変化を求められる企業で深刻なリーダー不在問題 解決には多くの課題

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変化を求められる企業で深刻なリーダー不在問題 解決には多くの課題

変化を求められる時代 多くの企業でリーダーが足りない状況に

多くの企業で「リーダー」が待望されるようになって久しい。グローバル化・情報経済・ネット経済の急速な進展などの時代の要請により、多くの企業がビジネスモデルの変更を迫られ、存在価値を再定義することが求められています。
しかし、これらを実行していくリーダーが圧倒的に足りていないというのが、現状ではないでしょうか?

リーダーが増えないのは、リーダーを育てる力が今の日本の産業界のみならず日本の社会において欠如しているということに他なりません。では、何が足りないのでしょうか?

この原因を考える上で、そもそも組織には二つの方向性の進化があることを理解しておく必要があります。それは「安定」と「変革」です。

組織には二つの方向性の進化「安定」と「変革」がある

人が二人になれば立派な組織となります。意思統一をし、同じ目的に向かって役割分担をして実現していく営みが必要になります。
そこから、人が増え、扱う案件が複雑かつ巨大になっていくと、仕組みがなくては良いアウトプットを生み出せなくなります。
そこで、各人の役割を明確にし、作業手順を整備し、誰もが同じような成果を出せるように環境を整えていくことになります。
これが「安定」の方向となります。

一方で「変革」とは、新たな環境で新たな価値を生み出せるように既存の仕組みを破壊し、再構築する方向性のことです。
もう既に想像がつくかもしれません、「安定」と「変革」は反対方向の動きであり、「安定」が高まると「変革」は難しくなり、「変革」を起こすと「安定」は失われることになります。

経営幹部のみならずミドルマネジャーまでを含めたマネジメント層には、この「安定」と「変革」の両方を扱う腕前が求められますが、「変革」を扱えないマネジャーが多くなっているというのが、「リーダー待望論」の実情ではないでしょうか。

安定志向の企業で変革を推進するリーダーが生まれるのは難しい

では、なぜ多くのマネジャーが「変革」を扱えないのか、ということを考えると根が深いものがあります。
これはリーダーの資質ではなく、組織の問題につながるからです。

例えば、「安定」の腕前を発揮してポジションを築いてきたマネジャーは、そもそも「変革」という志向性を持ち合わせていない場合が多いのです。
「変革」が求められる環境下にあっても、組織を守るために、リスク回避を優先し、必死に挑戦の芽を摘んでいる場合もあります。
また、家庭を持ち、住宅ローンが残っていると、頭では「変革」の必要性を理解していながらも、その経験も腕前もない状態では怖くて挑戦できないというのが人間の性質です。

更には、マネジャー手前の担当者であっても、時間的・金銭的に報われないイメージや人との関わりの億劫さから「マネジャーになることすら嫌だ」というケースも最近は増えています。
この「安定」を志向するマインド・境遇にいる社員が主流になってしまうと、組織の「安定」に向かう慣性は強くなり、組織に属する一個人で「変革」を推進することはほぼ不可能となります。

この段階で、組織としてそのようなマネジャーに処方箋を提供することは難しくなります。
研修を実施して、いくら知識を詰め込もうが「変革」は起こせません。
知識は「変革」の手助けにはなりますが、一歩を踏み出す勇気、反対や軋轢に負けず想いを持続させる器量など、経験によって磨くべき人間力なくして「変革」は成し得ないものなのです。

村上春樹さんの著書「1Q84」にある「教わらないと分からないことは、教わっても分からない」という言葉はリーダー育成問題の正鵠を射ています。
もし、真にリーダーを組織内から生み出したいのであれば、経営トップが意図的に「安定」を壊し、「安定」に抵抗する仕組みや仕掛けを施し、修羅場環境を企業内に生み出していく決意が必要となります。

(安澤 武郎/経営コンサルタント)

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