アメリカの病院は純粋な利潤追求企業です

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今回はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

アメリカの病院は純粋な利潤追求企業です

日本ではTPP導入で医療が農業が……と喧(かまびす)しいようですが、アメリカは例によってニュースではTPPのTの字も流れてません(笑)。どっか探せばあるのでしょうが! 日本は相変わらず何時もの一人上手状態ですかね。
さて、表題のような話、何処かで聞かれたり読まれたりした方もいらっしゃると思いますが、最近、身近に起きたあることでそれを痛感することがあったので、記録用に書いておくことにしました。

実は一月程前に、娘が友人の車に乗って登校途中、具合が悪くなって近くにある病院のER(エマージェンシールーム)を使うというようなことが起きました。まあ、そこら辺が女子高生というか子ども同士の勝手気ままな判断で、親としても緊急と本人たちが判断したのなら文句も言えないのですが、そこでは取り敢えず心電図をとって慌てて家からやってきた私とそこのドクターが取り留めもない話をして、結局は“過呼吸症候群”という感じで話はついたのです。しかし、二週間ほどして請求書を見てビックリ!
何と、ベッドに座って心電図をとっただけだったのですが、請求金額は驚きの1800ドル! 本当に眼を丸くしてしまいました。

体調に関すること、更には子どもの健康に関連した彼ら自身の自発的な行為であったため、彼らにその驚きを伝えるのも差支えがあります。そこで、嫁さんと二人でガックリと落ち込みながら、「俺たち保険入ってるのにこの手のことはカバーされてないのかな?」ということで、心電図一枚でちょっと暗い気持ちになっていました。
さて、これに対してどういう行動を起こすべきかということですが、アメリカでは通常この“病院側からの請求”というのをまずは受診者側に手紙で伝えてきます。予定されている歯の治療なんかでもそうです。これは全く“病院側の”言い分ですので、保険会社がそれに対してどう支払いをするかというのは更にこれとは別の次のステップがあるのです。ここらあたりは日本でも保険の請求者(通常病院側)と保険審査会との関係に似てます。しかし、アメリカの場合は保険会社がこれをしてくれないと、恐ろしいことに一般には個人で病院に交渉するという手しかないのです。ここが国民皆保険との違いです。
このシステムのため、多くの人が医療費で容易に破産をします。メディケイドという貧困者用の保険もあるのですが、今日のブログでは長くなるので話しません(あくまで無保険という多くのアメリカ人の実態に基づいて今日の話を進めます)。実際にその手の話は“掃いて捨てるほど”あって、病院側も、患者さんが資産を売り払って、それでも「もうこれ以上は払えない」というような患者さんなどとは適当なところで手を打ち、それ以上は敢えて追求しないというところに落ちがつくことが事実上多いようです。

これにまつわるブラック・ジョーク的なカード会社のコマーシャルも昔ありました。エマージェンシールームに運び込まれた後、治療開始直前に患者のカードをスワイプして、青ランプが点くのを患者も医者も皆、固唾を飲んで見守り、それが青に変わった瞬間、患者もまた意識不明状態に戻るというものでしたが、これがアメリカでは全くジョークではありません。
国家にも、支えきれる限界が当然あるとはいえ、適当なところでほどほどに手を打つ何らかのシステムを再構築しない限り、(医療に関しては)TPPをそのまま受け入れるということは、今書いたような悲惨な世界を患者さんの治療の中に持ち込むリスクが高いのではないかと考えるのですが。

ちなみに、治療費請求の後日談……。
最初の手紙が届いてウツな状態で二週間経った頃、一通の請求書が我が家に届きました。orz
届いたその日はげんなりした状態で開ける気にもならず、棚の上に放っておきました(意気地なしです(笑))。いずれにせよ払わないといけないので、2日ほどして諦めて開封しました。
結果は保険会社が交渉してくれており、全体の請求額は百数十ドルに圧縮されていたうえに、我が家からの保険でカバーされない分の支払いは39ドルでした。これなら納得です。安堵(あんど)のため息が出ました。
結果オーライで「これならば常識の範囲」と納得しましたが、アメリカでは保険なしではおちおち病気にもなれない、という恐ろしい“すぐそこにある”日常の話でした(ちなみに四年ほど前、突然起きた僧帽弁の問題で自分が開心術を受けた時は病院からの請求額は驚きの21万ドルでしたが、これは保険で全額負担されました。俺、これで一生分の払い込み分使いきったなと、正直思いました)。こんなの保険入ってなかったら“絶対”無理です。実際、手術受けずに退院していく貧困家庭の人たち本当にいっぱいいますから。TPP後の日本もそうなるかもな……。杞憂(きゆう)だといいんですが。

執筆: この記事はsmall Gさんのブログ『small G』からご寄稿いただきました。

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