戦闘機国産化には大きなメリット
政府は20日午前、航空自衛隊の次期戦闘機(FX)選定で老朽化した『F-4EJファントム』の後継機として、『F-35ライトニングⅡ』を採用することを決定した。中露などの周辺諸国が相次いで第5世代戦闘機の採用を急いでいるため、高性能な『F-35』を採用して戦力不足を避けることが第一の狙いだ。加えて、米軍との相互運用が容易なことも『F-35』を採用する要因となった。
高性能機を採用した代償として、購入費がかさむことや、情報開示部分が少なく国内の防衛産業にとってはあまり有利とならないことが挙げられる。また『MSN産経ニュース』によると、11月29日付の米国防総省の内部資料『F-35の(開発と生産の)同時遂行に関する簡易報告書』で、テストパイロットが「設計の安定性で信頼に欠ける」と結論し、「調達・生産計画の真剣な再考」を促しているようだ。
「F35 空対空ミサイルとステルス性能に疑問 米国防総省内部資料」2011年12月15日『MSN産経ニュース』
>http://sankei.jp.msn.com/world/news/111215/amr11121520070013-n1.htm
実戦配備はさらに遅れる可能性がある。防衛大臣には、12月7日の国会では答弁を控えた『F-35』の可能性と懸案事項について、しっかりと説明をしてもらいたい。
FX選定は問題を残しながらも結論が出た。しかし後継機を模索していたのは『F-4』だけではない。防衛省内では三菱重工業が生産している『F-2』戦闘機の後継機開発計画を既に進めており、そのために開発中の実証機が『心神』(正式名称:先進技術実証機,Advanced Technological Demonstrator-X,ATD-X)である。開発総額は394億円で、2016年度頃に初飛行を予定していると言われる。戦闘機の国産化は、『F-2』開発のときから反対論も数多くあった。理由としては、国産の兵器開発能力に十分な信頼性がないことや、少数の生産に留まるため価格面で不利なことが挙げられる。しかし、それを補って余りある効果が国産にはあるというデータがある。平成22年8月25日付の防衛省資料『将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン』の中で、「国産には次にかかげる意義あり」として、『F-2』開発生産にあたり以下のような効果を挙げている。
自動車産業と航空産業の波及効果として、産業波及効果がそれぞれ872兆円と12兆円、技術波及効果がそれぞれ34兆円と103兆円あったとしている。また、新技術は民間の他の分野に応用されている。主な技術では、レーダーがETCや車載用衝突防止レーダーに、フライ・バイ・ワイヤはドライブ・バイ・ワイアに、チタンボルトは骨折時の補強として医療現場に、炭素繊維複合材は航空機や自動車のボディーにそれぞれ応用されている。
では『ATD-X』の場合はどのような効果があるのだろうか。同資料内で第6世代戦闘機の能力として、カウンターステルス、情報・知能化、瞬間撃破力、外部センサー連携が挙げられている。このことから、センサー強化によってさらなる自動車事故の防止、知能化によって介護・人型ロボットの進化などが期待できる。特に、後者は高齢化が進むと予想される将来において非常に有用な技術となる可能性がある。実際に生産されれば、さらに多くの効果があるだろう。
平成22年度から“次世代エンジン主要構成要素の研究”として、『F-2』開発時のネックであったエンジンの開発も開始されている。防空だけではなく国民の生活を向上させる戦闘機完全国産化の夢をぜひ実現してほしい。
「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」 平成22年8月25日 防衛省
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/08/25a_02.pdf
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1991年11月19日生まれ。主に政治分野の出来事とそれについて自分が思ったことを記事にしていこうと思います。より興味がある分野は経済と国防です。何卒よろしくお願いします。
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