「作者は物語や人物に付き合うしかできない」 2人の直木賞作家が語った小説論

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「作者は物語や人物に付き合うしかできない」 2人の直木賞作家が語った小説論

2011年4月からKBC九州朝日放送でスタートしたラジオ活劇『北方謙三 水滸伝』。

全19巻に及ぶ超大作の完全ラジオ活劇化プロジェクトも、今年遂に6年目に突入した。そのクライマックスに向けて番組をさらに盛り上げるべく、トークイベントが福岡で開催された。

原作者の北方謙三さん、語りの石橋凌さんに加え、ファン代表として野球日本代表監督の小久保裕紀さん、直木賞作家の東山彰良さんが登壇。さらに、イベント中盤には、出演者の野島裕史さんと横尾まりさんも応援に駆け付け、会場は大いに盛り上がった。

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イベント前半では、人気シーンをいくつか振り返りながら、登場人物への思い入れや制作時のエピソードが語られた。

ファンの間でも圧倒的な人気を誇る林冲の脱獄シーンについて、北方さんが「作者が彼らの生殺与奪の権を持っているわけではない。なぜなら彼ら自身が人生や感性を持っているから」と話すと、東山さんも同じ作家の立場から「物語が勝手に終わるまでとにかく付き合ってやることが大事。その点、『北方水滸伝』のラストシーンは本当に鳥肌が立った。北方先生に何かが下りてきたんだと思う」と、ラジオ活劇終盤に向けてリスナーの期待を煽った。

また、北方さんの造語だという「死域」という言葉について、小久保さんは「現役時代、ゾーンに入ると来るボールがほとんど分かることがあった。それに似ているかもれしれない」とスラッガーらしい思い出を披露。

それを受けて、北方さんは「原稿がなかなか書けないときは、『只今死域でございます』って言おうかな」と語り、会場の笑いを誘っていた。

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イベント後半では、この作品の全登場人物のせりふをすべて二人で演じている野島裕史さんと横尾まりさんも登場。

特にこれまでに400人を超える登場人物を演じ、役についてノートに書き留めているという野島さんは、「口ひげのある役のときは上唇をあまり動かさずに喋る」など、各キャラクターの個性を際立たせる工夫や苦労について語った。

来場者からの質問コーナーでは、「北方先生にとっていちばん手強かった女性キャラクターは?」との質問があり、先生はある女流作家の方とお酒を飲んだときのエピソードを披露。彼女たちをモデルに描いた登場人物、エピソードがあることを打ち明けるなど、会場をにぎわせていた。

本イベントの内容は、11月5日(土)夜7時から、KBCラジオで放送予定となっている。

(*北海道STVラジオで11月27日(日)夜10時から、長野SBCラジオでは11月6日(日)夜8時から放送予定)

また、これをきっかけに「ラジオ活劇の北方水滸伝を聴いてみたい!」と思った人は、オーディオブック配信サービス『FeBe』(https://www.febe.jp/podcast/suikoden)で、1話からバックナンバーを聴くことができるので要チェックだ。(月額540円/初月無料)

(レポート・河野祥子)

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