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「突然ですがお嬢さんを下さい」10歳の少女にプロポーズで周囲ドン引き ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

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失恋は辛いですが、恋人との死別はどれほど辛いでしょう。しかし、別れの後には出会いあり。時は流れ、夕顔の死から約半年。源氏18歳の春です。

瘧(おこり・マラリア)が治らないので、北山の霊験あらたかな僧侶に祈祷を受けにやって来た源氏。気落ちして病気がちだった彼に、この北山で運命の出会いが待っていました。

病気続きの源氏、おてんば美少女に一目惚れ

京の桜は終わったものの、北山にはまだ桜が残っていました。お花見がてら、山の景色を珍しがって源氏がウロウロしていると、少女たちや中年の女房などがいます。「お坊さんの庵になぜ女性がいるんだろう?」源氏は惟光とこっそり覗きます。なかなか面と向かって顔を見られないからか、男も女もよく覗き見する様子が出てきます。

40歳位の上品な尼君の元に、10歳位の美少女がバタバタ駆け込んできました。「雀の子を犬君(いぬき・遊び相手の童女の名前)が逃がしちゃったの!伏籠に入れてあったのに…」手で擦った顔は真っ赤で、髪は肩のあたりでゆらゆらとなびいています。

彼女の乳母らしい中年の女性が「そそっかしい犬君ね、せっかく雀の子もなついて可愛くなっていましたのに。カラスにつつかれでもしたら大変だわ。叱ってやらないと」と、席を立って行きました。尼君は「まあ。生き物を閉じ込めたりしては、仏様の罰があたるといつも言っているのに。髪を梳かしてあげるから、こっちにいらっしゃい……」少女は祖母の前に座ります。

「梳かすのを嫌がるけど、とってもキレイな髪ね。それにしてもあなたはどうしてそんなに幼いの。お母様は、あなたくらいのお年にはもっと大人でいらしたわよ。おばあちゃん、あなたがしっかりしてくれないと、心配で死ぬに死ねないわ」。病気のおばあちゃんの繰り言に、少女も悲しそうにしています。

祖母と孫娘のやり取りは、おばあちゃん子だった源氏には懐かしいものでした。(とても可愛いなあ。それに、不思議なほど藤壺の宮によく似ている!)源氏は心を動かされ、ソワソワしはじめます。

「突然ですがお嬢さんを下さい」源氏の暴走に周囲ドン引き

源氏は祈祷もそこそこに、僧侶に訊いてみました。「あの尼は私の妹で、夫に先立たれて出家しました。娘が一人おり、兵部卿宮さまとの間に孫娘が生まれたのですが、本妻にいじめられて死にました。気苦労で病むというのは本当にあるんですね」。兵部卿宮は藤壺の宮の兄なので、少女は藤壺の宮の姪になります。

源氏は(なるほど血縁か、似ているはずだ!ここで彼女に会ったのも、神仏のお導きかも)。「突然ですが、あのお嬢さんを私に下さいませんか」。突然すぎだよ!!出し抜けのプロポーズに、僧侶は「いやはや、あの子のことは妹に任せているので」。僧侶じゃなくてもこんなこと言われたらびっくりです。

源氏は諦めません。今度は尼君へ「自分もおばあちゃん子で育って、あの子を他人とは思えない」などむちゃくちゃ言い、猛烈アタック!「嬉しいお話ですけど、何か思い違いをなさっているのでは。まだ本当に子どもなので、年頃になりましたら…」。暴走する源氏に、僧侶も尼君もみんなドン引きです。

そんなこんなで病気はすっかり回復。源氏はお迎えの人たちと帰京します。帰る直前、ダメ押しのアタックを試みますが「今はなんとも。あと数年経ってどうしても、という事なら」。源氏もさすがに「そりゃそうだよな」と思いますが、どうにもしつこくて、ちょっと怖いよ……

少女は源氏の様子を見送りながら「お父様より素敵」。尼君が「じゃあ、あの方の子どもになる?」と聞くと「うん」。それからはお人形遊びにも、お絵かきにも必ず『源氏の君』キャラを作って、きれいな服を着せて遊んでいます。この源氏の君こそが、彼女の生涯のパートナーとなるとも知らず…。

藤壺の宮に縁ある少女、という意味で、源氏は彼女を紫の君(のちに紫の上)と呼ぶようになります。余談ですが、たまたまTVで、定番の赤紫蘇ふりかけの名前も『ゆかり』で、あれもお客様とのご縁を大切にという意味だ、と知りました。古くからの”縁=ゆかり=紫“という公式です。

これほどしつこく食い下がるのは、彼女が藤壺の宮によく似ていて、実際に血縁だったことが原因ですが、夕顔を亡くし、病気をして弱りきっていた源氏には、バタバタ走ってきたおてんばな美少女のフレッシュなパワーが眩しかったんだろうなあ、とも思います。

気をもむお義父さん、ツンツンした妻…溝が深まる夫婦

源氏はまず宮中に上がり、父・桐壺帝に顔を見せました。「ずいぶん痩せたね」と心配そうです。義父の左大臣は源氏を捕まえて、同じ牛車で一緒に家に連れて帰ります。

左大臣は娘の葵の上のために源氏にかしずいているので(行きたくないけど、お義父さんの親心には頭が下がる)と思わずにいられません。どの時代もお父さんって、娘が可愛いものなんですね!

源氏が来ても、葵の上は出てこない。「これ、早くしないか。源氏の君がお見えだぞ」。左大臣が呼びに行ってようやっと挨拶する始末。毎度のことながらゲンナリです

源氏は「病気してたんだよ。お加減いかが?くらい聞いてくれても」。葵の上は「訊ねられないのはお嫌ですか」。源氏がなかなか訪ねてこないのを、病気の事を訊ねないことにかけた、彼女なりの嫌味です。

源氏は「たまにしゃべったと思ったらそんな事を。夫婦なんだから”たずねる”なんていう言い方は変だよ」。葵の上にしてみれば、たま~にやってくる夫なんて、訪ねるっていう表現がぴったりじゃないの、という気分でしょうね。源氏としては(人生は長いんだ、夫婦仲もそのうちにはなんとかなっていくだろう)と悠長に構えています。

源氏がベッドに入っても、葵の上はなかなか来ません。やれやれだぜ、と思いながら、源氏の心は紫の君に飛んでいます。(全然取り合ってもらえなかったけど、どうにかして二条院にあの子を連れて来たい!どうやっても実現させるぞ!!)と、ひとり意気込むのでした。

葵の上と一緒にいる時、源氏はいつも他の女性のことばかり考えていて、彼女のことを想っていたことがない。葵の上は葵の上で、素直に心を開けないまま、ついカドの立つ言動をしてしまいます。夫婦の溝は深くなるばかりでした。

さて、源氏が『藤壺の宮』と聞いて過剰反応し、暴走したのには理由があります。父の妃で、自分には義理の母でもある藤壺の宮と、源氏の間には決定的な関係が生まれてしまっていたのです。それは源氏が唯一、自分が犯した罪だと認めた、許されざる恋でした。

簡単なあらすじや相関図はこちらのサイトが参考になります。

3分で読む源氏物語 http://genji.choice8989.info/index.html
源氏物語の世界 再編集版 http://www.genji-monogatari.net/

(画像は筆者作成)

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 相澤マイコ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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