作やライヴだけでなく、人に曲を書いてみたいと思っていますし、映画の音楽を手掛けたりと、やりたいことが膨らみつつあります。そして、ゆくゆくはロンドンに家を買いたいですね(笑)。とはいっても、ロンドンは家がびっくりするくらい高いので、そのためには頑張って貯金し続けなきゃって思っています」

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photo Shuya Nakano
interview & text Yu Onoda
edit Ryoko Kuwahara

Lapsley / Long Way Home (jake-sya)(BGJ-5010)

Lapsley
『Long Way Home』
※ボーナストラック4曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付

<トラックリスト>
1. Heartless
2. Hurt Me
3. Falling Short
4. Cliff
5. Operator (He doesn’t call me)
6. Painter
7. Tell me the truth
8. Station
9. Love Is Blind
10. Silverlake
11. Leap
12. Seven Months
13. Brownlow ※
14. 8896 ※
15. Dancing ※
16. Burn ※
※日本盤ボーナストラック

Lapsley
数々のレーベルからの争奪戦の末、アデルやヴァンパイア・ウィークエンドを擁する<XLレコーディングス>と契約した19歳の新星シンガー・ソン グライター、ラプスリー。BBCが毎年選出するその年期待の新人アーティスト・ランキング<Sound Of 2015>にもノミネートされるなど早くから話題となり、ライブはソールドアウトする会場が続出。ネクスト・アデルとも言われるなどブレイクが間違いないアーティストとして早くから注目を集めた。2016年3月にデビュー・アルバム『ロング・ウェイ・ホーム』をリリース。4月にはHostess Club Presents Sunday Specialで初来日公演を行った。7月にはフジロックフェスティバル’16で2度目の来日を果たした。

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