庭師が伝授! 自宅のベランダに「日本庭園」を造るコツ

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庭師が伝授! 自宅のベランダに「日本庭園」を造るコツ

お寺や町家などで目にする、美しい和庭園。わが家にもそんな庭があったら……と憧れている人も多いかもしれません。そもそも日本古来の庭園とはどのようなものなのでしょうか? また、はたして素人でもDIYで造ることはできる? などなど素朴な疑問を解消するべく、「庭匠 風玄 東京」代表兼庭師の深津晋太郎さんと、庭師の堀内千恵さんに聞きました。

日本ならではの風景を凝縮した和庭園

日本庭園の定義について、お二人が考えるそれはズバリ「土、石、植物、水などを用いて、自然の景観を表現した庭」なのだとか。

「日本には“八百万の神”と言って、すべての物に神が宿っているという考え方があります。大きな石や大木に神様が宿っているという自然信仰にあたりますが、日本の庭造りのベースにはこうした信仰が根付いていると思います。また、日本庭園の造り方のひとつに『石組』というものがあります。お釈迦様を表す石を中心に、両脇にお弟子さんを立てるというもので、禅の心、つまり仏教の要素が加わっています。人は目に見えない世界を感じて、自分が死んだら極楽浄土に帰りたいと願う。その思いで造られたとも言われています」(堀内さん)【画像1】こちらは、「庭匠 風玄 東京」が手がけたさいたま市浦和区常盤にある「料亭 玉家」のお庭。よく見ると中心部に石組が配されている(写真撮影/末吉陽子)

【画像1】こちらは、「庭匠 風玄 東京」が手がけたさいたま市浦和区常盤にある「料亭 玉家」のお庭。よく見ると中心部に石組が配されている(写真撮影/末吉陽子)

木や石など自然の中に神様の存在を感じている日本人の心。それを反映したものが、日本庭園ということなのかもしれません。また、庭を構成する砂利や灯籠などにも意味があるそう。

「日本庭園には、『白川砂利』という砂利があるのですが、これは水や海を表現する素材の一つですが、電気がなかった時代に建物の内部に太陽の反射光を取り入れるという役目も果たしていました。そのため、京都で白川砂利が敷かれている庭は、主に南に向いています。昼は太陽の光を、夜は月の光を取り入れる。庭に景観を造りながら同時に生活の利もかなえていました。また、よく灯籠が置かれますが、これは今でいうところのライトにあたるもので、かつては灯籠の中にろうそくを灯し、道しるべとして利用していました」(深津さん)

日本の庭は引き算で造られており、無駄を究極にそぎ落としながらも美しさを追求しているのです。

素材選びに不正解はない! 自分の感性で選ぶことが大事

さすがに、お二人が手掛けているような、本格派の日本庭園を造ることは難しいかもしれませんが、素人でもDIYで一戸建ての庭やマンションのベランダに和風の庭を造ることはできるのでしょうか?

「2畳ほどのスペースがあれば、坪庭のようなすてきな庭が造れます。素人の方でもお気に入りの樹木や砂利などを配置して楽しむことはできると思います」(深津さん)

小さなスペースでも不可能ではない模様。では、ジオラマ的に造園するうえでのポイントとは?

「苔などを使うことで柔らかさが出ますし、四季によって葉の色が変わる小さな木を配してもいいかもしれません。いまはインターネットでもさまざまな素材が手に入るので、そうした素材の表情を活かして造るといいですね。堅く考えずに自分の好みを踏まえて、おおらかな気持ちでチャレンジされることが一番かなと思います」(深津さん)

また、美しい造園をかなえるためのコツについては次のとおり。

「コツは素材の高低差や奥行きをつけてあげること。それだけでも物語が生まれます。日本の自然の形を崩さないことも重要です。例えば、山の中に滝があり、そこから水が流れ、その水がやがて海につながっていくというイメージを、山は樹木や苔、滝は石、海は砂利といった素材を利用して造ることもおすすめです。また、海には貝、山には木といった素材を仲間同士でまとめるのもポイントです」(堀内さん)【画像2】京都で庭師修行を積んだお二人。社寺や店舗、個人宅まで、さまざまな日本庭園を造ってきた深津さん(左)と堀内さん(右)(写真撮影/末吉陽子) 【画像2】京都で庭師修行を積んだお二人。社寺や店舗、個人宅まで、さまざまな日本庭園を造ってきた深津さん(左)と堀内さん(右)(写真撮影/末吉陽子)【画像3】こちらは取材用にお二人が即興で造ってくださったもの。陶器や貝、古木などを器にして、苔や芽吹いた木を植えてみたものを集めるだけでも趣が出る(写真撮影/末吉陽子)

【画像3】こちらは取材用にお二人が即興で造ってくださったもの。陶器や貝、古木などを器にして、苔や芽吹いた木を植えてみたものを集めるだけでも趣が出る(写真撮影/末吉陽子)

最後に、自分の中で造りたい庭が固まらないときはどうすれば良いか、聞いてみました。

「日本庭園に関する写真集を参考にして、そのなかで自分の好きなものを見つけて真似して造ってみるというのもいいと思います。旅行で行った京都のお寺の庭が好きだったとか、自分で好きな庭のイメージを造ることから始めると良いですね」(堀内さん)

ちなみに、維持する方法について、「植物は過保護すぎても、放置しすぎてもだめです。表情を見て水のやり方を変えてあげる。大切なのは物に対する愛情、気持ちですよね。そういうものをもって接することが美しさを維持するうえで欠かせないポイントなんだと思います」と堀内さん。

和庭園の存在は自然との距離感、そして心のゆとりをもつことにもつながるのかもしれません。「家が狭くてムリ」「マンションだからベランダしかない」と諦め気味の方も、ぜひジオラマ的に日本庭園を造ってみませんか?●取材協力

庭匠 風玄 東京

料亭 玉家
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/09/117788_main.jpg
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