【ここは法廷だゼ!】三度目の万引きで、婆さん被告人は刑務所行きとなるか?

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スーパーマーケット

被告人は昭和17年生まれのH恵。万引きの前科前歴がいくつもある、いわゆる万引き常習犯。息子と2人暮らし。今回も、近所のスーパーで万引きをして逮捕、起訴された。
本人の弁によれば公共料金の支払いのため2万弱を持って出た際、思わずスーパーに立ち寄ってしまったが、持っている金は買い物に使いたくない、そんな思いから、富士宮焼きそば、ソーセージ、キムチ、ギョーザなどのエネルギッシュなアイテムを続けざまに万引きしたという。
犯行を現認した警備員によれば「怪しいと直感して見ていた。品物をかごに入れたまま外に出て、コートの内側へ隠したので万引きだと確信した。自転車置き場で声をかけたら『これから金を払うところだ!』と大声で言ってきた。事務所へ連れて行こうとするも『払うつもりだ』と動かず、他の警備員と一緒に事務所に連れて行くと、ソーセージの束を投げつけ始めた。延々暴れているので店長が『いい加減にしなさい!』と怒鳴ると大人しくなりました」とのことで、逮捕までかなりゴネた様子が伺える。
だが法廷ではそんな荒くれ者の片鱗は微塵も見せず、足をしきりに引きずり、被告人席に座った。
スーツを着た息子が情状証人として出廷し、自らを責める。平日の昼間に出廷するため、会社は休んだという。
「前回の裁判で執行猶予を受けて、その期間中は事件を起こさないできた。それに安心している部分もありました。私の力不足で何も解消する事が出来ず……母の困ってる部分、助けてあげられなかったり、同居している長男として、甚だ不十分だと自覚してます……」
そして始まったH恵の被告人質問。
H恵「ソーセージは5本1組だったもんですから……」
検察官「いや、それはいいんですけど、やっちゃいけない事をやって、見つかったら普通、観念するんじゃないの?相当、ワルじゃないかという印象を受けるんだけど?」
H恵「私はただ手を振ってただけです!」
検察官「そんなことぐらいじゃ店長に怒鳴られませんよ!」
H恵「いや、この人はすごく怖い人で……」
と一筋縄ではいかない。法廷でも、相当、ワルという印象を受ける。
裁判官「あなた、もう執行猶予期間も終わったから、まぁ、また万引きしても刑務所行かないで済むと思った訳??」
H恵「……」
H恵は前科2犯。前回は執行猶予(4年)付き判決を受けており、執行猶予が明けて間もなくの犯行。今回は刑務所に行く可能性が極めて高いが……。
裁判官「実刑でも不思議はない訳ですよ!3度の執行猶予の事例なんてナイです。ただ今回、息子さんが出て証言、非常に更生させようという、強い、母親思いの気持ちに感心したのもあります。あなた、息子さんに感謝して下さい!息子さんが今日、証言してくれなけりゃ、アナタ今頃実刑受けてショック受けてるとこですよ!息子さんを裏切らないようにしてください!」
H恵「ハイっ!」
懲役1年6月、そして執行猶予5年という、まさかの執行猶予を勝ち取った。息子さんのこれからの苦労を思うと、若干、気の毒にもなるが……。5年後、4度目の万引きに手を染めない事を祈るばかりである。

画像引用元:flickr from YAHOO
http://www.flickr.com/photos/kozumel/2259224024/

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高橋 ユキ

傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。

ウェブサイト: http://tk84.cocolog-nifty.com/

TwitterID: tk84yuki

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